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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
一章 路地裏の錬金術師

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路地裏の錬金術師−3

 朝起きると着替え始める。

 昨日は結局路地裏の住人たちとの会話と、魔物の解体で一日が終わってしまった。

 住人に解体のお礼にお金を払おうと思ったら、鎧猪の皮や角が欲しいと言われたので、欲しい部位を譲っておいた。

 鎧猪の素材が欲しくなったらまたピュセーマと狩に行けば良いだろう。


 朝の支度が終わったところで、ピュセーマがどうしているか確認しに行く。

 昨日はゆっくりと休めたからか元気に挨拶してくれた。宿が合わなくて心配していたが、十分に休める環境になったようで安心した。


 昨日外から帰ってきてから慌てて餌や水を追加したが、少し減っていたので餌と水を追加しておく。

 今日は長距離の移動をする可能性は低いので、城に近づかなければ好きに出かけていいとピュセーマに伝えた。

 ピュセーマが短く鳴いて返事をしたので理解したようだ。


 簡単な朝食を食べてからスーザンが来るのを待っていると、店の扉が叩かれた。返事をしながら扉を開けるとスーザンともう一人男性が居る。

 男性はスーザンの旦那だという大工だと予想がついた。

 二人を店の中に招き入れて、錬金術師のアレックスだと男性に名乗った。


「ロブ工務店のロブだ。スーザンから今日の事は聞いている。近所だし仲良くしよう。今後よろしくアレックス」

「はい。よろしくお願いします」


 ロブはスーザンと似て朗らかな人のようで、困った事があれば尋ねてくると良いとまで言ってくれた。

 何かあれば尋ねさせて貰うと頭を下げる。

 何か出したいところだが、まだ整理する前で出迎えるのに十分な物がない。二人に謝ると、引っ越したきたばかりなのだから無い方が普通だと笑いながらロブが言った。

 アレックスと話しながらもロブは室内を見回している。


 店の内部を案内をした方が良さそうだと案内を始める。

 店内を回っているとロブが懐かしいと言うので、宿が営業していた時に利用した事があるのだと気づいた。どのような宿だったのかと尋ねると、一階の食堂が流行っていたと教えてくれた。どうやら食事の美味しい店だったようだ。


