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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
一章 路地裏の錬金術師

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ワイバーンの革鎧−6

 アレックスは長い髪を洗うのが大変だと思いながら髪を触っていると、そういえばジョシュも随分と長い髪をしていたのを思い出す。

 魔力は髪に宿りやすいと言われ、昔から髪を伸ばしている人は多い。


 魔力が何処に宿るかは錬金術をしていれば知っている。

 魔物であれば魔石に魔力が多く宿っているというのは常識で、次に内臓に魔力が多く、魔物の毛に魔力が強く宿っているという事はない。

 しかし魔法協会では髪を伸ばしている人が多かった。

 魔導士や魔法使いなど、魔法を使う人は今でも髪を伸ばしている人が多いようだ。


 アレックスの場合はお願いされて伸ばしていただけで、魔法のために伸ばしている訳ではない。

 今でも髪に魔力が宿ると思っている人は意外と多いのだろう。


 髪が長くてローブを着ていれば魔導士か魔法使いであると思われる可能性が高く。魔力が髪に宿っていないと知っている人でも、髪を伸ばしている場合が多いとは聞いたことがある。

 ジョシュも知っているが伸ばしてるだけかもしれない。


 手入れが大変なのでアレックスとしては髪を切っても良いのだが、今は角を隠すのに便利な事もあって髪を切れそうにない。

 髪を切るのは諦めて風呂から上がって髪を洗い始める。

 髪を洗うシャンプーも髪を切りたい理由の一つなのだと思い出す。


 シャンプーは髪を痛めないようにと、ポーションと石鹸が混ざったシャンプーで、アレックス自ら錬金術と調合で態々作っている物だ。

 髪を洗って体を洗った後はもう一度ゆっくりと湯船に浸かる。

 髪のことなんて忘れるくらいの気持ち良さに、気の抜けた声が出る。

 毎日でも風呂に入りたい。


 風呂に入るなら水を汲み上げる魔道具を作った方が良さそうだが、今は忙しいのでどうするかが問題だ。

 魔法鞄の中に普段使わない魔道具も眠っているので、何か使えるものがないかと思い出していくが、故郷では基本井戸ではなく川の湧き水と、水を作り出す魔道具の壺を使用していたので、水を汲み上げるような物は思い出せない。

 やはり防具を魔道具にするのを優先した方が良さそうだ。


 どのように魔道具を製作していくか考えていると、風呂に浸かりすぎたのかのぼせて来たのを自覚する。

 倒れる前に風呂を上がった方が良さそうだ。




 アレックスは朝起きると、顔を洗うために井戸から水を汲んでいると、風呂の事を思い出す。

 防具を早く仕上げて風呂のために魔道具を作りたい。


 昨日考えた素材の中で足りなくなりそうな物や、店を開店するに当たって必要になる素材がある。

 今日は最初にギルドで注文をしに行かないといけない。

 朝食を食べた後にピュセーマに乗ってギルドに向かおう。

 ピュセーマの健康状態を確認すると、今日も病気もなく健康のようだ。


「ピュセーマ、おはよう。今日はギルドにこうと思うんだが良いかい?」

「チュン!」

「朝食を食べ終わったら呼ぶよ」

「チュンチュン!」


 朝食を食べ終わってから店から出て鍵を閉める。

 ピュセーマを呼ぶとすぐに降りてきた。

 鞍を取り付けると、アレックスはピュセーマの背中に乗る。ギルドに向かって欲しいと言うと、ピュセーマは飛び立った。


 ギルドは普通どちらかと言えば朝と夜の方が混んでいる。

 王都のギルドも同様に朝の方が混んでいるようで、ギルドの止まり木には多くの大鳥が止まっている。アレックスが降りると、ピュセーマは指示をする前に止まり木の方に飛んで行った。

