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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
一章 路地裏の錬金術師

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トロールの日焼け止め−6

 朝起きると着替えて、ピュセーマに挨拶しに行く。

 その後は、いつものように朝食を食べていると、改装が随分と進んでいる事に気づいた。

 採取に行ったり採取してきた素材の加工をしていたので、改装状況を細かく確認していなかったが、柱が新しく追加されて、壁もでき始めている。


 店の規模からして最低でも一ヶ月はかかると思っていたが、想像を遥かに超える速度で改装は進んでいるようだ。

 亜人を作業に加えれば早いとは聞いていたが、ここまで早くなるとは思わなかった。

 改装状況を確認していると、ロブがやって来て今日の改装作業が始まった。


 作業の邪魔にならないよう退いて、日焼け止めの配合を何処でやろうかと考える。

 室内でやるのが一番良いのだが、改装作業で金槌やら木槌を使っているので、室内は揺れることが多い。作業するには不向きだ。

 初めて作る物という事もあって、しっかり分量を計りたい。

 考えた結果、殆ど揺れる事のない中庭で作業をする事にした。


 全ての素材を取り出していく。

 まず水を濾過して純水になるべく近いものも取り出す。

 純水は錬金術を使えば簡単に手に入るし、錬金術でも素材としてよく使う。なので魔法鞄の中に純水は常に入れてある。

 今回は手持ちの純水を使って作る事にした。


 用意した素材は、マルーラの種子から取り出した油、ムチレージ草の球根から取り出した粉、トロールの石を砕いた粉、純水の四つだ。

 分量的には純水が一番多く、次にマルーラの油が多い。

 トロールの石を砕いた粉は少量で、球根から取り出した粉に関しては極少量。

 水と油を入れる関係上しっかりと混ぜ合わせる必要があるようだ。


 蓋のできるガラス瓶を用意して分量通りに素材を投入していく。

 素材を全て入れ終わった状態で瓶に蓋をして、中身が混ぜ合わさるまで瓶を振り続ける。

 魔道具で混ぜる為の道具はあるのだが、今は置く場所がない。今日は自力で振って混ぜ合わせていく。


 三分も振っていると、瓶の中身は真っ白になっている。

 蓋を開けて中身を確認すると、クリーム状の液体になっている。トロール石由来の白さもありそうだが、水と油が乳化もしてそうだ。

 手に取って手の甲に塗ってみると、想像以上に塗りやすい。

 しかも日焼け止めを伸ばしていくと若干白さは残るが違和感がないほどになる。


 今日も改装の作業員にトロールが居たので、ロブに許可を取って日焼け止めを試して貰う。

 試してくれたトロールが、今使用している王都で普通に売っている日焼け止めや、以前に使用したトロールの日焼け止めより品質が良いと喜んでくれた。


「それなら同じ物を量産すれば良さそうだ」

「はい。この品質なら皆喜びます!」


 最初に作った物は試してくれたトロールに感謝の印としてそのまま渡した。

 ニコルに納品する物をある程度の量を作ってしまう。

 アレックスは中庭に戻ると、材料を計量して瓶に入れ、中身がクリーム状になるまで振り続ける。

 同じように日焼け止めを作っていき、五個の瓶が出来たところで魔法鞄に入れるる。


 一度、ニコルに報告に行く事にする。

 ロブに完成した日焼け止めを見せてくるので出かけてくると伝えると、店のことは任せてくれと受け負ってくれた。

 手土産として熟しているマルーラを持っていく事にした。


 メグの家はピュセーマで飛んでいくほどの距離ではない為、歩きで移動していく。

 門で呼び鈴を鳴らすと、家の中からメグが出てきた。視線が合うと、メグは花が咲いたように笑顔を見せて近づいてきた。


「アレックス、どうしたの?」

「日焼け止めが完成したよ」

「もう完成したの?」

「元々素材があればそこまで難しい工程はないから簡単に作れたよ」


