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追放少女の剣は三度煌めく~不老不死幼女は最強の火炎魔術師で二人はなかよし~  作者: さざなみかなで
4章ー彼女は誇らしげに、それこそが彼女との絆だったと言った。
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4-2.彼女は人知れず努力をする事もあるが、毎回それを報告してくるので努力に聞こえなかったという

10/13 全体に大幅改稿を行いました。


 『こんな事もあろうかと』常に予備の認識票を急造出来る体制を造っていたカルネに一晩で用意させた認識票と冒険者カードを受け取りながら、ついでに渡された指示書を見てフレアは絶句した。


「……カルネ。私言いましたね?言いましたよね?確保命令は、せめて観測班が仕事をしてからにしろって言いましたよね?」


「いや面目ない。しかし、フレア。君ならば事態は急を要する……という事も解ってくれるのでは?」


「ええはい、理解できますよ。ギルド管理協会の兵力に問題がありすぎるという致命的な問題が誰よりも物凄くよく理解できてますよ?」


 フレアはカルネを半眼で睨みつける。

 命懸けの危険な任務を押し付けられるのは、まだいい。他にこなせる者が居ないのだから。

 代わりにフレアは、一度働くだけで莫大な金銭を得る。


 しかし。

 しかし、フレアは誰にでも出来る安値の仕事を押し付けられるのは我慢がならなかった。

 何故なら、面倒くさい。やりたくない。それに尽きる。


「まだ公に出来る状況でもなくてね……動かせる人数にも限りがあるのだよ」


「はー……それで手をこまねいているうちに、手遅れになりますかー……これだから椅子を温めるのが仕事な管理職というものは困ります」


「……シンシア君は殺気や悪意といったものに敏感なのだろう? なんとか使えないものだろうか?」


「現場を知らない悪い管理職の言葉そのものですねー。シンシア、まだギルド管理協会フリューゲルのメンバーじゃないじゃないですか。良いんですか?」


「中間管理職の苦労も察してくれると助かるのだがね……シンシア君に関してはもはや手続きも時間の問題だ。日付的な問題は私が後で始末書を書けばどうにでもなる事だ」


「……個人的には、まだ大規模な事件にシンシアを巻き込むべきではないと思うんですけどねー……」


「いやに彼女を運用する事に反対するな。何か理由があるのかね?」


 カルネの問いかけに、フレアは冷静に考える。

 普段の熟考ではなく、単に数秒、間を置くというだけの空白。


「……あの子まだ、単に流されて私についてきてるだけのヒヨコです。ちょっと怖い目を見ればお芋さんを引っ張り出すでしょうし、新しい『親鳥』を見付けたらコロっとそっちに鞍替えしそうな危うさがあります」


「……ふむ。というと?」


「ぶっちゃけまだ地獄の番犬ケルベロスには接触させたくありません。取り込まれてもしりませんよ?」


「……君は自身が、対抗組織よりシンシア君の信を得ていないと言うのかね?」


「ええ、はい、まぁ。 彼らの人心掌握術を考慮に入れれば私のような人の姿をしただけの化け物の言など――」


「フレア」


 饒舌に語るフレアの言葉を、カルネが留める。


「やめたまえ。君は人だ。人としてあるべきだ。彼女は今までそう在れなかった君を変えるきっかけになり得る少女だ」


「……なればこそ、シンシアはもっと大事に運用すべきだと思うんですけどねー……まぁ、私は言いましたからね。たかだか二週間足らずで伝説級道具レジェンダリーアイテム絡みの事件との遭遇が三回です。地獄の番犬ケルベロスの暗躍を疑わない方がどうかしています。大事な事なので繰り返しますが、私は言いましたからね。中間管理職様?」


 嫌味たっぷりにカルネを挑発しながら、フレアは執務室を出た。


 フレアはとても機嫌が悪かった。

 何もかもが思い通りに行かない。

 ゴーレムを操る伝説級道具レジェンダリーアイテムの一件で、フレアはシンシアというお荷物を背負わされてしまった。


 まぁ、そこは良い。今ではオモチャとして大いに気に入っている。どう成長するのか期待出来る可愛い雛鳥だ。大事に育てたい。


 そこに、《魔力放出リリース》を封じてしまう伝説級道具レジェンダリーアイテムなんてものが現れてしまった。そんなもの、反則だ。


 これではシンシアを守って戦うどころの騒ぎではない。

 むしろシンシアを前に出して、自分を守らせないといけない。育てている最中の大事な雛鳥をわざわざ『いつ壊れるかのチキンレース』に出馬させたい馬鹿が何処にいる?


