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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
一章 路地裏の錬金術師

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トロールの日焼け止め−5

 遠征の次の日は流石に少し眠いと思いながらも起き上がる。

 欠伸をしながらピュセーマを確認しに行くと、まだ寝ていたので餌と水を追加しておいた。

 どうやらピュセーマもお疲れだったようだ。

 一階でロブを待っていると、すぐにロブは作業員を連れてやって来た。ロブが早速指示を出すと改装作業が始まった。


 改装は任せて、採取してきた素材を鞄から取り出して更に加工していく事にした。

 まずはマルーラを取り出す。

 マルーラは油を搾るだけなら完熟している必要はないが、食用にするなら追熟させる必要がある。


 マルーラの実は熟す前に木から落ちる。

 地面に落ちていたマルーラを回収したのは、食べられる物を選んでいたからだ。

 食べられる物と食べられない物に分けてマルーラを選別していく。

 まだ青い実は中庭で追熟させておく。


 今回は食べられる実を中心に果肉と種子を分けていく。

 果肉が発酵している物もあるので、発酵している物は更に分けて行く。

 分ける作業をしていると、マルーラの匂いに釣られたのか作業員のトロールが近づいてきた。


「マルーラですか?」

「ええ。トロールにはやはりご馳走ですか?」

「果実を食べても美味しいけれど、大半は潰して酒にしていたと聞いています」


 話しかけてきたトロールは若いようで、マルーラを採取していた世代ではないと言う。

 それでもマルーラの利用方法は教わっていたようで、食べ方や油にする方法を教えてくれた。

 アレックスは色々と教えてくれたお礼にマルーラを食べても構わないと、果肉の入った入れ物を差し出す。トロールが美味しそうに食べ始めると、他の作業員たちも興味を持ったのか近づいて来た。


