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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
一章 路地裏の錬金術師

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ワイバーンの革鎧−5

 アレックスはハンクさんと一緒に、防具を魔道具にするのなら製作時間がかかるだろうと、全ての防具の製作時間を再度見積もっていく。


「魔道具は付加に比べると作るのに時間がかかりそうです」

「やはりそうなりますか」


 ハンクの返事から時間がかかる事を分かっていたようだが、苦渋の表情を浮かべている。

 能力の付加に比べて魔道具は作るのが大変なので、時間がかかるのは仕方ない。

 優先順位をどうするか尋ねると、魔道具にする事を優先して欲しいとハンクが言う。


 他の防具につける付加をどうするかを悩む。

 防具の依頼者が随分と急いでいる事もあり、時間の制約上どうしても付加できる能力が限られてくる。

 取捨選択をしていくしかない。


 限られた時間をどう使うか考えていると、そもそも全ての能力付加を一人で担当する必要はない事に気づいた。

 問題は付加する為の素材がまだ市場に出ていない事だ。

 手持ちの素材を売る気は無かったのだが、特殊な状況を考えると素材を売ることも視野に入れた方が良さそうだ。


「ハンクさん、事情が事情なので素材を売る事も視野に入れたいのですが、どうしますか?」

「なるほど。当店で買い取って他の錬金術師に頼むのですね?」

「はい。分けて作業をした方が時間は短縮できます」

「そうですね……。確かにその方が良さそうです。素材に関しては、先ほどダンジョンの魔物が売りに出るだろうと教えて頂いたので、売りに出た物を買えなかった場合にお願いしてもよろしいでしょうか?」

