第3話 目覚め
家の外に出ると魔王は剣を差し出した。
「握ってみろ。この剣には魔族の力を解放する能力がある。」
恐る恐る手に取ってみた。
すると、目の前が真っ白になり力が溢れて来るのがわかった。
頭に生えたツノ。背中に生えた翼。鋭く尖った爪と牙。その姿はまさに魔族だ。
「やはり素質あったか。さすが俺の息子だ!」
魔王は満足げに笑っている。
力を得れたのは嬉しいが気になったことがある。
「俺以外にも人間と魔族のハーフはいるのか?」
魔王に問いかけた。
すると魔王は答えた…
「もちろんいる。どれぐらいいるかは把握していないがより人間に近い者。魔族に近い者。それぞれ違う。ルシウス、お前は後者になる。」
この世界には俺の他にもハーフは存在しているらしい。
そして、その大半は自分がハーフであることすら気づいていないらしい。
まぁ俺もそうだったのだが。
「そんなことより、これは元に戻れるのか?」
「もちろんだ。人間の武器は人間の力を引き出し、魔族の力を弱めることが出来る。人間の武器を身につけていれば人間として生活することができる。」
これで元に戻れないとなれば本当に笑えない。
急に魔族として生活しなければならなくなるのは本当に困る。
一安心して一息ついていると、遠くからもの凄いスピードで人が近づいてくる。
端整な顔立ち。黄金に光る鎧。細く長い美しい両手剣。
いかにも主人公のような人物。
そう。こいつは学校で成績トップで卒業したノイシュ。
俺のことをいつもバカにしていた嫌なやつだ。
「なんの気配かと思えば魔族か。この俺が成敗してくれる!」
もの凄い威圧感だ。
俺は気圧され動けない。
それと人間から見たら完全な魔族に見えるということにもショックを受けていた。
「いくぞ!」
ノイシュは全力で向かって来る。
ギリギリのところで避けると、ノイシュは踏ん張り剣を振るった。
「痛っ!!」
剣はみぞおちのあたりを切り裂いた。
そのときだった。
「お、お前、ルシウス…なのか?」
気付かれてしまったようだ。
話を聞いてほしいと説得するが聞く耳を持たない。
戦い慣れていない俺は次第に押されていった。
「ルシウス!お前が俺に勝てるわけないだろう!」
そう言われ俺は心臓を一突きされた。