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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 後編

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キャサリン王太子

 始祖鳥を見に行ってから半年が経った。

 夏も終わり徐々に寒くなってきた。

 キャサリン殿下が王太子になることが正式に決定した。


 アレックスも参列する事になり式典の用の服を作って準備している。

 式典用の服は真珠織を一部に使用した。

 全てに使うには派手すぎた。


 アレックスが素材を用意したので安く仕上がったが、本来ならかなり高価な物だ。

 その代わりに仕上がりは上質な物になった。


 服はメグの分も用意したし、母、モイラおばさん、トレイシー、ケニーの分も用意している。

 トレイシーとケニーの分はドラゴンになっても破れないようにしてある。

 皆で王太子になる為の式典に参加する。


 今日が式典当日で、アレックスは着替えて服装に乱れがないか確認していると、メグも着替え終わったようだ。


「アレックス、どう?」

「とても似合ってる」


 メグは仕立てたドレスを着て着飾っている。

 皆の準備ができたところで、ピュセーマに乗って王城へと向かう。


 ピュセーマやアネモスも今日のために着飾っている。

 普段つけている鞍以外にも布をつけたりして、飛んでいる姿を下から見ても布が流れていって綺麗に見えるようになっている。


「ピュセーマ、今日はよろしく」

「チュン!」


 儀式の中には大鳥で王都上空を回って、王太子のお披露目をする。

 アレックスもそのお披露目の中に混じって飛ぶ予定だ。

 ピュセーマには事前に今日の予定を説明をしてある。


 ピュセーマは前日に銭湯で綺麗に洗われたのが良かったようでご機嫌だ。

 モイラおばさんの相棒である大雀を合わせると三羽の大雀がいるので、一羽に二人乗って飛び立つ。


 王城の敷地内に入るための門には多くの人が出入りしている。

 門を守る騎士に声をかけて、今日のために用意された紙を差し出すと直ぐに出入りする許可を貰えた。

 門の前は混んでいるので急ぎ中に入ってしまう。


 王城の指定された場所に着くとエリック殿下が待っていた。

 エリック殿下は来賓として参加するトレイシーとケニーの出迎えだ。

 別々に移動する理由もないので、一緒に移動をする。


「エリック殿下は、キャサリン殿下に会ったのですか?」

「ええ、先ほど会ってきました。流石に緊張しているようでしたよ」


 エリック殿下の案内で王城の部屋にたどり着く。

 式典中の立ち位置や順番などをエリック殿下から再確認される。

 後は式典が始まるまでゆっくりしていて良いようだ。


 話しながら待っていると準備が出来たようで案内される。

 途中で母とモイラおばさんは別行動となる。

 式典中にキャサリン殿下の護衛を務める。


 アレックスたちが案内された場所は用意された場所でもかなり前の方だ。

 前には王族の親族くらいしかいない程には前方に位置している。

 トレイシーとケニーは来賓として、アレックスとメグは伯爵家として席を用意された。


「聞いてはいたけど本当に前の方だ」

「トレイシーとケニーのおかげね」


 トレイシーとケニーの近くには知っている人を配置したいと、アレックスとメグは理由を作って席を用意された。

 エリック殿下はアレックスがアレクシア伯爵の親族だったから、理由付けは簡単だったと笑いながら以前に話していた。


 座って待っていると式典が始まる合図である音楽が流れ始めた。

 小声ながら喋っていた声すら聞こえなくなる。

 静粛な状態になると扉が開き、国王陛下が入室して王座へと座る。


 次にキャサリン殿下が室内に入ってくる。

 キャサリン殿下は真珠布を使ったドレスを着ている。


「綺麗」


 メグの小さな呟きが聞こえた。

 確かにキャサリン殿下に似合っている。


 キャサリン殿下の後ろには護衛として母とモイラおばさんがいる。

 普通なら式典に護衛などはなく、近い関係であることを示す為にやっている事らしい。

