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追放少女の剣は三度煌めく~不老不死幼女は最強の火炎魔術師で二人はなかよし~  作者: さざなみかなで
3章ーその時点ではまだ自分の狂気に気付いてはいなかった、と彼女は言った。
21/33

3-6.彼女はいつも彼女に振り回されるが、安全は確保されていたという。

10/13 全体に大幅改稿を行いました。


 自分に向いていない気配は、手繰るのが難しい。

 視線をなんとなく察知する事が出来ても、相手に気付かれないように動いて視線に入らないようにしているわけだから、その辺りの感覚が当てにならないというのが『追跡』というのはどうにも難しい。


 そもそも、【チャリオット君二世】を隠す為にあれこれと行っているうちにシンシアは山賊たちを完全に見失っているわけで、『当然あるのであろう見張り』に見付からないよう身を隠しながら『勘』と『気配』だけを頼りに彼らの後をつけての探索が出来ている事が異常なのだが、その点に関してシンシアには自覚がない。


 そもそも、どちらか片方が捕まりに行って山賊のアジトを特定するなら人質役に適任なのはシンシアの方なのではないか、と頭を痛める。

 フレアはあの魔法の力とそれに見合った豪胆さを持っているが、《身体硬度強化アーマード》どころか《身体能力強化パワード》すらまともに使えないのだから、魔法無しではそこいらの子供同然だ。


 むしろ、そんなただの子供同然のフレアがいつもの調子で大人を煽ったらと思うと、ぞっとする。フレアは《魔力放出リリース》に対して『力あることば』の発音も無しに術式展開出来るのだから、いざ戦闘が始まればたかが山賊ごときを相手に苦戦するという事も無いだろうけれど……単純な会話で相手を怒らせて、殴られるなり蹴られるなりしたら簡単に昏倒してしまいかねない。


 シンシアならば、いざという時にロープくらいなら引き千切れるし、素人の剣なら十数秒間なら無傷で耐えれる自身がある。物理的に逃走の難易度が低い上、フレアには《広域炎熱探知ホットサーチライト》でシンシアの位置を把握する術がある。


(自分から『高く売れる商品』を売りに捕まったんだから、せめて私が助けに入れる情況になるまで大人しくしててよ……?)


 シンシアが祈ったその瞬間、爆音。


 地面が揺れる。


「……はぁ。コソコソ探しても仕方ない。最短距離で突入しよう」


 シンシアは色々と諦めて藪から出ると、視界の先で狼煙のように煙が上がる場所へと向かって走った。



◆◆◆



「で、親分。どうしやすか?」


「ふむ……」


 事情を聞いた山賊の親分は、顎の髭をじょりじょりさすりながら思案している。


 フレアは手を縛られて口を塞がれたまま、大人しく山賊の男に抱っこされていた。


 抵抗のそぶりすら見せない。何なら持ち運ばれやすいように自分から縮こまっている。


 フレアは自分の容姿の使い道をよく知っている。

 ただでさえ、愛玩動物のアルビノは珍しいのだ。

 世にも珍しい人間のアルビノ、それもまだ小さな美少女とくれば、人身売買が大好きな賊は商品価値を下げない為にもフレアを傷つける事は無いし、『小さすぎる体躯を壊してまでも』性欲のはけ口にされるという心配も基本的に無い。


「……お前、賢いなぁ」


 フレアはポケットの中からは既に冒険者カードを奪われていた。

 ギルド管理協会フリューゲルの証明カードはこんな事もあろうかと普段から服の下に隠している為、問題はない。

 むしろ、ギルド管理協会フリューゲルから支給された冒険者カードをわざと見せる事で持ち物検査を回避した。


「確かに貴重な《解放リリース》使いとはいえ、ランクがE程度じゃぁ返り討ちに出来てもせいぜい2人がせいぜいだろ。相棒のランクはDってとこか?」


 フレアは適当にこくこくと頷く。


「まぁ、6人掛かりで囲まれて、無傷で済まそうって機転の良さは良いな。何処の金持ちに売っぱらうにしても、利口なのは都合が良い。無傷で逃がした相棒が救援でも呼んでくるのを待つつもりだったんだろうが……当てが外れたな。俺らがシマを変えればそれで済む話だ」


