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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
一章 路地裏の錬金術師

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トロールの日焼け止め−2

 アレックスは今度こそメグの家から出た。

 店に戻ってロブに事情を説明する事にする。

 店の中ではロブが指示を元に改装作業が進んでおり、指示をしていない瞬間を狙って声をかけた。


 事情を説明すると、ロブがハース家の依頼なら優先して欲しいと言う。

 ハース家……?

 一瞬分からなかったが、ニコルの家名がハースだった気がする。

 それでハース家か。


 ハース家の依頼を優先して欲しい理由をロブに尋ねると、ハース家について簡単にロブが説明してくれた。

 ハース家は騎士と言っても前線で戦うような騎士ではなく、王都で避難民の誘導や、前線を後方からの支援していた騎士であり、その一環で路地裏の問題解決に尽力した一族なのだと教えてくれた。

 更にロブはハース家は前線に出なかったが、多くの吸血鬼は前線に出て戦ったので、吸血鬼が戦えない訳ではないと付け加えた。


 メグはギルド員として戦っているようだし、吸血鬼が戦闘が苦手と言う話よりも得意と言われることが多いとアレックスも記憶している。

 ハース家は戦闘以上に事務的な作業が得意だったのだと予想ができる。

 ロブが改装作業の指示をしながら、アレックスに再び声をかけてきた。


「アレックスは依頼に集中して、ワシらに店の改装は任せておけ」

「はい。お願いします」


 ロブに改装については任せて、野宿をする事を前提に荷物を準備していく。

 準備と言っても、必要な物は大半魔法鞄に入っている。

 採取する為の道具が壊れていないか一通り調べ、一応食料を買い足しておいた。

 ピュセーマに明日からメグと共に採取に向かう事を説明して、全ての準備は整った。


 アレックスは朝早くに起きると、剣や防具を装備した。

 ピュセーマの元に向かい挨拶をしてから鞍を取り付け、鞍に魔法鞄を落ちないように括り付ける。

 動きに支障がないか確認した後に、ピュセーマの背中に乗って三階の部屋から空に飛び上がる。


 メグの家にたどり着くと、ピュセーマに指示を出して庭に降り立つ。

 前回来た時には気づかなかったが多くの蘭が咲いていて綺麗な庭だ。

 普段なら庭の花にも気付きそうな事だが、貴族からの呼び出しという事で緊張していたのかもしれない。


 庭を見ていると、メグとニコルが家から出てきた。

 二人に挨拶をして、ニコルに家の鍵を預ける。ニコルが責任を持って店と鍵の管理をしてくれる事を約束してくれた。


 メグがアネモスを呼ぶと家の名から出てきた。

 アネモスには既に鞍は取り付けられており、すぐに出発することが可能なようだ。

 メグの先導で目的地を目指すので、アネモスに続いて行くことをピュセーマに伝える。

 メグがアネモスに騎乗した。


「お婆様、行ってきます」

「気をつけるんだよ」

「はい」


 アネモスが飛び立つと、アレックスもニコルに挨拶をしてからピュセーマに飛ぶように指示を出す。

 ピュセーマが飛び上がると上空で待っていたアネモスが移動を開始した。


 朝の空気は澄んでおり向かい風のような事もないようで、アネモスとピュセーマは順調に飛行を続けていく。

 一時間も飛ぶと朝日が完全に上り切った。

 目的地はまだ先のようで、更に一時間飛ぶと目的に辿り着いたのかアネモスが降下を始めた。


 ピュセーマもアネモスに続いて降下を初める。

 二羽が降り立った場所は小さめの湖のほとりだ。

 湖を覗き込むと大量の水草が浮いているのが見える。

 湖に生えている水草が気になってアレックスが近づいていくと、水草が目的の素材だという事に気づいた。


 ニコルに見せて貰った本にはムチレージ草の球根と書かれていた。

 ムチレージ草には特に効能らしい効能もないのだが、根を粉に加工した後に水を足すと、粘度のある液体ができるのだと書かれていた気がする。

 今までムチレージ草を錬金術で扱ったことはなかったが、知識として水場に生えることは知っていた。

