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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
一章 路地裏の錬金術師

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ワイバーンの革鎧−9

 アレックスはメグに似合いそうなアクセサリーを選んでいく。

 メグの髪の色は青みがかった銀髪なので、何色でも合いそうだが青などの寒色を入れると冷たい印象になりそうではある。

 暖色を中心に使っている物を選んでいく。

 戦闘の邪魔にならないように腕輪、ネックレス、髪飾り、指輪を中心に見せていく。


 メグはカラスを題材にして作ったネックレスが気に入ったようだ。

 メグが買うと言うので、お世話になったから送らせた欲しい話していると、上の階から大雀の求婚の鳴き声が聞こえた。

 だが鳴き声がピュセーマの物ではない。


 不思議に思っていると、メグが「アネモス?」と呟いた。

 アレックスは混乱する。大雀はオスからメスに求婚すると記憶にある。

 ピュセーマはオスだ。

 アネモスの性別をメグに聞くと、メスだと言う。普通求婚するなら逆だ。

 アレックスが混乱している間も求婚の鳴き声が聞こえ続ける。

 メグも混乱しているのか天井を見ながら困惑したような表情をしている。


「アレックス、これはどういうこと?」

「分からない。見に行くのは流石にダメだよね?」

「流石にダメだと思う」


 アレックスも天井を見てどうしたものかと考える。

 天井を見ていると、求婚が終わらなければメグが帰ることが出来ないことに気づいた。

 アネモスを一日預かることもできるが、メグがどう思うか分からない。


 メグにどうやって帰るか尋ねてみる。

 メグも帰れないことに気づいたようだ。頭を抱えてどうしようと呟いて困っている。

 アネモスを一日預かることも出来ると提案するが、求婚に失敗した時が不安だとメグは言う。


 そもそも求婚が成功した場合はどうなるのだろうか? 考えなければいけない事は尽きないが、今はメグをどうするかだ。

 部屋自体は余っているので好きに使って貰って良いのだが、男が一人暮らしの家に泊まるのは普通はダメだと思う。


 しかしメグとは一緒に採取に行って野宿もしているので気にしないかもしれない。

 迷いながらメグに泊まって貰っても良いと伝える。

 メグは迷っているのか少し黙った後に話しかけてきた。


「泊まらせて貰うわ」

「分かった」


 提案してから部屋は余っているが、ベッドが一つしかないことに気づいた。

 メグにはアレックスの部屋を使って貰うことにする。

 アレックスはベッドは無いが野宿用の装備があるので、別の部屋で寝れば良いだろう。


 メグに謝りながらベッドが無い事を説明して、アレックスの自室を使って欲しいと提案する。

 メグはベッドが無い部屋で問題ないと言うが、女性をベッドも無い部屋に泊まらせるのは出来ないと、何とか説得する。


「私の部屋が嫌なら、ベッドは魔法鞄を使えば動かせる」

「そこは気にしていません。むしろ家主を差し置いてベッドで寝るのはダメです」

「しかし来客を床で寝させるのは……」


 何とかメグにベッドに寝て貰えないかと説得するが話は平行線だ。

 一旦落ち着こうと飲み物を取ってくる事をメグに伝えて、厨房でお茶を沸かして持っていく。

 お茶を机に置いて座ろうとするとメグが立ち上がった。


「メグ?」

「……アレックス。それなら一緒のベッドを使いましょう」

「え?」


 一緒に寝るって子供でも無いのだから無理だ。

 そうアレックスが返そうとしたところでメグが近づいてきて唇にキスをしてきた。

 キスをしたまま思わずメグを抱き寄せてしまう。


 長い時間キスをしていた気がするが、本当は一瞬だったかもしれない。

 唇と唇が離れた後に回らない頭で考える。

 アレックスが感じていたメグからの好意は当たっていたようだ。


「アレックス、私はあなたが好きです」


 アレックスはメグからの告白に動揺する。

 好意があるかもしれないと思っていたが、まだ出会って間もなかった事もあり、誤解だったら不味いと友人と思うようにしていた。

 もっと時間が経過して気持ちがはっきり分かった状態で、アレックスの気持ちを伝える予定だった。


 自問自答していて気づく。

 気持ちを伝える予定だったと考えていたのなら、最初から答えは決まっていたのだ。


