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招かれざる来訪者④


一先ず、ここは大人になって、


と考え、総菜の準備を始めようとした所でルヴァンが前に立ち止められる形になった。


「サラ、そこにある物をそのまま食べて頂けばいいよ。」


「え?」


「元々、総菜は作り置きした物を出すつもりなんでしょ?そしたら、出来立てではなくて今の状態で殿下に召し上がって貰うのがいいよ。」


もっともな事を言っているのに、笑顔が怖い。

食べて頂けば、とは言っているが、食べさせとけって言葉が透けて見えるほどだ。

だけど、それもそうだよね。いっそ作り置きの物で値段考えてもらった方がいいのか。


「そうだね。…という事なのでこのままどうぞ。」


と机の上に並べられている料理を前に差し出せば、お顔だけは綺麗な王子の眉がピクリと上がる。


うん。不服そう。


だけど関係ないもんね。


強気な態度でもう一度"どうぞ"と差し出せば、険しい顔のままフォークに手を伸ばし、コロッケを突き刺した。

しっかりと油を切ったコロッケは冷めていてもサクッと音を立てていい感じなのに、何故が背筋がゾッとした。

その後ナイフで一口サイズに切り分けて口に運ぶ。


試食用という事で、通常よりも小さめで作っていたがやはり腐っても王子様、しっかりと一口サイズに切り分けられたコロッケを口に運ぶ姿は、流石と言うか何というか洗礼された所作ではある。


コレで正確に難がなければ間違いなく優良物件なんだけどね。

ただ彼方でもそうだったけど、そんなに結婚に夢を見たことがないのも事実。

周りにいたのは、打算的な恋愛や結婚をしてる人が多かったから仕方がないのかもしれないけど…


ただ、王子は無いよなー。


この性格を我慢して、一緒に過ごせる気がしない。


目の前で黙々と食べ進める王子を見ながら、"はっ"ととある事を思い出した。


今朝作った、とあるメニューを出していないという事を。



◇◇◇


今朝、下準備をしている時のこと…



「んーーーー。」


気づいてしまった。

ケインさんに折角さつま芋を育ててもらっているのに、さつま芋の料理が無いことに、このままでは折角育ててもらっているのに周知の手助けができない。


急いでさつま芋を取り寄せ、調理にかかる。


綺麗に洗ったさつま芋を食べやすいサイズに乱切りにする。

そしたら10分ほど水に浸けて水気を切る。


そしたら水気を切ったさつま芋を、低温の油で5分程揚げる。

身がだんだん綺麗な黄色に変わってくるのが、見ていてなんとも言えない。


そうしたら一度取り出し、油の温度を上げて2度揚げ!


しゅわしゅわ、パチパチ音を立てながらどんどん黄色くなった身にきつね色の化粧が始まったらいい頃合いである。


またバットに取り出して、別の鍋に砂糖と水、あと少量の蜂蜜、塩ひとつまみを加えて加熱しながら混ぜ合わせていく。

ぷくぷくと泡が立ってきて、とろみがついたら先程のさつま芋と絡めて、お皿に移してから炒りごまをまぶせば大学芋の完成である。


出来立ての大学芋を口に運び、その熱さにほふほふと口を開けては口一杯に広がる甘さに頬を緩める。


コレが熱が冷める事で周りに絡んだ蜜が固まりパリパリになるのも堪らないんだよねー。



◇◇◇



とかやっている間に王様達が来たのだ。


もう、いい具合に蜜が固まっているはず!


険悪なルヴァンと王子をチラリと見たが、二人で凄み合っていて気づく気配はない。

そしてそんな二人を見て顔の色が悪くなる王と、宰相に声をかけるでもなくそーっと、二階に行く事にした。


そう、私は今空気になったのだ。


二階に続く階段を音を立てないように登りきり、台所に向かえば黄金に輝く大学芋が!

下に持って行く前にひとつだけ、そう、ひとつだけ…


と口に運べば噛むたびに"パリ"と音を立ててしっとりしたさつま芋と蜜がよく合う。

結構作ったし、もう一つ…と手を伸ばしたところで背後から暗い影が落ちてきた。


「サーラー」


くっ、折角逃れてきたのに…

ゆっくり振り返れば黒い笑顔をまとったままのルヴァンがそこに居た。


「また一人で隠れて食べるんだね。」


「ち、違うよ、作っておいた料理がちゃんと出来てるか確認してただけで、ほら、味見?」


「2個目も味見なのかな?」


「それは…味が、何だか物足りなく感じて?」


「あんなに幸せそうに食べてたのに?」


「!!いつから!」


「いつからだろうね。」


本当にルヴァンは食べ物の事になると容赦ない。

むーーっと睨みつけるも動じる様子もない。


それどころか口を大きく開けて


「あーん。」


と催促してくる始末。


ずるい。これが"但しイケメンに限る"ってやつか。


羊姿との時に口に放り込んだことはあるけど、あの時とはちょっと違う気持ちになりながら口に運んであげる。


「ん」


「!!」


「美味しい。」


そう言って私の腕を握るルヴァンは、いつもよりも艶やかに微笑んでいた。





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