 しかし完全に水の中に生える水草だとは知らなかった。


「目的のムチレージ草は完全に水中に生えているのか……」

「この水草がそうなんですか?」

「特徴が一致するから水草の球根が目的の素材だよ」


 アレックスの魔法鞄の中には着替えも入っているが、体が濡れるとピュセーマに乗るには濡れた体を乾かす必要がある。

 特に髪は乾かすのが大変なのでなるべく濡れずに採取がしたい。

 濡れずに採取ができないかと湖の周囲を歩いて確認する。

 幸いな事にムチレージ草は湖の端まで生えており、取り方を工夫すれば水に濡れずに取れそうだ。


 更に歩いていくと、場所によっては陸上にもムチレージ草が生えていた。

 試しに引き抜いてみると、葉っぱと茎だけが抜けて地中に根が残ってしまう。

 魔法鞄から採取用の道具を取り出して周囲を掘り返して根を掘り出してみると、地中から拳より二回りは小さい球根が出てきた。

 球根は周囲にある別の植物の根に引っかかって抜けなかったようだ。


 次に手に届く範囲の水中のムチレージ草を引き抜いてみると、球根まで意外と簡単に抜くことが出来た。

 しかも球根の大きさは拳ほどの大きさがあって、地上にあった物より二回り大きい。


 水中のムチレージ草を引き抜いて気づいたが、随分とムチレージ草の茎は短いようだ。

 近くから木の枝を拾ってきて湖に刺してみると、意外とムチレージ草が生えている場所が足のふくらはぎ程度の深さがない事がわかった。


 足が濡れるだけで済むのなら水中に入っても良いかもしれない。

 靴を脱いで、ズボンの裾を捲り上げて水中に入っていく。

 湖の底は泥になっているようで若干沈み込むが水に濡れている場所は膝の下だ。


「アレックス、その深さなら私も手伝いましょうか?」

「いや、メグは球根を受け取ってくれないか? そちらの方が魔物が来た時も安心だし、効率が良さそうだ」

「それもそうね。分かったわ」


 ムチレージ草を抜いてメグに渡すという事を何度も繰り返していく。

 ある程度抜き終わったところで、球根の数を確認すると十分過ぎるほどの量を採取している事に気づいた。

 日焼け止めに必要なムチレージ草の素材はそこまでの量が必要なかったので、球根から製作される素材の量が少量でなければ十分な量だろう。


 湖から上がるとメグがタオルを差し出してきた。お礼を言ってから濡れた手と足を拭く。

 靴を履いて球根を魔法鞄にしまっていく。


「持って帰るのは球根だけなの?」

「葉と茎は錬金術では使わないけど食べれるんじゃなかったかな? 持って帰ってみる?」

「気になるからそうしてみるわ」


 メグに食べ方について聞かれたが分からないので、ムチレージ草で日焼け止めを作っていたトロールなら食べ方を知っているかもしれないとメグに話す。


 次の素材を採取するために移動するのだが、メグがメモを見ながら次の場所が問題だと言う。


「洞窟の中に鉱物があるって書いてあったんだけど、洞窟の目印は書かれているけど正確な位置は書かれていないみたい」

「現地で探す必要があるのか」

「鉱山として使用されている訳ではないから、そうなると思う」


 メグと相談した結果、洞窟の近くまで行ったら一度地上に降りて位置を確認する事になった。

 メグがアネモスに乗って空に飛び立つと、同じようにピュセーマに乗ると空に飛び上がる。

 次の目的地はかなり近かったようで三十分もかからないうちにアネモスは降下し始めた。トロールが自分たちで日焼け止めを作っていたのなら、一つ目の採取地から遠い距離にないのは当然か。


 地上に降りるとメグは目印となる山や石を確認している。

 目印となっている物を教わってアレックスも同じように探し出していく。

 何度か空を飛んで移動すると目的地だと思われる洞窟を発見した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 二作品読みましたが 万人受けしないでしょね この作品は95%が説明文   このまま進むと行き止まりか、焼け野原かな マニアがジャンルを潰す 方々の文章がこの作品の同じですね
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