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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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コバルトガラス−2

 アレックスはメグと一緒に徒歩でニコルの元に向かう。

 五分もかからずにニコルの家に辿り着いた。

 家の中に入るとメグの案内で食堂へと通される。今日は以前のように書斎では無いようだ。

 メグに座って待っているように言われて、待っているとすぐにメグとニコルが部屋に入ってきた。


「態々来て貰ってすまないね」

「こちらこそ食事をご馳走して頂けるようで、ありがとうございます」

「せっかくだからね。蘭の館で出す食事を一度は味わって欲しかったからね」

「蘭の館ですか?」

「この家の事だよ。聞いていないかい?」

「初めて聞きました」


 蘭の館は戦争中に買い上げられて集会所として機能していたのだと、ニコルが教えてくれた。ニコルが騎士に叙爵された時に下げ渡される形で、所有権を有していると言う。

 アレックスは蘭の館と呼ばれる理由を尋ねると、庭に蘭が咲き乱れているからだと教えてくれた。

 確かに庭には蘭が大量に花を咲かしており、数が多いとは思っていた。

 随分と綺麗な庭だと思っていたが、名前の理由になっていたとは。


 そういえば、食事を一度食べて欲しいとニコルに言われた事を思い出す。

 食事を誰が用意したのか尋ねると、蘭の館にはブラウニーの女中がいるのだと言う。

 今まで女中を見たことがなかったので不思議に思っていると、恥ずかしがり屋なのであまり人前には出てこないのだと教えてくれた。


「来客の対応はできないんだけど、それ以外の家事全般を一人でやってくれているから助かっているよ」

「この家を一人で管理してるんですか」

「そうだよ。流石ブラウニーと言ったところだね。メグの面倒もかなり見て貰っていたしね」


 アレックスはブラウニーの凄さを理解すると共に、メグの恋人として会って挨拶をしたいと相談する。

 ニコルさんとメグがブラウニーに合う方法を考えてくれ、家事に使える物や、珍しい食材を送っていればそのうち会えるかもしれないと言う。

 家事に使える物はすぐに出てこないので、珍しい物は何かないかと考える。

 そういえばワイバーンの肉が余っている。

 それとマルーラで作ったお酒がまだ発酵中だがあった筈だ。


 ニコラに思いついた物を話すと、マルーラのお酒にとても反応が良かった。

 やはりニコラはお酒が好きなようだ。お酒は腐敗が進まない魔法鞄に入れてないので、今度持ってくる事にする。

 今日のところはワイバーンの肉を渡しておく事にした。


 食堂の扉の方からチリンと鈴が鳴るような音がする。

 メグが立ち上がって扉を開けた。

 廊下には出来立てで湯気の出ている食事が乗せられた台車が置いてあるようだ。

 メグが部屋の中に台車を押して運び込んでくる。

 アレックスは料理を机に運ぶのを一緒に手伝う事にした。

 メグからは座って待っていてくれて良いと言われたが、せっかくなので手伝っていく。


 並べ終わった食事を食べていくと、ブラウニーの作った料理は勧められるだけあって、とても美味しかった。

 美味しい食事を食べ終わって満足していると、ニコルが話しかけてきた。


「さてアレックス、食事の後だけど面倒な依頼の話をしようかね」

「はい」


 アレックスでも分かるほど、ニコルのやる気がない表情をしている。

 ニコルは怒ったような表情をした後に、大きなため息をついた。重い口を開くように話し始めた。


「夫のランドルフが忙しくしているのは話したと思うんだけど、忙しくても戻ってくるべきだと怒りに行ったんだ。けど、今やっている仕事が終わらなければ帰れないと言い始めて、最終的には仕事を手伝ってくれと言ってね。無理やり仕事を手伝わされる事になったんだよ」

