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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
一章 路地裏の錬金術師

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ワイバーンの革鎧−1

 アレックスは改装作業の終わった店内を見ながら、三週間かからないで作業が終わる事に驚く。

 改装作業が終われば、店を開店させると思うと感慨深いものがある。

 故郷では父の生前は店を手伝っていたり、父の死後は店を引き継いでいたが、どうしても父の店であるという意識が強かった。

 アレックスの店だと思うと緊張してくる。


 ロブ工務店のロブと、店の最終確認をしていく。

 更に今日はロブの奥さんであるスーザンが来ており、一部の柱などに掘られている木彫り細工の最終確認もしてくれている。

 建物全体を見て回って、最終確認が終わった所で改装作業が終了となった。

 ロブや作業員たちにお礼を言って感謝をしていると、玄関の扉が開いた。


 まだ店としては開店していないので、誰がやってきたのかと確認すると、ジョシュが立っていた。

 ジョシュは以前会った時と同じように装飾されたローブを着ている。

 ローブの上に明るめの茶髪の毛を長く伸ばした姿がよく似合っている。


 先ほどまで完成を喜んでいたロブたちが急に静かになった。

 王都では有名らしいジョシュの登場に周囲の皆が驚いているのだろう。

 アレックスも兄弟子がジョシュの友人でなければ、気軽に話せるような相手では無かったはずだ。

 ジョシュはジョシュア・ド・ローウィという名前で伯爵家三男。

 魔導騎士となっているので、ジョシュ自身も貴族だ。


 ジョシュと会うのは国家資格を取得して以来なので、三週間近くあっていない事になる。

 魔導騎士としての仕事が忙しかったのだろう。

 ジョシュに近づいて声をかける。


「ジョシュ、久しぶり」

「ああ。随分と店は様変わりしたようだ」

「錬金術をするには少しやり難かったから開店前に改装したんだ」

「言ってくれれば店を渡す前にやっておいたぞ?」

「鍵を貰って次の日に思いついたから。最初は改装作業を自分でやろうと思ってたけど、まとまったお金が有ったから頼む事にしたんだ」


 ジョシュには言うつもりはないが、立派な店を貰ってしまったので、流石に改装までお願いをするのは申し訳なかったと言うのもある。


 ジョシュから改装費用について心配されたが、お金に関しては問題はないと返した。

 幸いな事にワイバーンの皮が金貨百枚で売れたので余裕があるのだ。

 錬金術師として活動を始めれば、普通なら稼ぐのが難しい金貨百枚という改装費用も元は取れる予定だ。


 ジョシュに改装した店内を案内した後に、改装作業をしてくれたロブを紹介した。

 ジョシュと会話をするロブは丁寧に頭を下げて敬語で話していたが、ジョシュからそこまでする必要はないと苦笑されている。

 ジョシュと話しているロブが大変そうなので、会話を変わる事にした。


 ジョシュに久しぶりなのはやはり忙しかったのかと尋ねると、任務が連続していて大変だったと言う。

 ジョシュは愚痴を言うように話し始めた。

 聞いたのはこちらなので、話に付き合う事になった。


「最初の任務はまだ良かったんだ。帰還してすぐに、次の任務にそのまま行く事になってしまった。後で行った任務は、ダンジョン化した場所が悪くて魔物を倒すのが大変だったよ」


