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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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コバルトガラス−4

 アレックスは朝起きると準備をしてコボルトの工房へと向かう。

 メグがコボルトの工房には止まり木が無いと教えてくれたので、ピュセーマとアネモスは留守番をお願いした。

 路地裏をメグの案内で歩いていくと、青いガラスが見えるように飾られた店の前で止まった。

 工房だけだと思っていたが店もやっているようだ。


 メグが工房に行く前に声をかけた方が良さそうだと言って、先に店の中に入って行く。

 アレックスも後を追って店の中に入る。

 店の中は青一色で、ガラス、陶器、絵の具までと色々な物が売っているが、全て青色だ。

 置かれている商品を見てると、メグが店の奥に声をかけている。


 奥から現れたのは犬のような顔を持った亜人のコボルトだった。

 身長は百五十センチほどだろうか、さほど大きくない。

 挨拶をしようと思ったが、メグが店の人と会話を済ませ、裏にある工房に移動すると言われる。

 挨拶は工房に移動してからすれば良さそうだ。

 店を一度出て裏に回ると炉のある大きめの工房になっており、複数のコボルトがガラスで何かを作っていた。


 メグが一人のコボルトに声をかけると、優しそうな女性の声でメグに挨拶をしている。

 メグが錬金術師を連れてきたと言いながらアレックスの紹介をしてくれた。


「錬金術師のアレックスです」

「モリー工房のモリーだよ。スーザンから新しく錬金術師が来たって聞いてるよ」

「はい。新しく路地裏で店を開きました」

「これから色々と注文すると思うから頼むよ」


 モリーさんはメグに良さそうな彼氏じゃ無いかと声をかけており、ロブ工務店のスーザンさんから全て話は筒抜けになっているようだ。

 メグとモリーさんの女性同士の話には入りにくい事もあって、振られたら加わるが、二人の話が終わるまで待つ。

 話の内容はメグとの出会いの話が殆どだったので、聞いていて気まずい話では無かった。


 話が完全に終わったところで、今回の依頼について話し合う。

 素材を砕く大きさを尋ねると、やはり素材ごとに決まっているようだ。素材を見せながら大きさをメモをしていく。

 一部は少し加工して欲しいと言われて、加工する事も追記していく。

 全ての素材について聞き取りが終わった後に、ハイポーションの瓶を作れないか尋ねてみた。


「ハイポーション用の瓶ね。私が作れはするけど、工房には材料がないよ?」

「材料は手持ちがあるので作って頂けませんか?」

「材料があるのかい?」


 アレックスは、オリハルコンやワイバーンの牙を魔法鞄から取り出してモリーさんに見せる。

 モリーさんが素材を確認すると確かに作れそうだと頷いた。

 ハイポーションを作ってどうするのかとモリーさんに尋ねられたので、メグに持たせると伝える。

 話を聞いているだけだったメグが驚いた声を上げて話しかけてきた。


「アレックスどういうこと?」

「次の依頼が危険そうだから持って行って貰おうと思ってさ」

「ありがたいけど、そこまでは必要ないと思うわ」

「ハイポーションは手持ちがあるから予備だって思って貰えればいいよ」

「……アレックス、ハイポーション持ってるの?」

「あるよ」


 魔法鞄からハイポーションを取り出して見せると、モリーさんが瓶はハイポーションの物だと保証してくれた。

 中身もハイポーションだと説明すると、二人から呆れたような目線を貰ったように感じた。

 確かに珍しい物だが、そんなに驚くものだろうか?

 二人に尋ねると、王都でも珍しい物だと返された。


 王都で、ハイポーションがどのように使われているかメグが教えてくれる。

 ハイポーションは高価な上に、そもそも使用する機会がそうないので、騎士団が所有している位で、後は一部の戦闘系ギルド員がお守り代わりに持っているだけだと言う。

 確かにハイポーションは普通ならそうそう使う機会はないが、あれば便利なポーションだ。

 メグにもお守り代わりで良いので持って行って欲しいと伝えると、メグが返事をする前に、モリーさんがメグに持っていく事を勧めてくれた。

 それでもメグが迷っていると、モリーさんが更に援護してくれた。


「彼氏がそこまで心配しているんだし、メグ持っていきな」

「そう言われると持って行った方がいいのかな?」

「私は持って行った方がいいと思うよ」


 モリーさんの援護にアレックスは助かったと思いながら、メグにお守りで良いから持って行って欲しいと伝える。

 最終的にメグもお守りならと持っていく事を了承してくれた。


 アレックスはモリーさんにお礼を言って、依頼までの間に急ぎ瓶を作って欲しい事を相談する。

 モリーさんが瓶の個数次第だが十本以内ならすぐにできると言う。

 ハイポーションは十本もあれば十分だ。

 素材を粉にしたら瓶を製作して貰おう。

 ハイポーションの瓶も素材を粉にする必要があるので、モリーさんに粉の大きさを確認してメモを書き込んだ。


 モリーさんに瓶を作る費用の相談をすると、素材が持ち込みだからと、かなり安い金額を提示された。

 モリーさんに、もう少し払いたいと普通とは逆の相談をすると、店で何か買って行って欲しいと言われる。せっかくなので提案に乗ってメグと使う食器などを買っていく事にした。

 モリーさんが店を案内してくれると言うので、工房から店に戻って必要な食器を選んでいく。

 食器を選んでいると、柄はもちろんあるが何故か青が使われている物ばかりだ。


「モリーさん、何故青い物ばかりなんですか?」

「ああ。簡単だよ。コボルトだからコバルトを使ったコバルトブルーなのさ。コボルトがコバルトの扱いが一番上手いからね」

「なるほど」


 モリーさんはコバルトを使わない場合ガラスも当然作れると言って、店の奥から色違いのガラス細工を持ってきてくれた。

 青以外のガラス細工と比べると、コバルトブルーの発色が綺麗な事に気づいた。

 他のガラス細工も悪い物ではない。

 しかし一緒に並べられていれば青だけ売れて行ってしまいそうな位には、コバルトブルーは見事な色をしている。


 持ってきてくれたモリーさんには悪いのだが、青いガラスや陶器から買う物を選ぶ事にした。モリーさんに謝ると、いつもそう言われるから他のは表に出していないと笑われた。

 青一色の不思議な店だと思ったが、理由を聞いて商品を見た後は納得だ。

 気に入ったいくつかの食器と、アクセサリーに使えそうなガラス細工をいくつか購入する。

 買い物を終えた後に、素材を砕いたら工房に持ち込む事をモリーさんに約束して店を出た。


 アレックスの店に戻るとメグが店番をしていてくれると言うので、工房に篭って作業する事にした。

 工房に移動すると魔道具と錬金術を使って素材を均一に砕いていく。

 作業はそう難しい物ではないのだが、素材ごとに砕く力加減が違う事もあって時間がかかる。

 結構な時間作業をしていると、メグが食事にしようと誘ってきた。

 すぐに行くと返事をして、作業を中断する。


 工房から移動して、メグに食事を作ってくれた事を感謝した。

 料理が入れられた食器は今日モリーさんの店で買った物のようだ。


「早速使ったんだね」

「食器は使わないと」

「確かに」


 メグから、実家の蘭の館も同じようにモリーさんが作った食器を使っていると言われて、昨日の食事で出た食器を思い出す。

 確かに青かった気がする。

 メグが作ってくれた料理はいつも美味しいが、食器が変わっただけで料理の印象が変わってくるのは面白い。

 食事が終わった後はピュセーマとアネモスの様子を見に行って、問題がない事を確認すると二羽に就寝の挨拶をした。

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