「えっと、私の事は急ぎではないですし、仕事が終わってからで問題ないですよ」

「アレックス、すまないね」


 アレックスは本当に申し訳なさそうなニコルに、気にしないで欲しいと慌てて伝える。

 会って挨拶をと言う話になってから一ヶ月は会えていないので、ニコルは随分と怒っているようだ。


 申し訳なさそうな表情のままニコラは、ランドルフさんから聞いた事を教えてくれた。

 大量に各種ポーションが急ぎ必要なのだが、作業が進まず困っているのだと言う。

 必要なポーションの種類は普通の傷を回復させるポーションから、解毒、麻痺、あまり使わない病気用など回復させる物。更に強化をするための暗視、俊敏、筋力ポーションの各種ポーションを欲しがっているようだ。

 ニコラが名前を出した各種ポーションをアレックスは作る事は可能だ。

 病気用は治療魔法で治してしまう事が多いので、滅多に作る事はないが作り方は知っている。


「つまり私はポーションを作れば良いんですか?」

「それが違うんだよ」

「え?」

「ポーションを作る素材と人材は居るみたいなんだけど、ポーションの瓶が足りないって言ってきてね」


 アレックスもニコルの言いたい事はわかる。ポーションを長期間保存するにはポーション毎に特殊な瓶が必要になる。

 アレックスも瓶を作る事は可能だが、そこまで瓶づくりが得意ではない。

 そもそもアレックスもそうだが錬金術師の大半は、ポーションの瓶をガラス工房から購入している。依頼をするなら錬金術師のアレックスではなく、ガラス工房にした方が作業速度が確実に速い。


 ニコルにガラス工房に依頼した方が良いと助言すると、すでに頼んでいるのだと言う。

 頼んでいるなら何故アレックスに依頼してきたのか不思議だ。

 何故なのかを尋ねると、ポーションの瓶用に渡された素材が問題だとニコルが返してきた。


「素材ですか?」

「そうさ。瓶を作る為に依頼をしたのは路地裏にあるコボルトの工房なんだけど、素材を見せたら加工してないから瓶が作れないって言われてね」


 アレックスはニコルの言いたい事が分かった。

 ポーションの瓶は、ガラスを作るのに必要な素材以外にも混ぜ合わせる必要がある。

 しかし熱したガラスに混ぜ合わせる場合は、粉末状になっていないと混ぜ合わせられない。

 ニコルが貰ってきた素材は粉末にする前の段階だったのだろう。

 粉状でなければ素材として使えないなんて、ポーション作りに関わっている人でないと知る事は少ないので、ニコルが知らなくて当然だ。


 素材を粉にするのは大量でなければ錬金術師でも出来る。

 普通は専用の業者が粉にしているのだが、大量生産されているのは傷用のポーションが殆どで、他は解毒用が少し多い程度だった筈だ。

 なので一般的にポーションと言えば傷用を指している。

 錬金術師の店でポーションを注文すれば出てくるのは傷用だ。


 今回は傷用ポーション以外の瓶が必要だと予想ができる。

 ニコラさんに必要な瓶の種類と数を尋ねると、予想通りに傷用ポーション以外の物で、数もそこまで多い訳ではなかった。

 後は問題になるのは素材をどの程度の粉末にするかが問題になる。

 工房によっては粒子の大きさを指定してくるので、一度工房に行って尋ねた方が良さそうだ。


「ニコル、一度工房で職人と話をした方が良いと思います。私が訪ねても問題ないでしょうか?」

「職人と話すことは頼もうと思っていたよ。場所はメグに聞いた方が早いね」


 アレックスはメグに案内は可能かと尋ねる。

 メグは可能だと言った後に引き受けてくれた。路地裏出身のメグは当然工房の場所を知っているようだ。

 明日にでもメグとコボルトの工房に向かう事にする。

 工房で話をするときに素材を持っていた方がいいとニコルが言うので、素材を預かった。

 工房の注文がアレックスでは不可能だった場合は、素材を返却する事を約束した。

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