 ピュセーマが止まり木に止まったことを確認すると、ギルドの扉を開けて中に入る。


 ギルドの中はとても混雑している。

 王都のギルドに来るのは三回目なので、何処で依頼をすらば良いかが分からない。

 見回していると、近くから聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。


「アレックス?」

「メグじゃないか。おはよう」

「おはよう。アレックス。今日はギルドに何の用事?」

「依頼を出そうと思って来たんだけど、何処で依頼を出せば良いか分からなくて」

「それなら私が案内するわ」

「助かるけど、良いのか?」

「ええ」


 メグが案内してくれた受付も混んでいるので、待ち時間が発生しそうだ。

 列に並んで待ちながらメグに案内をしてくれた事についてお礼を言う。

 メグはすぐにその場を離れると思っていたが、一緒に並んでいる。


「メグ、忙しいだろし、ここまでで良いよ?」

「実は良さそうな依頼がなかったの。アレックスがどのような依頼を出すのか気になるから少し付き合っても良い?」

「隠すような依頼ではないから構わないよ」


 メグと一緒に話しながら順番が来るのを待つ。

 ニコルの依頼を受ける前にメグを意識してしまっていたので、依頼中は仕事として行動する事を心がけていた。

 一緒に採取をしたことで緊張感のような物は以前ほど無くなった気がする。

 メグに意識されているのかどうかは、アレックス側の誤解の可能性がある。自然体になれて良かった。


 アレックスがどのような依頼を出すのかをメグに話していると、列が徐々に進んでいく。

 メグが採取依頼を一部受けようかと提案してきた。


「メグなら欲しい素材の位置がわかる?」

「ええ。量が多いようだから全ての依頼を受けるのは無理だと思うけれど、素材が採取できる位置は大半知っているわね」

「それなら受けられる物は受けて貰おうかな」

「助けてもらったお礼もしたいから是非受けさせて」

「気にしなくて良いのに」

「私が気になるから」


 依頼料も要らないとメグが言うので、流石にそれはダメだと、アレックスは正規の値段を払おうとする。

 しかしお金は要らないというメグの抵抗により、二人の間を取って相場よりは安い金額で買い取ることが最終的には決まった。

 採取の依頼以外で金属や貴金属に関しては、路地裏の鍛冶屋を頼ると良いとメグから提案された。


 そういえば路地裏には鍛冶屋があると教わった気がする。

 メグが依頼しようとしている金属の他にも、特殊な金属も取り扱っているのだと教えてくれる。

 特殊な金属は今回の魔道具制作にも使えるかもしれない。

 ダンジョンの魔物を金属に混ぜ合わせて、良さそうな金属を作り出してくれる可能性もある。


 以前聞いた時にメモを残してあるので、メグにこの場所の鍛冶屋かと尋ねると、メグがそうだと言う。

 この後行ってみよう。

 この後行ってみる事をメグに伝えると、それなら案内すると言われる。


「いや、流石に悪いから一人で行くよ」

「アレックスは住所を見ただけで場所が分かるようになったの?」

「……言われてみれば分からない」


 メグに言われるまですっかり忘れていたが、メモに書かれた住所を探す場合はどちらにせよ人を頼る事になりそうだ。

 アレックスはメグに頭を下げて案内をお願いする。

 メグが笑いながら了承してくれた。


「それに、私ならアレックスを紹介もできるわ」

「確かにそれは助かるかも」


 話をしながら列を進んでいくと、受付まで順番が回ってきた。

 受付の前に立つと受付嬢がアレックスではなくメグを見ている。


「あら? メグ此処は依頼を発注する場所よ?」

「エミー、発注するのは私じゃなくて彼よ」

「そうなのね。それでは……あら?」


 受付嬢がメグからアレックスに視線が変わったであろう瞬間から凝視されている?

 アレックスではなく後ろにあるのかと確認をしたが何も無い。

 もしかして何かしてしまったかと一瞬思うが、そもそも喋ってすらない。

 受付嬢に覚えはないかと思って改めて確認すると、初日に採取場所を教わった人だと気づいた。

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