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追放少女の剣は三度煌めく~不老不死幼女は最強の火炎魔術師で二人はなかよし~  作者: さざなみかなで
4章ー彼女は誇らしげに、それこそが彼女との絆だったと言った。
28/33

4-4.そんな彼女にも既に特別な物はあったらしい、と彼女は語った

10/13 全体に大幅改稿を行いました。


 最初は甘く考えていた。


 育ちの良さそうな、実力も伸びしろもある子だと思い、つばをつけておいた。

 それがたまたま酷い目にあっている所に出くわしたので、保護して餌付けを試みた。


 彼女の人となりは、それとなく調べていた。《武器魔力付与ウェポンプロテクト》を未修得というのは減点対象だったが、それでも対人制圧戦闘に限ればAランク相当を見込める実力者だ。勧誘対象から外れる事は無かった。


 それが、黒天狼から押収した資料により厄ネタで満載の『アドモスティア家』の娘だったというのが判明した事で、単なる保護対象から路線を変更させる目が出来た。


 一月にも満たない冒険者暮らしや『黒天狼』とのトラブルも、お年頃のお嬢様の家出や火遊びとしては限界だったのだろう。

 シンシアは最初から幼子の外見を利用する自分を警戒している様子を見せなかったし、むしろ一晩も掛からず自分を依存対象に選んだ事が見て取れた。


 随分と簡単に事が運んだと考えていた。


 楽な仕事に付き合わせ、適当に何かの口実で功績を取らせれば、簡単に『アドモスティア家』をも《ギルド管理協会フリューゲル》に取り込む手札になる……と。


 しかし実際はどうだ。

 シンシアはフレアと同一の魔力波長を持っていた。そこは偶然だろう。

 ニアミスリルの鎧ゴーレムの破壊とその術者の生け捕り。こちらも想定外の戦果。

 カルネが色めきだってしまうのも解らなくはない。


 おかげで子守りをしながら戦えと無理難題を吹っ掛けられる立場になってしまった。

 幸いにしてシンシアはフレアの魔力をそのまま使える稀有な体質だったし、こと対人戦闘においてはこれまで組んできたお荷物達とは比較にならない程優秀だし、素直で従順で扱いやすいと思っていた。


 人当たりも良く、早々にドギーから家宝のように扱われていたアダマンタイトのナイフを譲り受けてしまった。あれは素材費のみで500万ルビを下らない品だ。

 どこぞの墓守相手の奉仕活動も上手くやって、何故か仕事先で化粧を覚えて、浮かれて帰ってくる始末。


 未来予知か何かかと疑いたくなるほど、勘も優れている。

 その一点のみを切り取っても、彼女の有効活用のしようはいくらでもある。本来はフレアと同時運用するより、時間をかけてさらに特別な育て方をし、暗殺者アサシンに仕立て上げるのが《ギルド管理協会フリューゲル》の手駒としては一番大成する道だろう。


 しかし、シンシアと上司であるカルネの意思を尊重した結果がこれだ。


 正式な加入手続きが終わるか否かというタイミングでのシンシアからの拒絶。


 元々、フレアを徹底して犯罪組織に対する処刑人として利用した前任者が隠居して以降、《ギルド管理協会フリューゲル》においても劇薬であるフレアの引き取り手はしばらく見付からず、様々な機関を転々としていた。

