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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
一章 路地裏の錬金術師

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トロールの日焼け止め−4

 アレックスは周囲を警戒しながら朝食を作っていく。

 大雀が飛ぶのに問題がない程度まで空が明るくなったところで、メグを起こして朝食を手渡した。

 朝食を食べながら、見張りをしている時に動物の気配が随分と少なかった事をメグに伝える。

 メグも同様に動物の数が少なかったと返してきた。


「普段から動物が少ない地域なのか?」

「いえ。普段はもっと多いですね」

「帰ってから衛兵とギルドに伝えた方が良さそうだ」

「そうですね」


 朝食を終えると野宿の後始末をした後に、ピュセーマの調子を確認すると、問題なさそうだ。

 メグにアネモスはどうかと尋ねると、アネモスも問題ないと返ってきた。

 次の目的地に移動する為、メグの乗ったアネモスを先頭に空に飛び上がる。

 二十分程度で目的地に辿り着いたのかアネモスが降下し始めた。

 ピュセーマも続いて降下する。


 地上に降り立つと、オルニス王国ではあまり見ないマルーラの木が実を生している。

 オルニス王国でマルーラが此処まで多く生えているのは珍しいので貴重だ。

 マルーラの油は採取する素材としては一番手に入りやすい物ではあるが、他国から輸入されてくるのでオルニス王国で買うと高くなる物でもある。


 油を搾る為、種子を必要としているのだが、マルーラは実を食べても美味しい。

 なので実ごと回収してしまう。

 メグと協力して地面に落ちているマルーラの実と、木に生っているマルーラの実を採取していく。

 アレックスが採取している横では、ピュセーマとアネモスが飛び回ってマルーラの実を食べている。


 ピュセーマやアネモスと競うように採取していくと、今回作る日焼け止めの分は十分に採取できた。

 ピュセーマとアネモスも沢山食べて満足したのかグーグー鳴いてご機嫌なようだ。


「十分採取できたし、帰ろうか」

「そうですね。マルーラの木の周りにも動物が少ないですから帰った方が良さそうです」


 アレックスも気にしていたのだが、マルーラの木の実は地面に落ちている物も放置された状態で、どうやら周辺一帯の様子が普通ではないようだ。

 あまり長居をしない方が良いだろうと、その場をすぐに離れる事にした。

 王都に向けてアネモスとピュセーマが飛び始る。


 行きとは違う経路で帰っているのだが、少し進んだところで違和感を感じ始めた。周囲を確認していると、アネモスが羽ばたきながら空中で停止した。

 ピュセーマをアネモスの横につけてメグを見ると、真剣な表情で周囲を確認している。

 やはり違和感を感じたのだと空中で話しかける。


「メグも違和感を感じた?」

「はい。少し周辺を回ってみませんか」

「分かった」


 アレックスはアネモスに続いて周囲を回るようにピュセーマにお願いをした。

 違和感を感じた場所の周辺を回っていると、森の中で岩が露出している場所があり、そこで動き回る何かが見えた気がする。

 メグと相談して慎重に近づいていく。


 近づいて見えてきたのはマンティコアとオルトロスだった。

 どちらの魔物も群れのようだが、群れ同士で争っているようだ。

 魔物も動物同様に縄張りを持つが、周囲の動物の少なさを考えれば縄張りが足りないとは考えられず、争っている理由が分からない。

 周囲を観察して行くと、ダンジョン化している事に気づいた。

 アレックスが気づいたと同時にメグも気づいたようだ。


「ここがダンジョン化するなんて初めて見たわ」

「森の中なら稀にあるけど、見通せるような場所ではダンジョンには無いはずなのに」

「少し調べてみましょう」

「分かった」


 飛び回って確認すると、岩が露出している場所は若干窪地になっている事に気づく。

