勝負、開始!
清水視点と平等院視点がコロコロ変わります
平等院さんに俺は連れられ、野球部の練習場所に来てしまった。
「監督〜キャプテン〜新入部員連れて来ましたよ〜しかも凄い奴」
先程までの口調ではなく、軽い感じだ。すると、ユニフォームを着た2人がやって来た。…デカい。
「俺は、キャプテンの源二条だ」
「俺は監督の五十嵐九十九。君、入ってくれるのか?」
監督さんに聞かれ、俺が少し黙っていると、平等院さんが口を開いた。
「コイツ、ちょっと野球にトラウマがあって…で勝負に勝ったら入るらしいです」
入るらしいってアンタが勝手に…決めたんだろ…
俺は心で呟く。
「オイ、朱雀。何の勝負だ?」
源さんが聞く。確かに説明不足だ。
「一打席勝負ッス。オイ、伊達、打席入れ!フリバだ!」
源さんに手短に説明した後、平等院さんはベンチに座っていた坊主を呼んだ。伊達と言うらしい。この人の第一印象は、厳つい…目が怖い。
「ア?良いけど、ソイツ、一年だろ!?折角の新入部員を俺が潰したりしても知らないぜ!?」
相当な自信家だな…呆れた。多分、口ほどでも無いだろう。脳ある鷹は爪を隠すだからな。
「潰せるなら潰してみろ!」
平等院さんが言った。俺の台詞なのに…だが、事実だ。
「面白そうだな!俺が審判をしよう!オイ、朱雀。ソイツとアップしとけ。10分後、始めるぞ!」
監督さんはそう言ってマスクとプロテクターを装備した。
「お前、球種は?」
平等院さんが俺に尋ねて来た。どうやら名前ぐらいしか知らないようだ。
「フォーク、スライダー、シンカーです」
「へえ、流石準優勝投手…オイ、この勝負、三振取れなければ、お前、入らなくて良いぜ」
この人も自信家だな…いや、コレは事実か?
「ハハハ!なんか知らねーけど、んな考え込むなよ!じゃ、アップするか!」
そう言って平等院さんは俺にグローブを手渡した。そしてグローブをはめ、平等院さんの投げて来たボールを受け取った。
――久しぶりの感触はに何故か嬉しく感じた――
「良し!始めるぞ!」
監督の声が響いた。そして伊達が右打席に入った。そして俺に話し掛けて来た。
「朱雀。アイツ、いい投手なのか?」
「ハハハ、見れば分かるさ」
そう言って俺は清水にサインを出す
さぁ、始めるぜ――初球、インハイに全力の真っ直ぐ――
平等院さんが先程打ち合わせしたサインを出して来た。
――インハイに全力の真っ直ぐ――
捕手など信用出来ないと思う。
けど…もしかしたら、この人なら…
いいや、そんな事考えるな…捕手なんて…
俺はとりあえずサインに頷いた。そして振りかっぶった。
「さて、ガキに高校野球の厳しさを教えてやらねーとな!」
伊達、厳しさを教えてもらうのは、お前かもよ?
俺はそんな事を思いながら清水がサインに頷いたのを確認した。
なんだ…案外素直じゃん。
そして、清水は振りかぶった。
この勝負、この初球が大事だ。この初球が勝敗を分けると言っても過言じゃない…来い!腕を振れ!何も考えるな…
清水の腕がしなる。そして、右腕から伊達の胸元にスピードのあるストレートが投げ込まれた…
ドパァン
伊達は俺のミットにボールが入ってるのが信じれないのか、青い顔で瞬きをしながらミットを見た。周りの奴らも息を呑んだ。監督とキャプテンは、ホゥと呟いただけだった。
「ストライーク!」
五十嵐の声が響く。
良い球ほるじゃん…さぁ、この勝負、もらった!
「ナイスボール!」
朱雀は清水にボールを返球した。
この勝負、こっからがオモシロいぜ!!俺は思わずクククと笑った。
〜ストリームの野球講座〜
※ストレート
投手の投球の基本になるボール。その投球の最も速い球。伸びがあり、速いと手前でホップするようにも見える。
※スライダー
捕手から見て右投手は基本的に右に滑るように鋭く曲がる球。しかし、最近は真横に滑るスライダーを投げる投球は少なく、そのようなスライダーは『真っスラ』、落ちるスライダーは『縦スラ』と言われる。
※フォーク
真下にストンと落ちるボール。空振りを取れるボール。人差し指と中指の間に挟み、無回転になるように投げる。
※シンカー
右投手の場合、捕手から見て左下に曲がりながら落ちるボール。左投手の場合はシンカーではなく、『スクリュー』と呼ばれる。
※インハイ
内角高め、打者の体に近めの高めの球。また、内角低めをインローと言う。