 いいかげんたらい回しにされる場所が無くなるかという頃に、自発的に名乗り挙げた変わり者がカルネだった。


 フレアは言った。『私は殺すしか能の無い化け物だから、せいぜい上手く使って下さい』


 カルネは答えた。『君は人間だ。そうあるべき存在だ』


 結局、その後のフレアの仕事っぷりを見ればカルネの判断は間違っていたと言って良い。

 カルネのその後の凋落ぷりは凄まじいとすら言える。本国の出世コースから転落し、その上本国からも左遷され、地方都市の支部勤め。

 その上、フレアはカルネが組み込もうとしたフレアへの最後のテコ入れ手段だったシンシアにまで愛想をつかされた。

 カルネにとって、疫病神でしかない自分をわらう事しか出来ない。


 フレアもシンシアを失う事で、個人的なアドモスティア家に対する復讐計画が立ち消えだ。


 ベッドに横になったまま何時間もじっとしていると、コンコンとノックが聞こえた。

 シンシアは多分鍵を置いていった。閉まっていないはず。


「……なんですかー?」


「私だ。開けるぞ」


「どうぞ」


 不機嫌な顔で入ってくるカルネを、フレアはベッドに寝そべったまま迎える。


「……君とシンシア君は同部屋だと聞いていたが」


「シンシアはどっか行きました。多分帰ってきません」


「……フレア。君は余人が絡むと問題しか起こせないのか?」


「その経歴を知っていながら私をシンシアと組まそうとしたのはカルネかとー」


「……まあ、今は好都合だ。報告書を読ませてもらった。今回は囮魔法か……うまく誤魔化せたから良かったものの、『不死鳥』を気易く使ってくれたものだ」


「ソレ使うと即座に押しかけてくるの、やめませんか?今回のは普通に暗殺ですー。避けようと思って避けられるものじゃないですー。むしろその予兆を看破して片方を牽制したシンシアが異常なんです、なんなんですかアレ?暗殺者として完成された才能ですよ?他所に回して恩を売りましょうよ」


「どんな『伝説級道具レジェンダリーアイテム』でも起こし得ない奇跡を衆人監視化で考えも無しに使うとは何を考えているんだ、と言っているんだ。私は」


「なにをいまさらー。実検と称して《ギルド管理協会フリューゲル》内で狂人どもに私が何度殺されたかくらい、知っているでしょう?私は数えるの途中からやめましたけど。『不死鳥』の特製も、性質もカルネの知っての通り。自分で制御出来るものじゃないんです。まぁ、お蔭様で、意識を取り戻すまでは随分と速くなりましたけれど」


 何を言っても無駄……という様相のフレアに対して、カルネは椅子に腰かけて腕と足を組み、その足先をフレアに向け、彼女を苛立たせながら言った。


「しかし、フレア。私は君を買いかぶっていたようだ。もう少しは頭の良い猟犬だと思っていたのだがね」


「何言いましたか?カルネ死にたいですか?たかが指示の中継役が私の飼い主気取りですか?」


「私を殺すか。そうすると君は愚かしくも、今気付いていない事態に永劫気付かず、また一人犠牲者を増やすわけか」


「さっさといえ」


「……シンシア君は君を狙撃した実行犯は捕まえたが、その補助役……言わば本命から目を欺く為の囮を逃した」


「それは指名手配がついたのでしょう?」


「囮は、本命にシンシア君が襲い掛かる所を目撃しているのでは?」


「――ッ!!」


 弾かれるように立ち上がる。


「《広域炎熱探知ホットサーチライト》!」


 フレアの周囲、半径十キロをゆうに越える、全力の探索。

 シンシアの《熱反応トーチ》はフレアは記憶しているから、近くに居ればそれが見付かるはず、だが――


「いない……」


「さて、困ったな。フレアの探索範囲外に居るのか、それとも既に、シンシア君は間に合わなかったか……」


「シンシアがそこいらの暗殺者に簡単にやられるわけがありません!どうせ馬車で来たんでしょう、借ります!」


 フレアはばたばたと駆けていく。


 カルネは『やれやれ』と肩をすくめてフレアが駆けていくのを見送ると、全身から力が抜けて椅子の背にもたれかかった。


「まったく……とんだ貧乏くじもあったものだ」


 フレアの操縦をしようとするたび、カルネは寿命を数日ずつ奪われたと感じる程の疲労に苛まれる。

 しかし、今回は良い傾向だ。

 過去のフレアは、場合によっては仲間すら『どうでもいい』と斬り捨てていた。

 それを探しに行こうとする程度には、シンシアを気に入っているのだろう。


(このまま、フレアがシンシア君に執着してくれれば良いのだが……)


