朝
お久しぶりです!!お待たせしました!!
学校についた。自転車が幾らか既に留めてある。もう何人か来ているようだ。
「ありがとね」
涼華はそう言うと先に走って行った。
乗せてもらってそれは無かろう。
そう思いながら自転車に鍵をかける。
「あっ~!!」
「んだよ」
見なくてもわかる。こんなに五月蝿いのは倉吉だ。
「お前!! 俺の涼華ちゃんと二ケツだと!?」
「いつからアイツ、お前の所有物化したんだ」
「阿呆!! 生まれた時から赤い糸で結ばれてるんや!!」
清水は無視して部室に向かった。
初めての朝練だ。何をするのか検討もつかない。まあそれなりだろう。あの平等院がいるから。「まてい!! お前!! 涼華ちゃんが後ろって事はだな…む…フゲ!!」
「おは、清水」
「泉か」
倉吉の頭をシバき、泉が自転車で来た。軽く挨拶する。
「朝から下ネタ言おうとするな馬鹿」
そうだったんだ、と俺は思った。
「…うるせーな!! 先行くぜ!!」
倉吉は走って行った。
「俺等もいこうか」
泉はそう言うと歩き出した。清水も続いた。
「みんな、おはよう」
九十九監督がそう言うと皆おはよう御座いますと返事をした。
清水は大きな声では言わなかった。言えなかったと言う方が正しい。「今日から野球ができる人数が揃い、念願の甲子園を目指し…頑張れる!! 目標がちゃんと出来たんだ。気合い入れてくぞ!!」
ハイッ!! と野球部らしい返事。清水には少し面倒に感じた。
今まで自分の場所は自分で掴んできた。監督は勝ちたい。勝つためには俺を使わねば勝てない。勝てても中学の場合、全国には行けんかったな。
清水は息を吐いた。白い吐息が舞う。
今、自信はないが、これは過去の事実だ。別に自意識過剰ではない。今回も三年間、自分で自分の居場所を掴む。いや、九十九監督に俺を使わさせる。自意識過剰ではない。所詮は寄せ集め、偶々平等院や泉が来ただけで後は大した奴らじゃない筈だからな。 清水は心の中で呟いた。
「じゃあまずはランニング行け」
ランニング、柔軟、ダッシュ、キャッチボール――此処までは全体メニューだ。
「集合!!」
九十九監督が集合をかける。朝練は後15分位できる。
「今日の昼からポジションをキチンと分けてやってくからな。清水、お前はブルペンに入れ」
「はい」
清水はキチンと一応返事をした。
投げられる。
清水は少し嬉しく思った。
「じゃあ解散!」
有難う御座いました。
部員が返事をした。
――部室
「授業ダリイな~」
倉吉が声を挙げる。ここばかりは同感だ。
「お前等、赤点はとんなよ」
「マジそれ。監督は学校生活も五月蠅いから」
源が優しく言う。平等院が続く。
「まあ…せめて問題は起こすなよ」
清水は教室に入った。まだ、2日目だから授業は少ない。こういう期間はどの生徒達にとっては至福である。勿論、野球部のメンツ(涼華も含め)も例外ではない。
清水は自分の席の周りを見渡した。見事に野球部男子は窓側で同じ班、涼華は真ん中だ。
「同じなんだな…」
「知らなかった?」
泉が前の席から振り向き訊ねてきた。
「昨日寝てたし」
「ああ…そうか」
「なんや? 嬉しいんか!?」
倉吉が後ろから割り込む。
「何が?」
「俺と一緒で」
「死ね」
清水はぶっきらぼうに呟いた。
「お前…会って2日目の奴、しかもお前の後ろを守る奴にんな事言うか、普通」
「まあ…確かにそうかも」
泉も躊躇いつつ言う。
――ウザイ――
清水は心の中で呟く。歯を食いしばる。
感情を出してはならない。投手は感情を出してはならない。淡々と冷静に1試合が終わるまでマウンドから投げ続けるのだ。
話題を変えよう。
清水は思った。
「…試合とかはまだ決まってない…か?」
「そらそーだわ。まだ全員の能力も未知数だし…第一、新生のチームと試合してくれるトコなんてそう無いわ」
泉が冷静に言う。そうだなと清水も納得した。
チャイムが鳴る。教室の空気が変わった。
――寝よう。
清水は顔を伏せた。
感想やらお願いします!!
試合はもう少し待って下さい(^_^)v