天才捕手
平等院朱雀…俺は何処かで聞いた事があると思ったが不審に思い尋ねた。
「…何故俺の名前を?」
「お前ぐらいの投手なら新聞にも載ってるぜ?それに去年の全国決勝戦、見たからなぁ」
全国決勝戦…まただ。またあの記憶が蘇る。
そして、平等院さんは此方の顔色を窺いながら言った。
「お前、あんなホームラン一本で野球捨てるのか?」
俺を野球部に入れようとしているのが見え見だ。
「はい。全てはあのキャッチャーのせいですから…あんな思い、もうしたくないし」
「なら、俺なら大丈夫だな」
平等院さんが自信満々に言った。
何故ですか、と聞き返す。
「だって俺、全国一のキャッチャーって言われたし、府外からも推薦バンバン来し!あれ?もしかして、お前俺の事知らない?」
平等院朱雀…思い出した…十年に一人の逸材と言われたキャッチャー。
走攻守、三拍子が揃っていて、そのインサイドワークはプロも唸らせると言う。
事実、並の投手がエースの普通の公立校から全国優勝に導いた捕手だと雑誌で見た。
しかし、高校に進学してからは即レギュラーと言われながら、名前を聞かなかった。だから忘れていた。
「なんでアナタがこんな所に?」
そんな凄い奴が此処にいることに疑問を持った。すると意外な答えが返って来た。
「漫画みたいに無名高校から甲子園行ったら格好良いだろう?」
平等院さんは笑いながら言う。
しかし、俺は高校生離れした野球センスの持ち主の幼稚な考えに呆れてしまった。
「あっ、お前無理って思ってるだろう?それが行けそうなんだよ」
「じゃあ頑張って下さいね」
と俺は言って立ち去ろうとしたが無理だった。腕を掴まれたからだ。
「おい、投げろ」
先程までのふざけたような態度は無く、真剣な目つきで言って来し。
「だからいや…」
「じゃあ、勝負だ。ウチのチームの奴に投げろ。俺とお前のバッテリーでウチの打者を打ち取ったら野球部に入れ」
無視して掴まれた手を離そうとしたが動かない。凄い握力だ。強制的にやらせるつもりだ。
「分かりましたよ…」
俺は仕方無く了承した。
「そう言ってくれると思ったぜ。あっ、あと適当に投げたら無条件で入部な」
俺は適当に投げて早く帰りたかったのに…心読まれた…
そう言って平等院さんは野球部の方へ歩き出した。俺は渋々着いて行った。
次回初めての野球シーンです!
評価、感想待ってます!
〜ストリームの野球講座〜
※インサイドワーク
キャッチャーがピッチャーにサインを出し、配球を組み立てる事
※バッテリー
ピッチャーとキャッチャーのこと。