 その上で、休む間もなく街一つ巻き込んだ異界化の予兆騒ぎ。

 町中で伝説級道具レジェンダリーアイテムを使って、何か良からぬ儀式でもしてる馬鹿が居るのだろう。

 そんな規模の大きそうな馬鹿相手の戦いに、よりによって、これから大事に育てるつもりの雛鳥を引き連れていけと無理難題を押し付けられた。


 この憤りはカルネを10回殴り殺しても足りない。


 しかしギルド管理協会フリューゲルは軍事・政治とは直接的には掛かわらない特殊な立ち位置に居る代わりに、裏で両方と密接に握手しあっているグズグズの真っ黒組織だ。

 扱いやすいカルネを放逐したら、処刑人稼業を再開させられるのが目に見えている。アレはひどくイラつくしつまらない上に金も入らない作業だ。それに、シンシアも取り上げられるだろう。最悪中の最悪を絵に描いたような展開だ。


 だからカルネはまだ生かしておかねばならない。

 そのうちに自分をいいようにアゴで使った報いを与えなければならないが、それは機会があった時、先の話だ。


「めんどくさいです。お金にもなりません。地道な捜索なんて私のガラじゃないのに。移動すら【チャリオット君二世】の力で通常の十倍速なのに。こんな幼女に徒歩で町中の怪しい所を探し回れってカルネは鬼です。鬼畜です。ていうか怪しい所って何処ですか。本当に何処ですか……」


 ぶつぶつと文句を言いながらフレアは徘徊を始める。


 疲れたら時々買い食いをして、何とはなしに魔力を手繰ってみたりもするが、そもそもフレアは自身の魔力が強力過ぎて繊細な変化には鈍感だ。

 それを補うための《広域炎熱探知ホットサーチライト》も、単に人の熱反応を探すだけの魔法だから使い時が違う。


 てってけてってけと町中を歩きに歩いて、フレアの足が棒になってきた頃には夕方だ。


「……無駄な一日でした……私はなんて無駄な時間を過ごしてしまったんでしょう……」


 探索初日にフレアの心は折れてしまった。

 単純作業と1ルピにもならない仕事はフレアの最も苦手とするものだ。

 ぐったりとしたフレアは、なんとなくこれ以上歩きたくない気分に負けて回れ右しかけて、唐突に気付く。


(――もしかして今、私が最高の術師だから、無意識に異界深度の微増した領域に嫌悪感を覚えて避けようとしてしまったのでは?)


 フレアはもう一度回れ右をすると、そのまま知らない道を歩き出す。


「やだーフレアちゃんってば天才ですね!探索初日に異界化領域なんて見付けたらカルネはどんな顔しますかね。土下座ルネになりますかね?良いですねそれ、最高ですね!」


 とたんに上機嫌になって、フレアは行きがけに買ったお菓子の袋を軽く振り回しながらルンルン気分で歩いていく。


「おぉ……」


 その先には高くへと続く階段があった。登りたくない。登るのはとても大変そうな道だ。ここを通るのは非常に嫌だ。


(これは……この行きたくない感情!これこそが私の術師としての勘!異界深度上昇の鍵はこの先にありますね!当確です!)


