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愛と正義のバッドエンド  作者: バッテン印
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第2話 悪意色の正義 後編

あれはそう…魔法少女が世界に現れて、皆を救った後の事です。まだ世界には魔物の皆様が数多く残り、魔法少女と戦いを繰り返していました。その時は初代以外の魔法少女達にも魔物を殺す力がありました。ですが、その分魔物の皆様も魔法少女を殺す事に躊躇いはありませんでした。


そんな争いの絶えない頃、私には妻と息子が居ました。毎日鳴り響くサイレンに怯える家族を安心させるために、私は警察として日夜安全確保に努めていました。ですが、家族は私よりも魔法少女を信じ、必ず助けてくれると強く確信して避難はしませんでした。


争いの渦は、私達家族の近くに来ました。近隣住民の避難誘導を済ませましたが、そこに私の家族は居ませんでした。取り残されたと思い、必死に探しましたよ。暴れまわる魔物の皆様、それを倒そうと激しい攻撃を行う魔法少女達。住宅は次々と瓦礫になり、巻き込まれれば死は確実でした。


そりゃあ叫びましたよ。妻と息子の名前を必死になって呼びながら、走り回りましたよ。自宅の近くに来た時、魔法少女に誘導される妻と息子が居ました。


「もう大丈夫よ。」

「さぁ、あそこの警官さんに従って。」


二人の魔法少女は私を指差し、妻と息子は安堵の表情で私に駆け寄りました。勿論、抱き締めようと私も駆け寄りましたよ。ですがその時、魔物の一人が私達に近付いていました。


唸り声とも、叫び声とも言い表せない声をあげ、建物よりも大きなその魔物は建物を破壊しました。瓦礫は私達家族を分断するように落下し、道路は塞がれてしまいました。大丈夫かと声をかけたところ、向こうから妻が返事をしました。


「私達に任せてください!必ず助けてみせます!」

「警官さんは、別の逃げ遅れた方を探してあげてください!」


魔物と戦いながら、私に笑みを向ける二人の魔法少女。その時は、信じていましたよ。この二人なら助けてくれる。無事に妻と息子を、私の元に送ってくれると。



結論から言います。妻と息子は死にました。二人の魔法少女に話を聞いたら、戦いに巻き込まれて亡くなったと聞きました。しかし、亡くなる前に妻は私に電話をかけ、留守電に音声を遺していました。


「邪魔だから動くなと言われた…助けて。」


何が愛と正義の魔法少女だと思いましたよ。そんな綺麗事、何の意味も無い。その日から、私は魔法少女を嫌いました。



「以上が、私の過去です。魔法少女達がほざく綺麗事に、うんざりしてるんですよ。」


魔法少女への怒りと不信感を聞いて、魔物達は何も言えなかった。妻と息子の自業自得では?お前は何もしなかったくせに?聞き返したい事は沢山あった。


「あー…なんや…ワイには良ぅわからんけどな。人間ってのは、助けてくれへんかったら恨むんか?」

「えぇ。助けると誓ったくせに、突き放したのですから。」

「むぅ…人間って物騒やな。」


真面目な顔を続けていた警官は、優しい笑みになり話を変える。


「そんな事より、魔法少女二人をこんなに簡単に狩れましたね。更に警戒は強まり、戦いは増えると思いますよ。」

「ボクはもう覚悟出来てるヌ。倒される前に倒す。やることは変わらないヌ。」


あの日から、真っ赤に染まって色が落ちなくなった両腕を見つめ、自分に言い聞かせるように話すヌイヌ。魔物でなければ、何処かの家の娘に買われて、可愛がって貰えたであろう容姿のぬいぐるみ。愛くるしい彼が、血生臭い事に手を染めている。争いの醜さを、警官は改めて実感した。


「…いつ、終わるんですかねぇ。」

「ん?なんか言ぅたか?」

「あ、いえいえ。なんでもありませんよ。」


警官の正義は歪んでいる。悪意色に、染まりきっている。魔物のサポートをすれば、争いは激化する。それを知っている彼は、魔物達を見送った後にポツリと呟く。それは彼の本心であり、本望だった。


「…さっさと、どちらか滅べば良いんだ。そうすれば…この争いは終わるんだ。」



「灼熱の魔法少女…暴風の魔法少女…どちらも、かなり強い魔法少女でした。」

「…ボク…もう…耐えられないよ。」


妖精は頭を抱える。魔物はもう止まらない。魔法少女を殺す事に躊躇いの無い、あの頃に戻っている。


「6体…たったの6体なのに…。」


教会のステンドグラスを見つめ、魔法少女は妖精の頭を撫でる。優しい笑みを浮かべているが、その胸中は穏やかではなかった。


「…魔法少女達の持つ魔具には、セーフティがあります。本来の力を使えば、街に被害を及ぼす恐れがある。だから、私がその力を抑えたんです。」

「じゃあ…。」

「えぇ、そうです。」


魔法少女の持つステッキが光る。


「多少の被害はやむを得ません。魔物達に破壊されるか、多少の被害で済むか…それだけの差です。」

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