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鳥籠の中  作者: さく
四章
7/14

瀬名勝 ②

 そんな事をしたら、二人とも不幸になりかねない。


「待て、まさか実力行使じゃないだろうな? そんな事をしたって、有希もあんたも幸せになれないだろ」


 玲香が沈黙する。どうやら図星のようであった。

 その姿をみて、勝は腹をくくる事を決めた。


「有希は俺と同じ«鳥籠»にいたよ。同室だった」


 その一言に玲香がピクリと反応する。


「俺はあそこは三十歳で死ぬ世界だって知ってたからな。勿論その情報は有希にも伝えてある。だから、あいつもDNAマッチングをやっている」

「もう既に居ないという事?」

「いや、俺があんたに呼び出された時はまだ有希は残っていた。幸い異性婚を望む人間は極めて少ない。これからあいつにマッチングが適合しそうな人間を探せばいける可能性はある」


 玲香は顎に手を当てて暫く考え込む。そして、口を開いた。


「そういうことなら、あてがあるわ……。気乗りはしないけれど」

「消極的な方法だと思われるかもしれないが、多分それが一番安全だと思うぜ」

「……本当にその方法でいいの?」

「ああ」

「それじゃぁ、半年間宜しく」


 勝は玲香が自分の真意を汲んだ事に満足して頷いた。


 * * *


 勝の退去手続きは淡々と行われていた。


「それじゃぁ。出戻りになら無い様に気をつけるわ」

「ああ。戻ってきても、僕ももう居ないかもしれないしな」


 そんな有希の言葉を鼻で笑い、肘をぶつけ合う。


「そうだな。有希なら、すぐ見つかるさ」


 勝は最後の言葉を伝えて«鳥籠»を出て行く。

 基本的に出戻りになる可能性は極めて低い。

 理由としては、男性側にきちんと生殖能力があることは事前に判明している事が条件であり、女性側も排卵日に合わせて見合いが行われるためだ。

 そのため、最初の一ヶ月で妊娠する可能性は極めて高い。

 半年間妊娠がない場合は、おそらくセックスをしていないと考えられ、それが出戻りにつながるのだ。

 «鳥籠»を出た勝は郊外の邸宅へと案内された。

 ダイニングで差し出された紅茶で一息ついて、本題に入ろうとする。


「それで、あてというのを聞いても良いのか?」

「ええ、勿論。多分そろそろ来る頃だと思うわ」


 暫くすると、使用人に案内され、やや長めのボブの女性が入室する。

 基本的に、異性婚をする人間は裕福層が多い。

 男性に与えられる仕事はないため、実質女性が全ての面倒を見る必要があり、生活に余裕がないものは男性との結婚は出来ない。

 そのため、女性に少なからぬ負担が強いられる事もあり、全権が委ねられているのだが、逆にそのせいで、男性をペットとしか見られない女性が一定数生まれる弊害となっていた。

 だからこそ、一夫多妻を悪用した重婚を行う人物が出てきたのだろう。


「紹介するわ。彼女は日下部美緒。メンバーの一人よ」

「初めまして。玲香のパートナーよ」

「ちょっと、美緒?」

「どうせすぐにバレるのだから、はっきりさせておいた方が良いわ」

「なるほどな。確かにパートナーなら、DNAマッチングも優判定の可能性が高いか」


 そんな勝の物言いに、美緒は満足そうな笑みを浮かべていた。

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