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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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大鳥のお風呂−3

 ジョシュとの会話はオルニス王国北部の話から、故郷があるオルニス山の話になって行った。

 首都ヴェジストとオルニス山の間には海があり、直線的に大鳥で移動できればそこまで遠くはない。しかし大半の大鳥は途中で休憩する場所が必要なので、海では休憩する場所がない。

 海の上を飛べないとなると、地上を遠回りする必要がある。

 大半の大鳥は遠回りをすると王都からオルニス山まで七日ほど掛かる。

 歩きだとオルニス山から王都ヴェジストまでは二ヶ月ほどかかると聞いた事がある。

 海を渡る船を使えばもう少し早いが、大鳥に比べたら随分と時間がかかるらしい。


 話の流れからアレックスが王都に来た時の話をする事になった。

 アレックスは余裕を持って移動したので、十日ほどで王都ヴェジストへと辿り着いている。

 王都まで普通七日の所を、三日も遅れたのは二日ほどワイバーンの解体に時間をかけたからだ。

 故郷のスプルギティ村を出発して二日後にワイバーンに襲われた。村に戻って解体する事も出来ず、途中の街で設備を借りて解体している。


「ワイバーン?」

「あれ? ジョシュにワイバーンの話をしていないっけ?」

「聞いていないと思うぞ?」

「話したと思ってた」


 アレックスは飲み物のおかわりを貰いつつ、ワイバーンに襲われた時の話をする。

 ワイバーンに襲われたのは旅に出て二日目の事で、飛んでいる時に奇襲された。奇襲が失敗してもワイバーンは諦めず、とても攻撃的だった。

 攻撃的なワイバーンは大体が若い個体が多い。

 倒した個体は若い個体にしては体が大きかったので、何故逃げないのか不思議に思いながらピュセーマと共に戦った。


 逃げないのであれば、ピュセーマと連携すればワイバーンは簡単に倒せる。

 地上に人が居ないかの確認をして、更に高い場所から落とすと素材が痛むので、高度を下げて倒す余裕さえあった。

 良さそうな場所でピュセーマが傷を最低限にワイバーンを倒し、落ちた場所にすぐに向かってワイバーンを回収した。

 奇襲に失敗して逃げないのは違和感があったので、解体する時に詳しくワイバーンは調べている。

 単体で襲ってきくるのは成熟した個体が多い。成熟した個体は奇襲が失敗したら普通にげるのだが、今回は逃げなかった。

 若い個体だと集団で襲ってくるのが普通だ。


 違和感のあるワイバーンだと思いながら、倒した後に皮を確認すると、皮は若い個体のようだった。

 若い個体にしては大きく育ち過ぎたが故に、集団行動をしないで一頭でも大丈夫だと、慢心していたのかもしれない。

 集団行動をしっかりして狡猾なワイバーンになっていれば、厄介な相手になっていただろう。そう考えると早めに倒せたことは良かった。

 倒したワイバーンについての考えを伝えると、ジョシュはため息をついた。


「アレックス、ワイバーンは簡単に倒せる訳ではないからな?」

「そうなの?」

「空で奇襲されたら助からない事の方が多い」


 ピュセーマなら簡単にワイバーンの奇襲を避けてしまう。

 他の大鳥も同じように回避するのだと思っていた。

 ジョシュがソフォスでもワイバーンに奇襲されれば避けるのが難しいと言われて、猛禽類でも簡単に避けられないのかと驚く。

 動きの速い猛禽類で避けれないのならば、他の鳥は避けるのが難しそうだ。

 攻撃を避けるのが難しいのならば、メグに魔道具を貸したのは正解だったようだ。


 アレックスがメグを心配して魔道具を貸したように、ピュセーマもアネモスが心配だったのか、予備の鞍をつけて行くようにと動作でアレックスに伝えてきた。

 ピュセーマの鞍は魔道具になっている。

 鞍というよりも防具と言った方が良いような性能だ。