 アレックスの見つけたダンジョンと時期が重なる。


「ダンジョンか。私も一個見つけて報告したよ」

「もしかして、マンティコアとオルトロスがいた場所か?」

「そこだね」

「そうか。後で行った場所がそこだ。ダンジョンの攻略は大変だった……」


 やはりアレックスがメグと見つけたダンジョンのようだ。


 ジョシュはどうやってダンジョンを攻略したのか最初から話してくれた。

 魔物が飛行できないようなので、魔法で全体を上空から攻撃すれば簡単に終わると騎士団では考えられていた。

 だが、魔法の攻撃で窪地が深くなれば今後ダンジョン化する頻度が上がる事が予想された。

 今後の事を考えて地上に降りて魔物を倒す事に切り替わった。


 合わせて五十頭近い魔物を倒すのはかなり大変だとなり、手の空いている騎士団の団員は召集されて魔物の討伐をする事になる。

 地形を変えないように戦うとなると、強い魔法が使えない。

 結局作戦なんてないに等しく、魔物を力技で倒すしかないという状況になったようだ。


 当然力技で魔物を五十頭も倒すのは大変だ。

 しかもダンジョン化しているので魔物が強くなっている。

 最終的に十人を超える騎士団の団員が集まって、ダンジョンの攻略をする事になった。


 騎士団の団員が十人と言っても相手は五十頭なので一人五頭は倒す必要があり、団員たちは必死になって魔物を倒し続けた。

 魔物を全て倒した後に、窪地に溜まっていた魔力を解放してダンジョンの攻略は終わった。

 ダンジョンの攻略が終わった後は皆で座り込んだと、ジョシュが話してくれた。


 大変な討伐だったようだ。

 元々ジョシュはダンジョン攻略の頭数には含まれていなかったのだと愚痴っている。

 偶然討伐前に帰還したことで、そのまま討伐に同行したのだと言う。


「という訳で大変だったよ。大変だった分魔物は各自で持ち帰りになったんだが、使い道がないのでアレックスに使って貰おうと思ってね」

「ダンジョンの魔物だから買い取るよ?」

「いや、錬金術で何か作ってくれればいい」


 確かに貴族のジョシュにはお金よりも、錬金術で何かを作った方が良さそうだ。

 ジョシュに欲しいものを尋ねる。

 ジョシュはポーション類は数があっても問題ないし、魔道具も部下に使ってもらう事もあるので、何でも問題ないと言われる。


 完全にお任せは困るのだがと若干思いながらも、ダンジョンの魔物は素材として上質な物なので、物を見れば自然と作るべき方向性が決まるかもしれない。

 ジョシュに魔物を見せてもらう事にした。


 まず床が汚れないように特殊な加工を施した布を広げる。次に布の上にジョシュの魔法鞄から魔物を取り出して行く。

 マンティコア三頭、オルトロス三頭の計六頭の魔物が布の上に置かれた。

 状態を順番に見ていくと、聞いた限り激しい戦闘だった割には、どの魔物も状態は良いようだ。

 かなり良いものが作れそうだ。


 皮に関しては錬金術で使うよりかは防具などにしてしまった方が良い。

 ジョシュに革鎧にするかローブの様な物のどちらが良いか相談すると、ローブの方が良いと言うので、鞣しを行う時に柔らかく仕上げる事にする。


 次に牙や骨だがアクセサリーにも出来るが、付加素材にしてしまった方が使い勝手が良さそうだ。

 血と、マンティコアの毒辺りはポーションの材料などになるだろう。

 肉に関してはどちらの魔物も美味しそうな見た目をしていないので、ジョシュも食べる気はないだろうし、付加素材にするかポーションにでもしよう。

 ジョシュに相談すると、大体の方向性が決まっていく。


「そうだ、欲しい物といえば魔法鞄があると便利だな。任務で使う物はすぐに悪くなるので、壊れる前に交換するのもあって、魔法鞄の交換頻度が高い」

「魔法鞄は壊れたら中身が飛び出るから早めの交換が確かに良いね。それならローブではなく、魔法鞄を作っておくよ」

「頼む。鞄の大きさについては、大きくても小さくても使い道はあるのでどちらでも良い」


 ジョシュが今持っている魔法鞄の大きさを確認しておく事にした。

 ジョシュの手持ちの鞄を確認して、鞄の大きさを決めた。

 合わせてアレックスが作業用にしているポーチ型の鞄も用意する事にした。


 ジョシュから魔法鞄は欲しいが、他の素材は好きに使って売って構わないと言われる。

 それでは素材を貰い過ぎだ。

 他にも何か考えておいた方がいいかも知れない。

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