 そればかりは天のみぞ知る。

 カルネは疲労感で満載の溜息を吐いた。


「まずは、帰りの足を調達するか……」



◆◆◆



「シンシア=アドモスティアの受けていた依頼を教えて下さい。危険度指定無しの墓地関係の依頼です。探したいのでどの墓地に通っていたのか、はやく教えて下さい」


 《広域炎熱探知ホットサーチライト》はそれなりの魔力を食う。

 フレアは御者にギルドオフィスまで移動させる間、何度か使ったがそれでも反応は得られなかった。

 魔法的措置で見付からないなら、シンシアの行きそうな場所を推理し、しらみつぶしにするしかない。

 もとより仕事先で化粧を教わって帰るような娘だ。案外、今も仕事先でよろしくやっているかもしれない。


 ギルド員は『何か大変な理由』で大幅な人事変動が起こったせいか、随分と手際が悪い。


「す、すみません、せめて同じパーティーの方でもないと、お客様の個人的な情報をお伝えするわけには……」


「ッ!……《ギルド管理協会フリューゲル》の者です!事件性が高いんです!さっさとシンシアの受けた仕事を教えなさい!」


 余人相手には滅多に声を荒げないフレアが、大きな声で新人受け付け員を怒鳴りつける。


 フレアは焦っていた。シンシアは賢い子だから、自分が《ギルド管理協会フリューゲル》の一員になる事をわざわざ触れ回るような、愚かな事はしていないだろう。


 だが、《ギルド管理協会フリューゲル》は犯罪者の恨みを買う危険な仕事だ。

 懲役上がりで職につけない社会不適合者ごろつき程度なら何ら不安は無いが、今回は白昼堂々、狙撃で人を殺すような危険な相手。


 あの子は能力的にも精神的にも、特化した部分は歴戦の戦士や高僧を感じさせる所があるが、弱い所は人一倍脆い、とても不安定で危うい子だ。

 付け込む隙なんて、いくらでもある。


「見付かりました。依頼者はリュエン=ドルマン、場所はエルピス西部地区、第六番公共墓地――」


「貸して下さい!」


 フレアはエルピス西部地区には左遷されてきたばかりの身、建物や区画名を言われても解らない。


「多分……現在地は地図からずっと離れたこの辺り?そうしたらこの大通り、地図のずっと先のこの辺りに工匠組合……それなら地図のこの辺りの商店街っていうのは……この曲がり角、果物屋と花屋と小物屋が隣接していていますか?」


「は、はい、店の並びは解りませんが……曲がり角のある商店街です」


 フレアは地図を読むというより、おぼろげな記憶と景色を擦り合わせるようにして位置を特定していく。


「ありがとうございます、およその位置は解りました……後は勘でなんとか見付けます!」


 フレアは筆記台から飛び降りると、外に向かって駆けだした。

 外に待たせておいた馬車の御者に『第六番公共墓地』と伝えて、初めて自分が正確な場所を知らなくても問題無かった事に気付く。


 焦りから、自分の動きが最適解からどんどん遠ざかっていく事に気付いた。

 この分だと、シンシアの仕事先を当たるという考えも見当外れかもしれない。


(……ああ、もう……恨みますからね、シンシア……)


 フレイは、座って馬車に揺られる事しか出来ない自分を歯がみした。



◆◆◆



「リュエン、いるかしら?」


 暗殺者の女は、第六番公共墓地の墓守の館へと上がり込んだ。

 鍵は勝手に開けた。民家の鍵など秒で開けられる。


「あらあらー、どうされましたか?」


 唐突な不法侵入者を、リュエンは動じていない……どころか、不自然なほどの陽気さで迎え入れた。


「うちの相棒がやられたわ。それも、灼熱皇女とは別のギルド管理協会フリューゲル

に……って、こいつは――」


 女は、眠るシンシアを前に剣を抜き放つ。


「あら? ちょっと、どうしたの?」


「その子供は?貴女の何なわけ?」


 うーん、とリュエンは考えて、答える。


「うちの子にする予定の子よ。とびっきりの、良い考えがあるの」


「……ふぅん」


 女は、今すぐ無防備なシンシアを叩き切りたい感情を抑える。

 相棒をギルド管理協会フリューゲルに捕らえられてしまい、リュエンは頼りないが手札の一つだ。情緒不安定な彼女を刺激する行動は取り難い。


「その子、例のギルド管理協会フリューゲルの灼熱皇女の関係者よ。フレアっていう不老不死の魔女の、ね」


「あらあら、まぁ! シンシアちゃんの話していたお友達のフレアちゃんと同じ名前!」


「……多分、本人よ。その子と一緒にいる所を見たし、灼熱皇女……フレアが一度発火して、火柱が上がったと思ったら無傷で蘇った姿はこの目で確認したわ」


「まぁ……まぁ! 欲しい! 私、フレアちゃんが欲しいわ!」


「なら私の協力をしなさい。先ずはその子を捕まえるなら拘束は最低でも鉄線にしておいてちょうだい。多分、普通のロープ程度じゃ引き千切られるわ」


「そうねぇ、シンシアちゃん、とっても力持ちですものね」


「後は……その子を捕えておけば灼熱皇女はすぐにでもここに来そうな気がするの。これは暗殺者としての勘。迎撃しやすいように場所を移した方が良いわ」


「迎撃ですか……では、私はあそこに居るのが一番かもしれないですね、あなた」


 リュエンは女とは違う方向に向けて語り掛ける。


(ヤキが回ったものね……こんなイカれ女を使うしかないなんて……)


 暗殺者の女は、ふぅと息を吐くと、抜いたままだった剣をしまった。


 ――来るなら来い、灼熱皇女。死なないと解ったからには、他にも方法は幾つかある――

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[一言] おぉぅ、大丈夫っすか作者さん。 なんかゴチャッてきますが、まあ、なんとか頑張って下さい~。
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