「私もメグが好きだ」


 今度はアレックスがメグを抱き寄せてキスをする。




 気づいた時には朝になっていた。

 後悔は一切していないが、冷静になるとメグは貴族の孫なので立場だとかの話をする必要が有ったとは思う。

 昨日はアネモスの求婚の鳴き声に釣られてしまった気がする。


 色々と考えるべき事はあるが、朝からお風呂を沸かして二人でお風呂に入る。メグもお風呂を大変気に入ってくれたようだ。

 風呂上がりに二人で遅い朝食を食べながら今後について話していく。

 アレックスは一般人だがメグは貴族の孫だ。

 その事をアレックスが心配するが、メグからは気にしなくて良いと言われる。


「祖母は私の気持ちを知っていましたから。アレックスに日焼け止めの依頼をしたのも、錬金術師として確認する目的と同時に、一度確認しておきたいと言われていましたし」

「ニコルさんに会う前から知られていたの?」

「実はそうなの。スーザンから聞いたようで知られてしまいました……。祖母はスーザンととても仲が良いのよ」

「スーザンってロブ工務店の?」

「そう。そのスーザン。アレックスからこの家を案内して貰った時に、スーザンには知られてしまってしまったの。そこから祖母に知られるまでは一瞬」


 アレックスは亜人の事を聞かれた時の事を思い出して納得する。

 田舎であればあるほど亜人と会う回数が少ないので、亜人に対して偏見を持っている人が多くなると聞いた事がある。

 アレックスは田舎から出てきたので、偏見を持っていればメグを引き離そうとスーザンが考えたのか。


 それであんなにスーザンとメグは真剣な表情で、言葉に詰まった時にはメグが泣きそうになっていたのか。

 あの時正直にオーガだと伝えて正解だったようだ。

 メグに推測を話していくと、その通りだと返ってきた。


「祖母からはアレックス相手なら好きにすれば良いとは許可を貰ったわ」

「そんな簡単に許可が出るんだ」

「ええ、騎士なのは祖母と祖父だけですから。私や父も騎士になろうと思えばなれるらしいですが、今のところその予定はないです」

「メグも騎士になれるんだ」

「誘いは受けていますが、あまり興味がないので断っているわ」


 騎士に誘われるとはメグは凄いなって考えていると、逆にメグからアレックスは問題ないのかと聞かれる。

 メグに父が死んで居ることを改めて説明して、母について話す。

 母は生きているが、父が死んでから一年ほどは悲しんでいたが、ふらっと居なくなってしまったので、気にする必要はないのだとメグに伝えた。


 メグから母の心配をされるが、簡単に死ぬような人ではないので問題ないと返す。

 元々父と結婚する前は村にいる事が少なかったとは故郷の皆から聞いていた。

 メグにも同様の説明をする。


 流石に何も連絡しないのは問題だと思うので、故郷には手紙を送っておくつもりだ。

 そうなると、そのうち母が店に訪ねてくるかもしれない。

 メグに母が訪ねてきた時に絶対に手合わせをしないようにと注意をしておく。


「手合わせですか?」

「うん。治癒魔法士が居ないと死ぬ可能性があるから」

「……手合わせで死ぬ?」


 アレックスが故郷では一番近距離戦が強い人だと説明する。

 メグは驚いた表情を浮かべながらも、手合わせをしないと約束してくれた。

 母の武勇伝を聞いて育ったので、そんな母と結婚した父をアレックスは大変尊敬している。


 話し合った結果、メグの家には今度挨拶に行く事になった。

 アレックスとメグの懸念すべき事は大半話し終わった。次はピュセーマとアネモスがどうなったか確認をしに行く事にした。

 二人で慎重に二羽がいる部屋の中を扉の隙間から覗く。


 ピュセーマとアネモスは二羽寄り添って巣の中にいる。

 どうやらアネモスの求婚は成功したようだ。

 成功したのなら問題ないだろうと、餌や水を準備して部屋を出た。

10万文字目前にして1日2話間に合いませんでした…。10万文字達成後は1日1話と改稿作業をしようと計画しています。


2話目が間に合わなかった理由の一つに、許可される描写の範囲がどの程度か分からなく、苦心したと言うのもあります…。

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― 新着の感想 ―
雀さんにつられて告白までは良いとして!一夜を共にするのはさすがに早くないか?!と内なる父さんご立腹です(笑)
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