「分かりました。連絡頂ければ譲りますので、いつでも相談してください」


 どの様に作業を進めるか決まったところで、今日持って帰る防具は魔道具として処理する防具一着だけに決まった。

 他の防具三着に関しては、能力の付加に関しては基本的には他の錬金術師が行い、装飾はハンクさんが担当する。


 最後に工賃についても話していく。素材だけでも高いのに、特急料金までも含まれるためやはり高額に成ってしまう。

 高すぎるのではと心配したが、最終的な値段が決まってもハンクは気にした様子も無い。

 金額は問題無さそうだ。


 どの様に製作していくかが決まった所で、契約を結びハンクが手付金を持って来てくれた。

 魔法鞄に契約書と手付金、そして防具とワイバーンの革が入った箱を入れる。

 魔法鞄に荷物を入れ終わった後に、ハンクさんから魔法鞄に合う皮の鞣しができるか聞いて起きましょうかと提案された。


 今回の仕事を受ける事を考えると、自分で作業する事は時間的な問題もあって不可能だ。

 提案を受け入れて、お願いする事にした。

 話し合いが終わったところで、帰るために店を出る。

 ハンクさんは見送りまでしてくれ、店の外で謝ってきた。


「最初の依頼がこのような急ぎの仕事になってしまい申し訳ない」

「気にしないでください。縁のある仕事の様ですし」

「アレックスがワイバーンの皮を持ち込んで頂けなければ、今でも私は頭を抱えていたでしょう。本当に感謝致しております。魔道具の製作をよろしくお願いします」


 出来る限り良い物を作ると請け負う。

 ピュセーマを呼ぶとすぐに止まり木から降りてきた。ピュセーマに帰宅する事を伝え、魔法鞄を鞍に固定する。

 騎乗してハンクに挨拶をした後、飛ぶ様に指示を出す。


 ピュセーマなら自宅までの距離は一瞬だ。自宅の店の前で下ろしてもらって、鞍を外して自由にしてやる。

 お礼を言って撫でるとグーグーと機嫌が良さそうに鳴き始めた。

 最近は改装作業や、日焼け止め作りでピュセーマに乗る機会が少なかった。

 久しぶりにアレックスを乗せて飛べたのが楽しかったのかもしれない。


 防具を魔道具にする作業も時間がかかりそうなので、しばらく忙しくなり一緒に飛ぶ機会が再び減ってしまいそうだ。

 自由に飛び回っているので運動不足になる心配はないが、相手をしないことでストレスが溜まってしまう可能性はある。

 朝に挨拶をした時や餌の追加時に多めに触れ合って会話をした方が良さそうだ。


 今日はもう夕方で、作業を始めても止められなくなるだろう。

 ピュセーマと触れ合っておく事にした。


「ピュセーマ、店の前ではなくて部屋に移動しようか」

「チュン!」


 ピュセーマの部屋に移動して一緒に遊んだりして触れ合っていく。

 遊ぶと言ってもピュセーマの方が年齢的には年上なので、遊ばれていると言った方が良いのかもしれない。


 アレックスの一番古いと思える記憶にもピュセーマが居る。

 ずっと一緒にいるので、鳴き方で何となくだが言いたい事は分かる。

 年上という事もあってピュセーマとは不思議な関係だ。

 親とはまた違うし、だが兄弟とも違う。やはり相棒と言うのが一番合っているのだろうか?


 アレックスはピュセーマを相棒だと思っているが、ピュセーマはアレックスを手のかかる子供か弟辺りに思っているかもしれない。

 外が暗くなってくるとピュセーマの胸の羽が膨らんできて眠くなって来たのがわかる。


「眠そうだな。ピュセーマ寝るかい?」

「……チュン」

「分かった。おやすみ」

「チュン」


 アレックスはピュセーマの部屋を出ると、夕食を作ろうと一階へ降りる。

 まずは水を用意しようと井戸に向かう。

 井戸に桶を投げ入れながら、水を汲み上げる魔道具を作った方が良さそうだとロープを手繰り寄せながら考える。


 夕食用の水程度なら良いが、錬金術でポーションを作ったりする場合は大量に水が必要になる事が多い。

 魔法で水を汲む方法もあるが毎回魔法を使うのは大変だ。

 だったら魔道具を作った方が早いし楽だ。

 それに魔道具があれば風呂に入る時に水を溜めやすくなる。


 というか未だに一度も自宅の風呂を使っていない事を思い出した。

 風呂に入っていない事に気づいたら風呂に入りたくなってきた。

 今日までロブに誘われて銭湯に数回行ったが、後は鍋で水を沸かして体を洗った程度だった。


 風呂を沸かす方法は、改装時に錬金術で使う魔道具の炉に繋げてもらっている事で随分と簡単になっている。

 問題は水を貯める方法だが今日は魔法で溜めれば良いだろう。

 考えれば考えるほど風呂に入る方向に思考が向かう。


「これはもう、お風呂を沸かそう」


 風呂の大きさを確認して、魔法で井戸から丁度いい水の量を持ち上げる。

 水を魔法で維持しつつ風呂の中に波打って溢れないように入れれば完了だ。


 錬金術用の炉に繋げているとはいえ、直接繋いでしまえば風呂側の設備が溶けてしまうので間接的に繋がっている。

 その関係で少し風呂が沸くのに時間がかかるようになっている。夕食を作りながら風呂が沸くのを待つ事にする。


 夕食は一向に減ることのない鎧猪の肉を米に乗せた丼にする事にした。

 完全に一人暮らしになった事もあって、魔法鞄の中に買った食事や作った料理を入れておけば冷めてしまうが、いつでも食べれる料理を取り出せる状態にするか迷う。

 魔法鞄の中に料理を忘れてしまいそうだし、腐らないようにはなっているが、時間は経過しているので別の理由で食中毒にならないか不安だ。

 今度料理についてどうするか迷いながらも、今日の夕食をさっと作ると食べてしまう。


 夕食を食べ終わった後に風呂の温度を確認する。

 お湯は丁度いい温度になっており、風呂に入れるようだ。

 脱衣所で服を脱ぐと、髪留めを魔道具の物から普通の物に変える。

 脱衣所から風呂場に移動して、掛け湯をして風呂に入ると丁度いい温度で気持ちが良い。


「はー、気持ちいい」


 思わず独り言が出てしまうほどには風呂に入るのは気持ちが良い。

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