 盗賊の親分はくっくっと嗤い、その後で山賊の男達に激を飛ばす。


「それよかお前ら!術師の口を塞げばもう片方を捕まえるのも余裕じゃねぇか!ペース乱されたからっつって甘ったるい事考えてんじゃねぇよ!」


「すいやせん!」


 フレアは冷静に山賊たちの観察をしていた。

 穴倉の見張りに2人、親分の他に2人。そしてシンシアと共に遭遇した6人の、11人。

 人数も想像より少なく、フレア一人捕まえただけで河岸を変えようとする辺り、貯め込んだお宝も少ないだろう。せいぜい馬車の中の積み荷くらいのものか。


 フレアはがっかりした。

 もう少し規模が大きければ、懸賞金の額も期待出来たし、捕まえた時の報酬額も高まるだろうというものなのに。


「おい、嬢ちゃん。魔法を使うそぶりの一つでも見せたら……解ってるな?」


 フレアは地に降ろされ、寝かされてナイフを突きつけられたフレアはこくこくと頷く。

 それが確認されてさるぐつわを外されたフレアは、ふぅと一息つく。


「で、嬢ちゃんは何処に売り飛ばされたい?希望だけは聞いてやるぜ」


「またまたー。山賊が貴族に直接売りつけるコネクションがあるわけないじゃないですかー。奴隷商人に流し売りですか?それとも山賊さんが出品者として競売ですか?」


「くっ……はっはっはっはっは!こいつぁいい。そこまで解ってて捕まるってんだから、わかんねぇなぁ。お前の相棒はそこまでして守りたいもんだったのか?」


「……んー……」


 フレアは唐突に言葉を失い、瞳から光が消える。


「……ん?どうした?」


「まさか術式発動の集中か?」


「いや……それにしちゃ……おい、どうした?」


 フレアはぺちぺちと頬を叩かれるが、反応が無い。


「まさかお前、こいつを捕まえる時……」


「いや、何も!こいつ自分から捕まりにきたんで、何もする必要なかったんで!」


「……シンシアは良い子なので、あまり残虐な事には巻き込みたくないんですよねぇ……」


 唐突に意識を取り戻したかのように口を開いたフレアに、山賊たちはびくっと身を震わす。


「……今の俺には魔法なんざ効かないし全く怖かぁねぇが……ふんじばっとけ、気味が悪い」


 口かせが掛けられ、山賊たちが油断した一瞬の隙をついて。

 フレアは無詠唱で《火炎弓の雨フレイムアローレイン》を20本近く展開し、一人につき二本ずつ射出した。


 どどどおん、という大きな着弾音。


 洞窟の中だからか余計に音が響く。

 また、自身に《対炎熱防御アンチファイヤプロテクト》を展開、足元から火柱を発生させて縄を焼き切る。

 口枷を外しながら、フレアは面白そうなオモチャを見つめる子供の目そのもので山賊の親分をじっとみつめた。


「な……なんだ、そりゃぁ……」


 8人の山賊達を一瞬で無力化したフレアの魔法に、親分は絶句している。


「……おかしいですねー……全員にちゃんと当たるように撃ったつもりなんですが」


 フレアは再度、今度は《火炎弓フレイムアロー》を無詠唱で発動させ、射出する。


 その炎の矢は、親分に吸い込まれる用に飛んでいき、着弾の瞬間、寸前でかき消えてしまう。


 ――間違いない。この発動反応は伝説級道具レジェンダリーアイテムだ。任意発動ではなく、自動発動型で魔法を勝手に消失させる効果……珍しいなんてものじゃない。長年ギルド管理協会フリューゲルとして働いていたフレアをして、初めて見る効果だ。


