試作/夜
-ノイズを装う男が行く。
-未だ見えない影を追い、曲がる通りの先へ奥へ。
『月明かりに照らされる街並みは』
そのような文を提示され、その学生は困り果ててしまった。
彼の知る世界で街並みを照らすのは微かな月明かりではなく、明白な街灯に違いなかった。
人々はその中で暮らし、もはや自然の夜光などというものは知り得ぬ昔の、失われた伝承ですらあった。
どうしたものか、そう放って横たわる。
『彼の根幹にあったものは自己愛のみです、間違いない。』
そう振り返るのは背を曲げ、ひげを立派に蓄えた老人であった。
遠くを見るように目を逸らすのはどのような心からであろうか。私を排した視界の中で再生する。
「やめましょう。彼と・・・、彼女との話は私には許されないように思える。」
老人の口調は、柔らかくも微かに震えていた。
---ココマデ---