 滅多に鞍が壊れることはないのだが、魔道具の機能が壊れる事を想定して予備を作っている。


 ピュセーマが予備をアネモスに渡すようにと指示してきたのだ。

 アネモスに大きさが合うか不安だったが、元々鞍は調整が可能なように作っていた事もあって、付けることは可能だった。

 なのでアネモスはピュセーマの予備の鞍を装備して依頼に向かっている。

 心配で装備を色々と持たせたが、ワイバーンや空を飛ぶ魔物は基本賢い。基本的には集団で飛んでいるような大鳥を襲うような事は滅多にないと思いたい。

 アレックスの勘違いの可能性もあると、ジョシュにワイバーンが集団には滅多に襲って来ないか確認すると、普通は襲わないと言うので、勘違いではなかったようだ。


 ジョシュが普通のワイバーンの倒し方を教えてくれた。

 普通は三人以上で地上にワイバーンを落として倒すのだと言う。

 地上に降りてからも倒すのは大変で、大体皮は傷だらけになってしまうらしい。

 ワイバーンを地上に落とすとなると、想像以上に大変そうだ。


 アレックスだと地上に落とすくらいなら、飛んでいる時に倒してしまった方が簡単に倒せる。

 近距離戦を仕掛けるとなると、ワイバーンの巨体は脅威になる。

 尻尾を振り回して攻撃してくるので、攻撃に当たってしまうと大怪我で済めばいいが、死んでしまう可能性が高い。

 ジョシュに地上では討伐が失敗した時が大変ではないかと聞いてみた。


「そうだな。毎年ワイバーンが暴れて騎士団にも依頼が来るのだが、討伐隊を組むのは大変だ。騎士や魔導騎士の中で倒し慣れている人を集めて、倒してしまうことが多いな」

「毎年派遣される人が決まっているのか」

「一件、二件であれば良いのだが、討伐依頼の数が重なると大変な事になるな」


 どう言うことかとジョシュに尋ねると、オルニス王国は広いので当然ワイバーンが分布している範囲も広く、巣立ちの時期になると同時多発的に王都まで救援依頼が来るのだと言う。

 オルニス王国の広さを聞いた後だと、依頼が重なるのも当然かと納得する。


 ジョシュが二羽に風呂を上げるか尋ねに行こうと言うので、ワイバーンの話を終わらせて、ソフォスとピュセーマに尋ねに行く事にした。

 ピュセーマが入浴していた場所に行くと、ピュセーマの隣にソフォスが居て、仲良く風呂を堪能している。

 ソフォスは体を四分の一程度出した状態で、どうやらソフォスの方が一回り以上身長が大きいようだ。

 泳ぐようにピュセーマの元に行って風呂を上がるかと尋ねると、ソフォスと相談するように鳴き始めた。


「チュン」

「ホー」


 上がる気になったのか、一緒に移動し始めた。

 しかし随分と二羽は仲良くなったようだ。

 風呂から上がると、二羽とも水を含んで羽が萎んでいる。

 ここまで濡れている状態では乾かすのが大変そうだ。ジョシュが羽を乾かしに行くと言うので、一緒について行く。


 ジョシュが案内してくれたのは大型の魔道具が用意されている部屋だった。

 扉が透明な素材でできており、部屋の中がよく見える。

 部屋の前には部屋の説明が書かれており、部屋の中に大鳥を入れて魔道具を稼働させると、風が吹き出す仕組みになっているようだ。


 二羽を部屋の中に入れて魔道具を稼働させると、部屋の中から凄まじい音が聞こえ始めた。

 部屋の外にいると音でしか魔道具が稼働しているのが判断できなかったが、時間が経つにつれて徐々に二羽の羽が膨らんでいくのが分かる。

 二羽は羽を広げたりして、全身をしっかり乾かそうと動き回っている。

 完全に羽が乾くまでは時間はかかるようだが、最終的にはいつも通りのピュセーマになった。


 部屋を出れる状態になったのか二羽が扉の方に来たので、魔道具を止めて扉を開けると部屋の外にできた。

 ピュセーマを触って確認する。

 いつも以上に羽根が空気を含んで膨れ上がっている。ピュセーマの触り心地がとても良い。

 ピュセーマもとても満足そうな表情をしている。

 アレックスとジョシュはまだ水着だったので、着替えてしまう事にした。

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