 窪地に徐々に魔力が溜まっていって、ダンジョンになってしまった可能性がある。

 アレックスが予想を説明すると、メグも同意見のようだ。


 周囲の動物がいないのは、マンティコアとオルトロスがダンジョン化した土地を取り合っている余波の可能性が高い。

 メグを襲ったマンティコアも群から逸れた個体だった可能性もある。

 メグと相談して、ダンジョン化した範囲と、魔物の数を確認して行く事にした。

 ダンジョンは危険ではあるが、どちらの魔物も空を飛ばないので安全は確保できる。


 調べた結果、ダンジョン化している範囲は意外と狭く、縄張り争いをしているのも範囲の狭さによる物のようだ。

 マンティコアとオルトロスは合わせて五十頭近い群れで、準備もなしに二人で倒せる数ではない。

 王都に急ぎ帰還して報告する事に決めた。


 二時間近くの移動を終えて王都に辿り着いた。

 王都でダンジョンの場所についての報告の仕方はメグの方が詳しいので、アレックスは基本説明の補足と、同行者として証言をすることを事前に話し合って決めた。


 最初に衛兵の詰所のような場所に行ってダンジョン発生の報告をする。

 次にギルドでも同様の報告をして行った。

 どちらも同様の報告ではあるが、時間がかかる事もあって薄暗くなるまで拘束されてしまった。


「日が完全に落ちる前に報告が終わって良かったです。街中ならアネモスも日が落ちてからも飛べますが、危険なのは変わりませんからね」

「ピュセーマは夜でも飛べるように訓練されているけど、確かに危ないからあまりやりたくは無いな」

「夜間飛行までできるのですか。流石鬼雀ですね」


 すぐにでも日が落ちていきそうな位の時間だ。

 アレックスは先にピュセーマを家へと返す事にした。

 ニコルに報告は普通の状態であれば明日でも問題はないと思うのだが、ダンジョンの事もあるので歩きで報告に向かう事にした。


 路地裏の上空でメグと二手に分かれると、ピュセーマを部屋に戻してアレックスは歩きで移動する。

 王都の道は暗くなると魔道具の街灯が点灯するようだ。

 街灯で照らされた道を歩きながら、暗くなる前に帰れて良かったと胸を撫で下ろす。


 歩いてメグの家に辿り着くと、魔道具の呼び鈴を鳴らす。すぐにメグが出てきて家の中へ招いてくれた。

 前回と同じように書斎に案内され、ニコルへの報告が始まった。


「素材を全て集められたのは良かったけれど、ダンジョンが出来ていたとはね。初めて聞く場所にダンジョンができたようだね」

「衛兵やギルドでも言われましたが、少なくとも百年間はダンジョンが出来ていない場所だそうです」

「私の予想だけど、大鳥での移動を前提にする場所だから、ギルドではなく騎士が魔物を討伐してダンジョンを攻略する事になりそうだね」

「やはり王都でも大鳥を飼っている人は少ないんですね」

「地方よりは飼っている人は多いと思うよ。だけど大鳥を飼っている戦闘系のギルド員は大体忙しいからね」


 大鳥を販売している商人はいるが、簡単には大鳥を売って貰えない。

 大鳥は買うだけでもかなりの金額がかかり、更にそこから餌代が掛かってくる。

 なのでアレックスの故郷のように、自前で大鳥を飼育していない限りは中々手に入れづらい。


 アレックスが村から街に買い出しに行く時に、大鳥に乗って買い出しに行っていた。

 その時に大鳥を売ってくれなどの話は無視するようにと村の住人から教えられていた。


 採取とダンジョンについての報告が終わったので、明日から日焼け止めを実際に作るとニコルに伝えた。

 ニコルから期間は決めていないので完成したら物を持ってきて欲しいと言われた。

 ニコルから家の鍵を返して貰って、帰ろうとすると食事に誘われる。


 誘いを受けたい所だが、ピュセーマの鞍を外せていないので、申し訳ないが今日は帰ると伝える。

 ニコルは気にするなと言った後に、次回また誘うと言ってれた。

 アレックスはニコルとメグに挨拶をして急ぎ家に戻る。

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