 フレアはくたくたに悲鳴をあげる足で、いっしょうけんめいに一歩一歩登り始める。


「はぁ……はぁ……この先にはきっと……異界深度上昇の……手がかりが……」


 ぜーはー、ぜーはーと息を切らせて、常識的な判断能力を失ったフレアが気力だけで階段を登り切った、その先には――


 『エルピス西部第三番墓地』


 乱立する墓が広がっていた。

 フレアは真顔になり、手に握っていたお菓子の詰め込まれた紙袋がぽろりと手から滑り落ちる。


「……まぁ、はい。そんな気はしてたんですよ。薄々気付いてたんですよ。あれ?この感覚ってアレかな?とか、いやいやこの嫌な感覚覚えがあるような気がしますね?とか思ってたんですよ。でもしょうがないじゃないですか。途中まで登っちゃったら最後まで登るしか無いじゃないですか」


 誰に言い訳するでもなく、フレアはぶつぶつと独り言で自分の心を癒しに掛かる。


 フレアは墓地を好まない。

 フレアには死霊が見える。何なら怨霊も憑きモノも何もかも、だいたい見える。

 墓地は近づくだけで本能的に嫌な感じがするのだ。

 なので、フレアは探索が全て徒労だったと結論づけて、さっさと帰る事にした。

 ただでさえ墓地は好まないのだ。多少嫌な感じがしたところで、普段から墓地に抱く忌避感と全く違いがわからない。


 本日の探索で手に入れたジョークグッズのイカサマ用ガン付きトランプは実にシンシアをからかうのに楽しそうだと気分を持ち直して、フレアは馬車が通りそうな道へと急いだ。



◆◆◆



「……気付かれたのかしらね?」


「いやー、どうだろなー。ここに来るまではずーっとぐねぐね遊び歩いてたようにしか見えんかったし。気付いたならむしろ調べないのはおかしくねぇ?」


「……そうなのよねぇ……」


 二人の暗殺者が、深夜の『エルピス西部第三番墓地』で顔を見合わせていた。


「貴方の感覚からして、どう?灼熱皇女様」


「子供が無警戒に遊び歩いてるようにしか見えんかった」


「……同感だわ……」


「別に今更、殺す相手をえり好みする気は無えんだけどな?」


 暗殺者の男は、頭をぼりぼりとかいて、言い辛そうに口にする。


「やり辛いわ、アレ」


「それは暗殺者としての勘?」


「いや、俺に残された一欠けらの最後の良心が、なんとなーく刺激される光景だったんだわ。せめて俺達か、それともこっちかに気付く素振りがあれば容赦なくやりやすいんだけどなぁ……」


 男は足元の墓を、コツコツと踏み鳴らしながら言った。


「……まぁ、気持ちは解るけどね。あんな風にお子様が一日中遊び歩いてる光景を見ていたら……ふふ……その平穏を壊してあげる瞬間……ゾクゾクするわ」


「解ってねぇわー。お前ぜってー解ってねぇわー」


「何よう。良心が刺激されるからゾクゾクするんでしょう?」


「……確かに。そういやそうだな、お前ってばホント天才」


「でしょう?」


 二人が笑い合う所に、息を切らせて階段を上ってきた女性が一人。


「すみません、お待たせいたしました……」


「おぅ」


「ハァイ」


 豊満な胸に癖のあるウェーブの茶髪の女性。


「リュエン、ここまで来てもらっておいてなんなのだけれど……今日は中止にしない?」


「えっ……中止……ですか?でも、そうしたらあの人を呼び戻す儀式が……」


「《ギルド管理協会フリューゲル》の実働部隊が今日、ここに来たんだよ」


「え……えぇー!? そ、それって……とても危ないのでは……?」


 リュエンは外套の下に大事な物を隠しているのだろう、右腕を隠すかのように抱えて左右を警戒する。


「ええ、危ないの。リュエンが捕まってしまっては私達の計画も達成が難しいし……」


「ど、どうすれば良いんでしょう……私はあの人を……あの人を諦めるなんて……」


 リュエンが半ば錯乱し始めた瞬間、彼女の右腕がぼうっと光る。

 一瞬、がたがた、と墓地が地震のような揺れに包まれる。


「うわあぁぁぁ馬鹿馬鹿やめろやめろ!だから今日の所は痕跡を残すなって話をしてんだよ!」


「ひぇ!?は、はい!ごめんなさい!ごめんなさい!」


 リュエンが正気を取り戻すと、墓地の地震は何事も無かったかのように治まった。

 しかし、このままでは単に力を与えられただけの一般人であるリュエンはプレッシャーに負けかねないと判断し、士気を高める為、女は幾つかの情報から都合の良いものを取捨選択をし、伝える事でリュエンを焚きつける事にした。