 魔物を操る魔法を問題視している母とモイラおばさんは、問題解決に近づくならと政治的な利用を許可した。


 室内での式典はそう長い時間ではなく、国王陛下からキャサリン殿下に王太子の紋章が描かれている布や、装飾品が手渡されて終わった。

 重要なのはこの後で、キャサリン殿下が王都の上を飛行する事になる。


 式典の参加者はキャサリン殿下と一緒に王都上空を回る。

 つまり集まった参加者は急ぎ王城から出て大鳥に乗る必要がある。

 キャサリン殿下が部屋から退出すると、アレックスも急いでピュセーマの元に向かう。


「それじゃドラゴンに戻る」

「結界壊れないと良いんだけど」

「何回か試したし大丈夫。きっとね」


 不安なことを言いながらトレイシーがドラゴンに戻った。

 結界が壊れたどうかはこの場では分からない。

 壊れていないことを祈ろう。


 半年の間にドラゴンに戻っても結界が壊れないように魔道具を開発している。

 王都の上を飛んで実験はしていたが、王城内ではあまり試していない。

 以前は問題なかったので何もないと思いたい。


 途中で合流したケニーに母が乗って先に飛び上がった。

 アレックスもピュセーマに乗って飛び上がる。

 周囲を飛んでいる大鳥を見回していると、メグもアネモスに乗って近づいてきた。


「すごい数の大鳥だ」

「急ぎ門を出ましょう」


 門は完全に開けられているので大鳥が飛んで出られるほどの大きさがある。

 それでも一度に二、三羽なら出れても十羽は難しい。

 門を先に出てキャサリン殿下が来るのを待つ事になっている。


 門を先に出る順番はある程度決められており、トレイシーとケニーに関しては一体でしか通れない大きさなので、先に出て欲しいと伝えられている。

 アレックスとメグは一緒に出るようにと指示された。


 門から出て上空で全ての大鳥が出るのを待つ。

 上空で待っているとキャサリン殿下が出てきた。

 キャサリン殿下を中心に王都上空を周回する。


「地上ですごい数の人が見てるな」

「ドラゴンも参加するって随分と話題になったみたい」

「トレイシーとケニーの効果もあるのか」

「それとアレクシア伯爵とモイラ伯爵もいるって」

「母とモイラおばさんも理由のうちなのか」


 トレイシーとケニーは飛んでいても見えるが、母とモイラおばさんは飛んでいたら見えないだろうに。

 王都上空を飛び終わると、キャサリン殿下は再び王城へと戻っていった。


 アレックスたちも、もう一度門を通って王城へと戻る。

 王城へ戻った後は一旦休憩となる。

 少し休みの時間だ。


 最後は夜会が始まる。

 アレックスはメグと一緒に参加する。

 ここで初めてキャサリン殿下と話すことができた。


「キャサリン殿下、おめでとうございます」

「皆のおかげで反対の声がほぼ無くなりました」

「それは良かったです」

「例の魔法を使っていた者たちも逃げ惑っているようですし、今後国内は安定しそうです」


 魔物を操る魔法を使っていた者たちは、ケニーに乗った母に追いかけ回されて、必死に逃げ惑っているらしい。

 集めた情報を元に母が突撃していくので、近いうちに問題が解決しそうらしい。

 キャサリン殿下と会話できる時間は短いので、一番付き合いが長いメグに話す時間を譲る。


 夜会は遅くまで続き、その日は王城に泊まる。

 用意された部屋に入ると椅子に座って飲み物を飲む。

 長い一日が終わった。


「アレックス、ありがとう」

「メグ、急にどうしたの?」

「キャサリンの事心配だったけど、もう大丈夫そう」

「私が何かしたって言うより、皆の力って気がするけど、確かに王太子として国民に認められた気がする」

「うん」


 参列していた貴族は受け入れていたように見えた。

 それに王都を回った時あれだけ国民が見ていたのだ認められているのだろう。


 メグは笑顔で嬉しそうにしている。

 アレックスはメグを抱き寄せる。

 メグがキャサリン殿下の護衛依頼を受けてから一年、キャサリン殿下は王太子となった。

路地裏の錬金術師をお読み頂きありがとうございます。

二章終了で一旦完結とします。

拾いきれなかった部分を1、2話ほど、後日投稿予定です。

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