 スーザンが食事の美味しい理由を知っており、宿で料理に使う水が普通と違うので美味しいのだと教えてくれた。

 ロブは初めて聞いたのかスーザンの話に驚いている。

 普通の水と違うと言われて、アレックスは井戸の事を思い出した。


「水とはもしかして井戸から汲んだ水ですか?」

「そうだよ井戸は生きているのかい?」

「井戸に水はありました。水質を調べてはいないんですが」

「水は残ってたのなら使えるかもしれないね」


 スーザンは嬉しそうにしている。

 スーザンの反応を見て、近いうちに井戸の水質を確認しておく事にした。

 井戸水を分けたら喜ばれるかもしれない。


 店内を見回った後に、スーザンから言う事があると話しかけられた。


「メグちゃんには店の場所を伝えておいたよ」

「ありがとうございます」

「アレックス、疑って悪かったね。メグちゃんからアネモスの恩人だと言われたよ」

「事情は聞きましたし、普通は不審に思いますよ」

「路地裏は来るもの拒まずだから普通は昨日みたいな事はないから安心しておくれ」

「はい。今後はよろしくお願いします」


 田舎から引っ越してきた身からすると、スーザンのような人が近くに住んでいて良かったと感じている。

 アレックスとしても近所付き合いは心配していた所だ。

 錬金術師としては国からの依頼だけ受けていても良いのだが、近所付き合いはそうも言っていられないと、兄弟子のマーティーから注意を受けていた。


 更にスーザンが、今日メグが訪ねてくると言う。

 アネモスがどうなったか知りたかったので丁度良さそうだ。


 メグの話が終わった所で、店の改装についてロブとスーザンに相談していく。

 ロブが紙に間取りを書きつつ必要な材料を計算していってくれ、今後増えるかもしれないが大体の値段について計算してくれた。

 改装費用はかなり高額だが、ワイバーンの皮を売った金額で足りそうなので改装をお願いする事にした。


 早速明日から改装工事をするとロブが言う。

 そんなに早く改装が始まると思わなかったので嬉しい誤算だ。

 二人と話していると、店の扉が叩かれた事に気づいて扉を開けるとメグとアネモスが居た。


「アレックス、今良かったですか?」

「今話がまとまった所だよ」

「良かった。アネモスが元気になったのを見せたくて」

「もう退院できたんだね」

「アレックスの治癒魔法のおかげです」


 アレックスはアネモスに近づいて撫でて良いかと尋ねると、アネモスが近づいて来たので撫でると気持ちよさそうに目を細めている。

 アネモスを撫でた後に、何も無いが良かったらとメグを店の中に誘う。

 アネモスには止まり木かピュセーマが住んでいる部屋が三階にあると伝えると、飛んで部屋の中に入って行った。大雀同士の挨拶でもするのかもしれない。


 メグと一緒に店の中に入ると、ロブとスーザンが気づいてメグに挨拶をしている。

 挨拶を済ました後に、メグは店の中を興味深そうに見ている。

 どうやら店に入ったのは初めてのようだ。


「何もないけど店の中を見てみる?」

「良いんですか? 見てみたいです」


 ロブとスーザンも昔の宿屋だった時を教えてやると、一緒に回る事になった。

 案内するとメグは目を輝かして店内を見ている。

 メグは井戸やお風呂に驚き、最後にピュセーマの部屋に案内すると、ピュセーマに近づいて触って良いか尋ねて来たので許可を出すと撫でている。

 メグが撫で終わると店の見学は終わりだ。


 一階に戻るとメグが感謝を伝えて帰ろうとした所で、スーザンがメグを呼び止めた。

 スーザンがメグを誘って外に出ていった。

 ロブに何かあったのかと尋ねてみると、ロブも分からないようで首を傾げている。



---


 メグはスーザンおばさんと外に出ました。

 建物の外でスーザンおばさんからアレックスの事をどう思っているのか尋ねられて戸惑います。

 スーザンおばさんが続けて人間と亜人の寿命の差について話してきた時点で、自分の気持ちが知られている事と、何を言いたいのか理解しました。


 現実逃避気味に亜人の特徴を思い出します。

 亜人と一括りにしていますが、人間の寿命と同じ亜人と、倍以上違う長命種と呼ばれる亜人がいます。


 稀に亜人と人間が結婚する事があるのですが、亜人と人間とのハーフの子供は産まれにくいこともあって珍しいです。

 問題となるのはハーフの寿命で片方の親が長命種の場合は長命種に近い寿命になってしまうので、人間の親とは死別する事になってしまいます。


 そしてメグは吸血鬼と人間のハーフ。

 吸血鬼は長命種。

 メグの両親は健在ですが人間の母が先に死んでしまうことは父は分かっています。

 父はメグに言ったことはありませんが、気づけば母の隣にいる父は母との時間を大事にしているのが分かります。


 スーザンおばさんが何故そこまで気を遣ってくれるかも理解しています。

 スーザンおばさんも長命種のノームだから。

 スーザンおばさん同様に路地裏には亜人が多く住んでいて、再開発での移住が成功しなかったのは亜人特有の理由が有ったからだと祖父と祖母から聞いています。


「メグちゃん、水を差すようで悪いんだけど、老婆心から口を出してしまったよ」

「ううん。私ちょっと舞い上がってたかも」

「私からアレックスに亜人をどう思うか聞いてみるから、メグちゃんは後ろで聞いててくれないかい?」

「うん……」


 亜人は亜人で固まって生活しているので、田舎であれば珍しい事も多く拒否反応を起こしてしまう事を知っています。

 アレックスから亜人がどう言われるか怖くなってきますが、スーザンおばさんが気を使ってくれたのだから聞く義務があると、メグは自身を奮い立たせます。

 再び建物の中に入ってアレックスの元へと向かいます。

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