「……《ギルド管理協会フリューゲル》の連中は、リュエンの敵よ。せっかく引き上げた異界深度だけど、それを手繰られてそのうちにリュエンの所まで辿り着いてしまうわ」


 暗殺者の女は、まず最初に、リュエンの恐怖を駆り立てる事をあえて口にする。


「……だから、貴方の為にも《ギルド管理協会フリューゲル》は私達が殺してあげる。でも、死なないかもしれないの。解る?『不死』の伝説級道具レジェンダリーアイテムを持っているかもしれないの」


「……『不死』の……伝説級道具レジェンダリーアイテム……」


 リュエンの目の色が変わる。

 迫ってくる敵の恐怖、その敵はこちらで排除するという流れからリュエンの気を引く為に一番効果があるてあろう、とっておきの情報の開示。


「欲しいでしょう?その使い手を手に入れて、徹底的に『不死』について調べれば、貴方の計画はより盤石になる」


「……ええ……ええ、そうね……そうよ……私はあの人の『不死』が欲しい……ねぇ、教えて。そのギルド管理協会フリューゲルの事……教えて……」


 ……堕ちた。これでもう、リュエンは自分達を裏切る事は無い。

 暗殺者の女は満足げに微笑む。


「まだダーメ。そうしたら貴方、暴走するでしょ? 先ずは私達が一当てしてからじゃないと。貴方の出番はその後……というか、貴方が用意した『異界深度が上がった街』という舞台のお陰で、ギルド管理協会フリューゲルが街の中をうろついて狩り放題なの。入れ食いよ?」


「あら……そうなの……?うふふ……じゃぁ、私はもっと張り切って異界深度を上げなくちゃ」


 リュエンが外套越しに右腕を光らせた瞬間、男はリュエンに当て身を喰らわせて意識を奪い、魔法の発動を止める。


「なーなー、大丈夫かよ?コイツ完全に俺らより頭イッちゃってるサイコじゃん。暗殺の邪魔されるのだけはごめんこうむりたいんだけどよー……」


「そうねー、でもなるだけ永く生きて、この街の異界深度を上げ続けてもらわないと私達が困るわ」


「あん? なんでだ? 依頼の灼熱皇女が終わればこの女、用なしだろ?」


「貴方、時々本当に馬鹿よねぇ……」


 女は、はぁ……とわざとらしい溜息をついた。


「まず、首尾よく灼熱皇女を殺せたとするわね?」


「おう。依頼は終了、晴れて俺らは左うちわだな?」


「馬鹿ね。何でそこで思考を止めるのよ。考えて見なさい?ギルド管理協会フリューゲルは今、ここを縄張りにしている灼熱皇女を失うのよ?」


「ん……んー……あ、そうか。別のギルド管理協会フリューゲルの実働部隊が来るのか」


「そういう事。異界深度が高まれば高まるほど、ギルド管理協会フリューゲルはこの街の異常を無視出来ない。暗殺に強い戦士なんて居ないわ」


「それを俺らでイージーハント……撤収するのは本当にヤバそうになってから、か」


地獄の番犬ケルベロスへ貸しを造れる良い機会よ。貸せるだけ貸しまくりましょう」


「よっしゃぁ!そうこなくっちゃな!やっぱお前最高、愛してるぜ!」


「私もよ」


 暗殺者二人は拳を付き合わせて高笑いを行う。


「っしゃぁ、んじゃぁ……やっぱネックはそこのイカれ女だな。妙な暴走でもされる前に……」


「そうね。様子見した限り、今日の尾行にも一切気付く気配が無かったし」


「明日、殺るか」


 男は、隠されたマスク越しにも解るほど、口角を上げて嗤った。


感想どしどし募集中!


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