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鳥籠の中  作者: さく
終章
12/14

エピローグ

「今日、姉さんが引っ越してくるんだっけ?」

「そう。これからここは二世帯住宅になるって事ね」

「まさか、姉さんもDNAマッチングしていたとは思わなかったな。旦那さんとは上手くやれるか心配だな」


 美緒経由で、玲香が妊娠したと聞いた有希は心底驚いていた。

 そして、美緒の提案で、二世帯で暮らそうという提案がなされたのだ。


「玲香も有希と元々暮らしたがっていたし、それに二世帯のほうが何かと便利だしね」

「ひょっとすると、僕の両親も一緒に住めたりするんだろうか」

「それはちょっと難しいかな。今回のケースはあくまで偶然を装っているからね」

「そうか……」


 少し残念そうに言う有希を後ろから抱きしめる。


「それにしても偶然っていって、よく受理されたね」

「有希には前に話したでしょう? 私と玲香はパートナーだって。それだと受理されやすいのよ」

「だって、前に一緒に住むためには裏技を使う必要があるって言ってたよね」


 有希が大仰に驚く。


「ごめんなさい、貴方を試したの」

「ひどい」


 信じられない。という目で見る有希を美緒はおかしそうにクスクスと笑う。


「でも、そんな事しなくても、二世帯にすればいいのよ。相手が結婚してるって前提がいるけど。

 あ、そろそろね?」


 時計を見れば、もうそろそろ玲香が到着する時間だ。

 使用人が慌ただしく動き、玲香の到着を知らせる。

 暫くすると、玲香が応接室へとやってきた。


「ごめんね。家のほうが広かったからといって呼び出しちゃって」

「そんな、むしろ私のわがままなのに」


 二人のやりとりを横目に、有希は旦那の姿を探した。

 すると、ひょっこりと扉の向こうから男が顔を出す。


「よう。初めまして……じゃないよな」


 ニヤリとする見慣れた顔。


「勝!」


 有希は勝にかけよると、そのまま抱きついた。


「え? どういうこと? まさか旦那って」

「そう、俺だよ。お兄ちゃんって言ってくれて良いんだぜ? あいてっ」


 見たら玲香が思いっきり勝の頭を小突いていた。


「は、ははっ」


 涙混じりに有希の口から笑いが漏れる。


「すまんな。中々、子供が出来なくてなぁ」

「いや、でも、できたからここに居るんだよな。嬉しいよ」

「じゃ、今晩は引っ越し祝いのパーティをやるから、さっさと荷ほどきをしてしてね。家の使用人は好きに使っていいから」


 手をパンパンと叩いて美緒が仕切る。

 その夜は、とても賑やかな宴が催されていた。

 その日の深夜。


「まさか、勝が僕のお兄ちゃんになるとはね……」

「よしてくれよ、悪かったよ」

「美緒が僕のことを知ってたのは、勝がいたからなんだね」

「怒ってるか?」

「いや。でもそれで良かったかもしれない。でも気になる事はあるな。美緒の話だと、僕と姉が結婚する事を視野に入れてたらしいんだ。その場合、勝はどうなってたんだ?」

「あー。美緒さんそこまで話しちまったのか」

「もう済んだ事だからいいと思ったんじゃないかな?」

「その場合、俺は出戻りだな。元々、その案は俺が提示したものなんだ。でも美緒さんに反対されてな。まさかこんな方法があるとは思いもしなかったよ」

「そうか、美緒に感謝だな」

「だな」

「それはそうと、僕は十二年後が憂鬱だよ」

「その話だけどな。昔、俺の施設の話をしただろう? 今、水面下で動いてる」

「期待できそうなのか?」

「ああ、多くは話せないけどな。頼もしい人が居るからな」


 家族を分断させるような事にならないように動いてくれるだろう。

 そう、勝は言った。

 冷たい夜風が頬をなぞる。

 この先どうなるかはまだ解らないが、できるならば、子供達が自分と同じ思いや、姉のような思いをしなくて済む世界になるようにと、有希は願わずにはいられなかった。


 ~了~

ここで完結となります。

お楽しみ頂けたら感想など頂けると有り難い限りです。

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