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鳥籠の中  作者: さく
閑話
14/14

姉との思い出

女装ネタですので、苦手な人はスルーしてください

時系列的には、姉との再会後、勝の話の後の雑談という体です

 姉の性格について思案していた有希だが、ふと思い出す事があった。


「そういえば、一回姉さんに強引に外に連れ出された事があったっけ」

「まって、その話するの!?」


 狼狽する玲香をチラ見して、興味をそそられた美緒が意地の悪そうな笑みを浮かべながら食いついてきた。


「その話、詳しく聞かせなさい」


 有希はそんなにたいした事無いよ。という前振りをしながら、困ったように眉をひそめて話を続ける。


「――あれは、僕が鳥籠に行く一年くらい前だったっけ?母さんも父さんも居なくて、暇を持て余した姉が、近くのショッピングモールに遊びに行こうっていいだしてね」


 当時家から電車で三駅ほど行った先に、やや大きめの総合商業施設があった。

 男性の単独行動は法律で禁止されているため、有希一人では外出できなくても、姉と同伴なら可能だ。

 もっとも、男児を連れ回す人間はほとんどおらず、姉も外で男児を見たことはないという。

 しかし、東坂家はこの時代においては極めて異質で、父親も有希自身も外出する事はそれなりにある。

 家族全員で旅行とか食事とかする事が多かった。

 そういうイベントは、夫婦家庭では非常に珍しいらしく、割と奇異の目で見られることも多かったし、有希自身そういう視線に敏感な部分があった。

 

「目立つのはいやだなぁ」

 

 ぼそっと呟くと、玲香がにんまりと笑って人差し指を立てた。

 

「大丈夫、私に秘策あり! よ!」


 その姉の秘策に顔をしかめつつ、用意されたモノと姉を交互に見比べた有希が、げんなりとした顔をする。

 

「その、お姉ちゃん。僕、一応男なんだけど。もっと変な目で見られるのでは……」

「大丈夫よ。有希は可愛いから!」


 何が大丈夫なのかさっぱり解らない。

 目の前に出されたのは姉のお古だ。

 つまり、女装をしろといってるのだ。

 目をキラキラさせながら、早く着替えて遊びに行こうと期待に満ちた玲香をみて有希は何も言えずに深いため息をついた。

 

 有希が鳥籠に入ってから知った話ではあるが、意外と女装している男児は少なく無い。

 先のように奇異の目で見られたくないというのもあるが、もっとも大きな理由として、わざわざ男性向けを買う理由がないというのもる。

 所詮、十二歳程度で鳥籠に行くのだ。女性の服に比べてやや割高ですぐに着れなくなる男児の服など買わない家庭もある。

 そういう家庭は女児用古着を子供に着せるらしい。

 女の子っぽい男児で有ればまだいいものの、男性の片鱗が見えつつある十歳を超えた辺りから厳しくなるのだ。

 

 鳥籠の中で、どんな服を着せられたのかで盛り上がる事もあるのだが、普通に男児服を買ってくれていた両親のおかげでそういう話に入る事はなかった。


 流石にここまで期待した姉を裏切る訳にはいかないと思い、袖を通すと意外なほどにぴったりとはまる。

 袖にフリルをあしらい、紺色ベースで白い水玉がプリントされたTシャツに、アイボリーのサスペンダー付きキュロットスカート。


「うん、やっぱり可愛い!」


 鏡を見る有希だが、なんとなくしっくりと来ない。

 多分、姉のような黒髪ストレートにはあうが、自分のようなウェーブのかかった天然パーマの茶髪にはあわない様な気もする。


「これも貸してあげる」


 そういって渡された髪留めを付けると、確かにまぁ、女児に見えない事もなかった。

 外見的にはかなり普通に可愛い女の子ではあるのだが。

 家から出て三十分ほどでショッピングモールに到着する。

 はぐれない様に玲香はしっかりと有希の手を握ると、


「じゃぁ、行くわよ!」


 声を弾ませながら、その施設の門をくぐった。


「――で、その後どうだったの?」


 弟を強引に女装させたという黒歴史を披露されてしまった玲香がやや居心地悪くしている中、美緒が続きを促す。


「普通にウインドウショッピングしたり、ゲームセンターにはいったり、フードコートで御飯食べたりかなぁ」

「ウィンドウショッピングって、男の子的にはどうなの?」


 美緒がなんとも言えない表情で有希を見る。

 

「うーん……」


 正直有希にはウインドウショッピングの楽しさは良く解らなかった。

 雑貨類など買ってもどうせ居なくなる身である。衣服なんて女性向けしか売ってないのだから、言わずもがなだ。


「あ、でも。あの時のお土産は一緒に選んだんだよね。リボン付きのバレッタ――」

「え? あ……え?」

「ふぅん」


 美緒がほんのり赤くなる玲香を見ながら、何かを悟ったように流し目をする。

 ショッピングモールでの有希とのひとときは、玲香にとって宝物に等しい思い出だった。

 有希の痕跡が家から失われていく度に、半身を失うような喪失感を覚えていた。

 そんな彼女の救いが、リボン付きのバレッタだ。

 ある意味、有希の形見の品なのだ。


「ね、嬉しい?」

「~~~~!」


 照れすぎて妙なうなり声を上げてしまった玲香の頭をポンポンと叩く。


「それよりも――。私としては、有希君の女装に興味があるなぁ。今度またしてみない?」

「え!? し、しませんよ!」

「そうかしら、結構似合うと思うのだけど」

「勘弁して下さい」


 成長してややがっしりとした体型になってしまった有希ではあるが、線は細くそこまで筋肉質ではない。

 意外といけそうな気がすると玲香もふと思い描いてしまう、が、あの時のげんなりした表情と、目の前の有希のげんなりした表情が全く変わってないことに軽く吹き出す。

 

「だめよ。有希の女の子の姿は私だけのものだから、いくら美緒でもだめ」

「そういうことにしておきましょうか」


 美緒が優しい笑顔でそういうと場が和む。

 思い出して見れば、意外と直情的な人だったのかもしれない。

 そんな事を思いながら、有希は食後の紅茶を傾けていた。


キャラクターラフを頂いて、うっかりとやらかしました。

ええ、やらかしました。

でも後悔はしてません。


ちょっと補足すると、再会の時、玲香は思い出の品であるリボンがついたバレッタを装着しています

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