「な……危ねぇ、なにしやがる……」


「それ、何処で手に入れましたかー?そこらの木っ端な山賊風情が手に入れられる品じゃないですよね?」


 一発、二発と《火炎弓フレイムアロー》を発射しながらフレアが問いかける。

 山賊親分の身体に直撃コースの物は言うに及ばず、多少逸れたものですら簡単に術式が霧散する。


「お前、何者だ……魔法名の発音も無しに魔法を使うとは……」


 フレアの《火炎弓フレイムアロー》を怖るるに足らずと判断したのか、及び腰だった山賊親分が強気になり、立てかけていた斧を手に取る。


「圧縮術式に頼ってるようじゃ素人です。不意打ちにならないじゃないですか……こんな風に!」


 フレアは《火炎弓の雨フレイムアローレイン》を10発展開、そのまま射出。これらも全てかき消えてしまう。


「……楽しくなってきました。それ、本当に何処で手に入れたんですか?」


「馬車の積み荷だよ。気に入ったから着けていたら、昨日襲撃を掛けてきやがった冒険者の魔法が全部消えてな?悪かったなぁ、お嬢ちゃん。俺相手に魔法使いは勝ち目なんかねぇって事を教えてやる……」


「それはどうですかねー……」


 フレアは小規模爆破術式を山賊親分の足元に発動させようとして、それも霧散した事を確認する。

 どうやら、魔法の術式もマナも等しく分解されてしまうようだ。


「どうしやした親分!?」


「お前ら!危ねぇから外見張ってろ!ガキがガチの魔法使いだった、俺がやる!」


「りょ、了解!」


 男達が部屋に入ってくるのを、山賊親分がフレアとの間に割って入るようにして止める。

 これは純粋に子分達をフレアの魔法から守る意外に、フレアの退路を塞ぐ狙いもあったのだろう。

 男はそこから一歩も動かない。

 フレアの魔力が尽きるまで待って、ゆっくりと調理……とでも考えているのだろう。


「ふふふ……楽しい、楽しい、楽しい!最近、ストレスたまってたんです!できるだけ耐えて下さいね!」


 フレアは再度、10を越える質量を伴った炎の『核』を発生させる。

 ただし、今回は……


「《火炎弓の雨フレイムアローレイン》!」


 フレアの圧縮術式に補強された術式はさらに強大な炎弾となり、山賊親分の身体を打つ。


「ぐぉっ!?」


 想定外のダメージに、山賊親分は身体を揺るがす。

 いかに伝説級道具レジェンダリーアイテムとはいえ、使い手が魔力に満ち満ちていないとその程度。恐らくは偶然相性が良かったか、使い手を選ばない道具だったのだろう。

 『一瞬で消せる許容量』以上の魔力、勢いで放てばダメージになるのだ。


「さぁ、まだまだ行きますよー。《火炎弓の雨フレイムアローレイン》!」


 今度用意したのは、20の矢。それも、最初から圧縮術式で用意した手加減抜きの物。


「ま……待てっ!」


「はっしゃー!」


 ドドドドドド!


 山賊親分の身体に幾つもの炎の矢が打ち付けられる。

 伝説級道具レジェンダリーアイテムに減衰されきっているとはいえ、その一発一発が恐らくは大人の男が全力で殴る程度の威力はあるだろう。

 山賊親分は備えて《身体硬度強化アーマード》を使ったようだが、完全にノーダメージとはいかないようだ。


「く……この」


「《火炎弓の雨フレイムアローレイン》!」


「待っ……」


「《火炎弓の雨フレイムアローレイン》!」


「言う事をききやがれぇ!」


「《火炎弓の雨フレイムアローレイン》!!」


 どどどどどどどど、と山賊親分の身体に突き刺さっていく度合いが徐々に増えている。

 《身体硬度強化アーマード》は使用者の体力、魔力をめっぽう奪うという。

 フレアは使えないのでよくわからないが、シンシアですら《身体能力強化パワード》と併用して全力で保ち続けられるのはたった20秒程度という事だから、山賊親分の我慢も中々の物だろう。

