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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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大鳥のお風呂−2

 人間用の更衣室は当然に男女で分かれており、貴重品を入れるロッカーもしっかりとした作りになっている。

 あまり時間をかけるとピュセーマを待たせてしまう。

 アレックスは急いで着替えて浴場へ向かう。

 更衣室から浴場に入ると巨大な浴槽があり、様々な大鳥がお湯に浸かっている。


 ピュセーマの元に行って、一緒に浴槽へと向かう。

 浴槽は巨大なだけではなく、大鳥が大きい事もあって深さもかなりの物だ。

 お湯に入る前に、まずはピュセーマを軽く洗って行く。

 大鳥専用の石鹸が用意されており、隅々まで全身泡だらけにしながら洗っていく。

 一生懸命ピュセーマを綺麗にしていると、気づけばアレックスも泡だらけになって一緒に洗っているような状態となった。


「ピュセーマ、痒いところはないか?」

「チュチュ」


 ピュセーマが嘴で指定してきた場所を重点的に洗っていくと、気持ちよかったのかグーグーと鳴きながら目を細めている。

 体全体を洗い終わったら石鹸を流していく。


 綺麗に石鹸を流し終わったところで、ピュセーマに浴槽へ入っていいと伝えると、飛び跳ねながら浴槽へと入って行った。

 足があるとはいえ大鳥は鳥なので、歩くのは得意ではない。

 どうしてもお湯に入る時にお湯が飛び跳ねるが、他のお客さんは気にしていないので、こういう物なのだろう。

 ピュセーマに続いてアレックスもお湯に浸かる。


 外側から見ても分かったが、浴槽はかなりの深さのようだ。

 しかも中心に近づくほど深くなっているようで、あまり奥まで行くと泳がないと溺れてしまいそうだ。

 大鳥は大きさが様々なので、ピュセーマは足を伸ばして頭を上げた状態で三メートルほどだが、足を曲げて頭を上げなければ二メートル程度だ。


 深さが二メートルも無いところにピュセーマは落ち着いた。

 アレックスは立った状態で丁度足が浴槽の底に付く深さだった。

 ピュセーマと一緒にのんびりとお湯に浸かる。温めのお湯なので長時間浸かっていてものぼせなさそうだ。

 今更ながらに周りを見ると、まだ朝なのにそこそこの数、大鳥と人が入っている。

 珍しい大鳥が居ないか探していると、大梟を見つけた。


 大梟と言えばジョシュの相棒を思い出す。

 だがジョシュは魔導騎士なので、朝のこのような時間に銭湯に入っていることはないだろう。

 猛禽類の大鳥は飼育が難しいのもあるが、肉食なので食費がとても高額になる。なので中々飼える大鳥ではない。

 王都ヴェジストには大梟が何匹もいるのかと驚きつつも、流石だと納得していると、後ろから声をかけられた。


「もしかして、アレックスか?」


 男性の声に振り返ると、ジョシュが居た。

 居ないと思っていたジョシュが居る事に驚きつつも、久しぶり会えた事を喜ぶ。

 お互いに挨拶をして、簡単に近況を説明した後、何故朝から銭湯に居るのか尋ねた。


「仕事の後はソフォスの疲れを取るために銭湯に来ることが多いんだ。ソフォスはお湯に浸かることが好きでね」

「大梟のソフォスがお風呂が好きなのか。ピュセーマも随分と気に入ったみたいだ」

「そのようだね」


 ジョシュはソフォスにまだ入っているか聞いてくると、泳いで移動して行った。

 アレックスもこれ以上深い場所になったら泳ぐ必要がある。

 お風呂なのに泳がないと移動できないのは違和感がある。

 泳いでいるジョシュに視線を向けていると、ソフォスに話しかけた後、すぐに泳いで戻ってきた。


「まだ入っているようだ。アレックス良かったら飲み物でも飲まないか」

「飲み物?」

「風呂好きの大鳥は長風呂なので、待つ為の設備も充実しているんだ」


