その2.
天空で、不穏な暗雲がおどろおどろしく渦を巻いている。
錆びれた夕暮れーー混沌の世界にお似合いの気配。その中に世界はひっそりと沈んでいる。
遠くに目をくれる。
見ると、幾筋もの閃光が雷鳴とともに、闇を切り裂いている。
乾いた砂の大地が地平の遥か彼方まで広がっている。
この大地のほぼ中央あたりに、わりと大きな丘陵がある。そこから、烈風が吹いてくる。その風に乗って、雷鳴が後ろに流れていく。
丘陵に目をやる。見れば、なにやら二つの影が目に入る。。
さっきから、烈風が、この二つの影を執拗になぶっている。
風は、一方の影を、遥か遠い彼方まで吹き飛ばしてしまいそうなくらい、かなりの勢いで丘陵の上を吹き渡っている。
そこへいくと、もう一方の影は微動だにしていない。同じ風を受けているにもかかわらず……。
かえって、憎たらしいくらい涼しい顔をして、そこに、泰然として佇んでずんいる。
それだけに、一方の影のからだは、非常に、小さく、出来上がっているらしく思われる。
と思いきや、存外、そうでもないようだ。
むしろ、小さいと思われる影の方が、この世界の標準サイズらしい。
だとしたら、もう一方の影が、桁外れにデカイ図体をしているのだろう。
このデカイ影は、あきらかに人間の概念を超越した、まるで神話の中に出てくる、あの巨人を彷彿とさせている。
つづく