 シンシアの魔力は決して多い方じゃないが、それでもそこらの冒険者に比べればそれなりのモノだ。


「楽しいなー、楽しいなー♪こんなに撃ち込んでそんなにぴんぴんしてるオモチャ初めて!《火炎弓の雨フレイムアローレイン》!!!」


 次の発動は三十本。

 山賊親分は涙目になって逃げ回り始めた。



◆◆◆



「なんだてめ げほぁっ!?」


「よ……よくもジャックを!」


「ふっ……」


 シンシアは《身体能力強化パワード》による速掛け、その勢い全てを乗せた跳び蹴りで見張りに立っていた男のうち片方を一撃で昏倒させる。

 着地より速く剣を抜き、振る。


 不意打ちで倒れたジャックという男より、残った方は反射神経に優れるようだ。

 勢い任せのシンシアの斬撃を止める。


「悪いけど、うちの子が暴れてるみたいなんでさっさと回収したいんだ、通して」


「あぁ!?お前、もしかしてさっきガキの言ってた仲間か!?どうしても通りたけりゃ、ガキみたいに手枷でも着けて出直してこい!そうすりゃ優しく迎え入れてひんひん言わせてやるよ!」


「ひんひん!?」


 言葉の意味を想像してびくっとシンシアが縮こまった隙を逃さず、山賊は手にした槍でシンシアを突く。


「くっ……」


 その突きの速さは素晴らしく、シンシアは防戦一方になる。

 想定外の苦戦に、魔剣を使おうかとも一瞬だけ思うが……アレは、威力がありすぎる。

 この男の槍を切っても、その先には確率がどれだけ低かろうと、最悪の事態を想定するとフレアを人質に取られた戦闘の展開まで考えうる。

 軽々しく使える類の品ではない。


 それになんなのだ、山賊というのは。

 お話の中じゃ、十把一絡げの有象無象じゃないのか。

 なんなら、『別格』の相手を抜いて考えると、実戦という緊張感も含めた『人』を相手にした戦いの中で、これまでで一番苦戦してしまっている。

 その事に、焦りを感じる。


 シンシアの焦りを察知し、舌なめずりした山賊は口にする。


「……なぁ、お前まさか、俺を無傷で捕えよう、なんて馬鹿な事考えちゃいないだろうな?」


「――っ!」


 呟くような山賊の言葉に、図星をつかれたシンシアは言葉を失う。


「山賊ってのはな……生きる為に冒険者相手に戦うし、セーフスポットを探して魔獣とも戦う。むしろ人間と戦う事に特化してんだ。弱いわけあるわけねぇだろ!」


 気迫と共につきだされる槍。


 シンシアはそれを、すぅと碧眼を薄めると、逆に槍に対して飛び込み、潜り抜けてその使い手のもとまで肉薄する。


 剣を持って右腹から左肩に薙ぎあげるようにして斬る。


「ぐぉっ……」


 激痛に槍の保持力を失った男にから槍を奪い、《身体能力強化パワード》を全力で遠くに槍投げを行う。

 丸腰になった男の気道圧迫の為、首元に足を掛けながらシンシアは言った。


「そうだよね……肝心な事、忘れてた。私は弱いんだから、油断する余裕なんて無いよね……」


 そうだ。武器を持って襲ってくる敵を相手に、『斬らないでどうにか倒そう』だなんて、虫が良すぎたんだ。もっと、容赦なく。もっと、冷徹に戦わないといけないんだ――私は、弱いのだから。


 山賊が白目をむいて泡を吹き始めたのを確認して、シンシアは洞窟の中に入っていった。



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