 確かにいくらお湯の温度がぬるめだと言っても、アレックスの方が先にのぼせてしまいそうだ。

 ピュセーマにジョシュと飲み物を飲んでくると伝えると、一瞬目を開けて頷いて、再び目を閉じてしまった。

 まだまだお風呂を楽しむようだ。

 ジョシュに続いて浴槽から出る。


 浴槽の近くには机と椅子が並んでいる場所が浴場の一部にあった。

 ジョシュが椅子に座ったので、アレックスも椅子に座ると、すぐに店員が来て注文を聞いてくれた。

 何があるのか分からず迷っていると、ジョシュがミックスジュースを頼んだ。

 コーヒーや紅茶などを頼むのだと思っていたので、意外に思いつつも、気になったので同じ物を店員に注文する。

 店員は注文を復唱して、すぐに移動して行った。


 お金はどうするのか不思議に思ってジョシュに聞くと、入浴料金に含まれていると教えてくれた。

 すぐに持って来られたミックスジュースは冷えており、果物の配合が良いのか想像したよりも美味しい物だった。

 美味しかった事と、思った以上に喉が渇いていたのか、勢いよく半分ほど飲んでしまう。


「ここのミックスジュースは美味しいだろ?」

「ええ。ジョシュと同じ物を頼んで正解だった」

「普段はコーヒーばかり飲んでいるのだが、ここに来たら毎回これだ」


 ジョシュが頼むのも納得する美味しさの飲み物だ。


 飲み物を飲みながら先ほど話した簡単な近況を、詳しく話していく事にした。

 店の事を説明した後に、メグと付き合い始めた事を説明すると、ジョシュから祝福された。

 メグが騎士の孫である事を説明した。

 そして、今は依頼で王都から出かけている事を説明する。


 近況を話し終わった後に、ジョシュから銭湯に来た理由を聞かれた。

 ピュセーマもメグの相棒である大雀のアネモスとつがいになって、アネモスが出かけて少し落ち込んでいた様子だった。最近相手ができなかった事もあって、気晴らしに連れてきたとジョシュに答えた。

 ジョシュから更にメグは大鳥を持っているのかと聞かれ、そうだと返した。

 大鳥を持っている事が何の関係があるのか不思議に思っていると、依頼の内容を知っているのかと更にジョシュに聞かれた。

 詳しくは知らないと濁して答える。

 流石に予想とはいえ、第一王女からの依頼だとは答えられない。


「その言い方は多少知っているな?」

「多少は知っているけど、流石に正式な依頼は話せないからね」

「私も魔導騎士だから何の依頼かは分かるが、中々大変な依頼に巻き込まれたようだな。多少知っているなら私の苦労話も聞いてもらうか」


 ジョシュが疲れた顔で詳しくは話せないが、メグが受けた依頼の関連する事で今日まで動き回っていたのだと教えてくれた。

 国の北端まで行ったり、ソフォスに乗って大移動を繰り返していたのだとジョシュが言う。


 内容は聞けないだろうが、オルニス王国の北端には何があるのか気になって尋ねると、木と雪だと返ってきた。

 木や雪など何処にでもあるだろうと、要領をえないので詳しく聞いていくと、どうやら本当に木と雪しかないようだ。

 オルニス山のように標高が高いわけではなく、平地でずっと森林が続いており、冬が近い事もあって雪がすでに積もっているようだ。

 街はもちろんあるが、他の地域に比べると雪で閉ざされる時間が長い事もあって、生活するのが大変だと言う。

 一部に固まって生活しているそうだ。

 態々そんな場所に人が何で住んでいるかと言うと、貴重な鉱石が多く産出しているらしい。

 オルニス王国は大鳥での移動を前提にしている国なので、かなり領地が広く天然資源を求めて移動すると、大変な移動距離になるのだとジョシュが教えてくれた。


 話を聞く限り、ジョシュは何かを買い付けに行ったか、受け取りに北端まで行ったのだろうか?

 北端以外の場所も気になって、オルニス王国の事を聞いていると、ジョシュの苦労話から話が逸れて、オルニス王国の地理的な話に徐々になって行った。

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