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鳥籠の中  作者: さく
四章
6/14

瀬名勝 ①

 個室の扉がガチャリと開いた。

 勝は固唾を呑んで見守る。

 いくら延命のためのDNAマッチングとはいえ、見た目は重要だと考えていた彼は、その容姿にほっと胸をなで下ろした。

 後は、なんとか上手く取り入って、古巣へと連絡が取れる様になれば良い。

 そんな事を考えながら、椅子から立ち上がり、その女性に一礼する。


「初めまして、私は東坂玲香。貴方がMS一〇四三一五でよいかしら?」

「間違いありません」


 IDで呼ばれる事には慣れている。

 しかし、その名字には聞き覚えがあった。

 いや、まさかな。

 あまりにもできすぎている。

 しかし、有希は自分とのDNAマッチングで優となっている。となれば、彼の姉もDNAマッチングで優となる可能性は極めて高い。

 確かによく見るとどことなく有希の面影が見えないでもない。

 とはいえ、第三者がいるこの状況では余り込み入った話も出来ない。


「早速だけど、いくつか質問してもいいかしら?」

「はい、俺……いや、僕で答えられる事なら何でも」


 うっかりといつもの癖で俺といってしまう。

 しまったという顔をして訂正しつつも、玲香は静かに微笑んでいた。


「君は、『俺』っていうんだ。勝君?」


 ガタン。

 大きな音を立てて、椅子が動く。

 勝は額に冷や汗を滲ませながら、震える声で答える。


「さて、何のことでしょう。勝という名に覚えは」

「しらばっくれなくても良いわよ。瀬名勝君。ここにいるのは全員同盟の息のかかった人間だから」

「……マジかよ」


 素が出た。

 だが、もう取り繕う必要も無いだろう。


「大マジよ」


 そう芝居がかったように言って、玲香はカップの中の紅茶を啜った。


「それで、聞きたい事って?」

「あら、酷くぞんざいになったわね。そんな事じゃ女の子に嫌われるわよ?」

「茶化さないでくれ。同盟の人間というなら、あんたもメンバーの一員ってことなんだろ?」


 同盟とは解放同盟。すなわち、勝のいた施設の裏の顔である。

 «鳥籠»の存在を認めず、男性の人権を得ようとする団体である。


「残念ながら、私はメンバーではないわ。どちらかというとパトロンね」

「酔狂な話だな。で?」

「ふぅ。本当に貴方と私ってマッチング判定優だったのかしら? まぁいいわ。貴方の居た«鳥籠»に、東坂有希っていう子は居なかったかしら?」

「弟かい?」

「ええ。最愛の弟よ」


 勝はしばし悩んだ。

 おそらく玲香の言うことは本当なのだろう。

 だが、それをそのまま教えても良い物か悩んでいた。


「知ってどうするつもりだ?」

「助けるのよ。そして一緒に暮らすの。家族なのだもの」


 あっけらかんと言う玲香に勝は毒気を抜かれた気分になった。


「助ける、か」


 勝が有希と接触したのは偶然である。


「助けるって簡単に言うけれど、あてはあるのか?」

「«鳥籠»さえ分かれば後はなんとかする」


 助けるという言葉に若干の不安を感じた勝が聞くと案の定物騒な話が帰ってきた。

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