 元々日焼け止めは錬金術を使わないでも製作ができる物だ。

 錬金術を使えばいくつかの作業を省略できるので、半分以下の時間で作ることが出来ていそうだ。

 門の前で少し話をした後、メグは家の中に招き入れてくれた。


 家の中に入ると、前回同様に書斎へと案内された。

 ニコルは仕事をしているのか、書類に何かを書き込んでいる。

 メグから椅子に座る事を勧められて、椅子に座って待っていると、ニコルの作業はすぐに終わったようで、ニコルは顔を上げた。

 ニコルに挨拶をし、手土産のマルーラを渡した後に、日焼け止めが完成した事を伝えた。


「もう完成したのかい?」

「元々錬金術師以外でも作れる物で、難しい工程はありませんでしたから」

「そうかい。物を見せて貰おうか」


 アレックスは瓶に入れられた日焼け止めをニコルに差し出す。

 ニコルは瓶を開け、日焼け止めを手に取って確認している。

 店の改装作業の作業員の中にトロールが居たので、日焼け止めの確認はして貰っているとニコルに伝える。


 入念に日焼け止めを確認していたニコルは顔を上げて上出来だと言った後に、今回の依頼は同量の瓶を二つで完了だと言う。

 すでに作っている量で足りているようだ。

 先ほど作った日焼け止め全てニコルに渡した。


 ニコルが全ての瓶の中身を確認した後に、今回の報酬だと袋を手渡された。

 中身を確認すると金貨が十枚も入っていた。

 日焼け止めを作るのは簡単だったので、報酬が多すぎるとニコルに返そうとすると、孫を助けてくれたお礼だと言われた。


「それにしても多すぎます」

「これでも騎士だからね。一族が受けた恩はしっかり返す必要がある」

「貴族としての理由ですか」

「その通りだよ」


 悩みつつも貴族としての理由があるのならばと、報酬を受け取る事にした。

 今回の依頼分以外で、残っている素材はどうすれば良いかニコルに尋ねると、可能な限り日焼け止めを作って納品して欲しいと言わる。

 アレックスは作って納品する事を了承した。

 それと店が開店したら日焼け止めを置きたいが、問題ないかと尋ねる。


「問題が無いどころか、お願いしたいほどだよ。でも手持ちの素材がなくなっても採取はしばらく止めた方が良いね」

「やはりダンジョンが理由ですか?」

「そうだよ。騎士が動く事にほぼ決まったようだけど、騎士を複数人動かすのは簡単では無いから、ダンジョンの攻略はもう少し先だろうね」

「そうなんですか」


 ダンジョンの位置が悪いというニコルの予想した通りに、ギルドではなく騎士が動く事になったようだ。


 ニコルが騎士がすぐに動けない理由も教えてくれた。

 騎士一人か二人であればすぐに動かせるが、ダンジョンに居るマンティコアとオルトロスの数が多すぎる事で、騎士が一人二人では数が足りない。

 騎士の数を揃える必要があるのだが、騎士は忙しいので複数人集めるのは簡単では無いのだと言う。


 どうやら次に採取に行けるのは当分先になりそうだ。

 しばらくは材料があるので大丈夫だが、採取に行ける時期を知りたい。

 ニコルに採取について相談すると、ダンジョンが攻略されたかどうかは、メグ経由で教えて貰える事になった。


 ダンジョンが攻略されたか分かるまでは、採取場所に近づかないようにとニコルに再度注意される。

 ピュセーマとなら倒せない事はないが、態々危険に近づく気は無い。ニコルに採取場所へは行かないと返す。


 依頼やダンジョンについての話が終わったところで、手土産に持って来たマルーラをメグが持ってきた。

 マルーラをつまみながら、トロールが酒にしていたと言っていた事を思い出す。

 熟しすぎて発酵している実を見つけ出してニコルに見せながら、マルーラは酒になると話す。


 ニコルはどのような味か気になったようで、発酵したマルーラを食べ始めた。食べながら、どんな酒になるのか気になると言っている。

 どうやらニコルは酒好きのようだ。

 マルーラの実はまだあるので熟した物を酒にしてみようか。

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