「食べてみますか?」

「良いんですか?」

「ええ。欲しいのは種なんです。実は好きに食べて良いですよ」

「それじゃ一つ」


 作業員がマルーラを食べると美味しいと声を上げた。

 作業員たちが休憩時間に食べて良いかと聞くので、種を残しておいてくれれば好きにして良いと伝える。マルーラの種子を取り出すのは作業員に任せる事にした。


 取り出した種子は乾燥させてから中にある仁を取り出して油を搾るのだが、今回は魔法で手早く洗って乾燥させてしまう事にした。

 洗って乾燥させた種子を割って中の仁を取り出していく。

 普通なら大変な作業も身体能力を上げるスキルを使えば指で簡単に割れていく。むしろ種子の中にある仁ごと砕かないかが問題だ。


 殻と仁を分けると、仁から油を取るために魔法鞄から圧搾する為の道具を取り出す。

 ここでも身体能力のスキルが有効で、道具とスキルを使って効率よく油を搾っていく。

 搾りかすにも油が残っているので、ここからは錬金術で分離をしていく。


 最初から錬金術で油を分離をしても良かったのだが、トロールは態々マルーラから油を絞っていた事を考えると、マルーラから絞った油に意味がありそうだ。

 なので圧搾して油を搾った。

 圧搾して取り出した油の目にみえる大きさの不純物を取り除いて、油を取り出す作業は終わりだ。


 油を容器に移し替える頃には一日が終わっていた。

 改装作業をしていた作業員たちから、帰るときにマルーラのお礼を言われる。逆にアレックスは種子を取ってくれて助かったと返した。


 朝起きるといつも通りに準備を始める。

 昨日は早く寝たからか朝起きてもまだ眠いという事は無くなっている。

 ピュセーマに挨拶に行くと、同じように疲れは十分に取れたのか、朝挨拶に行くと元気に鳴き返してきた。

 朝の準備を終えて一階でロブを待っていると、ロブは作業員を連れてやってきた。すぐに作業が始まる。


 今日も作業は任せて、ムチレージ草の球根を処理する事にした。

 ムチレージ草の処理は割と簡単なのだが、水も大量に必要になるので先に井戸の水質を確認する事にした。

 中庭に出ると井戸の蓋を取り外し、ロープを付けた桶を井戸の中に落とし込む。ロープを引っ張って桶を回収すると、しっかりと水が汲まれている。


 魔法鞄の中から水の花と呼ばれる、蕾のような形の魔道具を取り出す。

 水の花は水の中に入れると花が咲くように広がり、花の色が白や青であれば飲料として飲むことが可能だ。

 水の花を桶の中に入れる。

 水の花が咲くのには多少時間がかかるので、ムチレージ草の球根を取り出して球根の下についている根など、不要な部分を切り取っていく。


 球根を処理していると水の花が咲いたようだ。

 水の中から取り出して水の花を観察すると、薄らと青い花になっている。

 水の花は青色に近ければ近いほど上質な水なので、井戸の水は王都の中にあると考えれば、かなり品質が良いものだ。


 球根の処理を終わらせると、このまま外で作業を続ける事にする。

 大釜と釜を熱する為の巨大な魔道具のコンロを取り出した。

 球根を擦り下ろすのだが、一個一個おろし器で擦り下ろしていたら一日がかりになってしまう。


 処理した球根を全て鍋の中に入れると魔法で砕いていく。

 球根が砕けたら弱火で火を付ける。粘りがどんどんと出てきて、糊の塊の様になった。

 出来上がった塊の量を確認すると、少々量が多すぎたかもしれないと後悔する。

 始めてしまった事はどうしようもないので、水を入れて薄めていく。大釜一杯まで水を入れると粘度の高い濁った液体になる。


 そこから残っている繊維や欠片を取り除いていくと、透明な粘度の高い液体になった。

 透明な液体を煮詰めて行くと残った成分が粉状になるのだが、液体の量が多すぎるので錬金術を使って時間を短縮していく。

 水だけを取り出す事を繰り返して、粘度の高い液体を粉状にしていく。

 粉になってしまえば意外と量は少ない。


 しかし日焼け止めを作る際に入れすぎれば、日焼け止めが糊の塊になってしまいそうだ……。

 次の作業は鉱石を砕くのだが、その前に一度休憩する事にした。

 中庭から室内に戻ると、丁度ロブたちも休憩をしていたようだ。


「アレックス、作業は順調か?」

「後は鉱石を砕いて調合だね」

「ハース家からの依頼は無事達成できそうで良かった」


 達成はできそうだが失敗もしたと、ムチレージ草の球根から取れる粉を作りすぎた事を話した。

 ロブから他に使い道がないのかと聞かれるが、代用品として使えるかもしれないが、使ったことがないので分からないと返す。


 ロブと話していると、トロールの作業員から感謝された。

 トロールの肌に合う日焼け止めを探すのは大変なようで、作って貰えるのは助かると言われた。

 店に置く許可が出れば、販売を検討するとトロールに伝えると喜ばれた。


 十分に休憩ができたので、鉱石を砕く事にする。

 室内で粉になる程砕けば周囲が大変な事になる。再び中庭に戻って作業をする。

 魔法鞄から白い鉱石を取り出すと思った量があった。

 白い鉱石を前にどうやって砕くか悩む。


 最初の予定ではスキルを使って砕こうかと思っていたが、思った以上に鉱石の量がある為、錬金術で砕いてしまう事にする。

 錬金術で砕く場合は、大釜の中に鉱石を入れても大釜が割れる事もない。鉱石を大釜の中に次々に入れていく。

 全ての鉱石を入れ終わったところで、大釜に蓋をした。


 錬金術を使って鉱石を粉々にしていく。

 粉々に砕いた鉱石は、大釜の中は粉が舞っている事が予想できる。中を確認するのは少し時間を置いてからにする。


 一時間ほど置いたところで大釜の蓋を開けると、中には真っ白な粉が入っている。錬金術は成功していたようだ。

 粉をスコップで掬って、袋に入れて行く。

 作業が終わる頃には空が暗くなってきていた。今日の作業はここまでのようだ。

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