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招かれざる来訪者②


「サラ、心細い思いをさせてごめんね。アンジェリカ様より口止めされていた件も、今回の事で一部解禁になったから後で話すね。」


「あ、う、うん。」


一部?そして口止め?


顔面蒼白の王と宰相、どうしたらいいのか分からないで困っているであろう護衛。

そんな人達は居ないものの様に、此方に話しかけるルヴァン。


頭が追いつきません。


「と、取り敢えず価格の相談始めましょうか。」


パンっと手を打って提案すれば


「うぬ、価格を決めて早めにお暇しよう。」


「それが宜しいかと」


と嬉しそうに目を輝かせる王と宰相に逃がさんとばかりに


「お二人には、後程お渡しするものも御座いますので早く決めちゃいましょう。」


と笑顔のルヴァン


何だかこの禍々しい空気に慣れつつある自分に驚きつつも、この世界に来た時のことを思えば造作もない事だと気づいた。



話し合いを始めて、ルヴァンと相談していた金額と国としての見解をやり取りしたけど…


頭が痛い。もう一度言います。頭がイタイ。


この王は何を言っているのだろうか。


「余はこの卵を焼いたものは、5000エンくらいが良いと思うぞ!」


「流石は陛下、この国の事をよく理解されていらっしゃる!」


何を言ってるの、コノヒトタチ。

5000エンの卵焼きなんて誰が食べるのよ。


「いえ、此れは簡単な料理ですよ。材料も手間暇も少ないのにそんなに頂けません!」


巻くのには少しコツはいるけど


「しかもマーケットで卵はひとつが100エン位なのに50倍にはならないと思います。せめて卵の倍の値が正当ではないですか?」


勿論、此方の世界での価格であって私からしたら10個で100エンしないのだ。

この王…否、アホのヒゲちょびんは、卵をいくつ使ってるかもわからないだろうし、ひとつしか使ってないと言い切ればいい。


それにレストランや屋台の料金の関係で、ここまでは下げれないと言われるのも想定済みでワザと低い料金を提案はしているのだけど、まさかの50倍…

誰がそんなに高額なもの買うのさ!


その後も金平牛蒡も、鰯の唐揚げも、何もかもがありえないほどの高額の値を言われ、私の中の何かが崩壊しそうだった。

だって、ねぇ。手羽のチューリップ唐揚げと照り焼きハンバーグ、ベーコンのアスパラ巻きに至っては、ハウフロートに住む一般市民の一ヶ月分の給料が飛んでしまう金額を提案されて、目が回ってきた。


この王は、自分の国の国民の暮らしを全く理解していないようだ。


「ひ…王様、大変恐縮ですが、貴方は国民の収入が如何程か理解してますか?」


「収入だと?」


「そうです。そしてその収入がどのように分配されて、どのような暮らしをしているかご存知ですか?」


「余がそれを知る必要はあるのか?」


ちょい待て、なんで知らなくて良いと思ってるの?このヒゲは。無能なの?


「知らないで国を纏めているのですか?」


キッと視線を鋭くさせれば"うっ…"といった気まずそうな顔をさせるが、開き直ったように


「纏めてやってるのだから問題ないだろう。」


と言われた。


アン様、神の加護があっても、私が暮らす国の王がこれでは終わってると思います。

自分は幸せに暮らせるかもしれないけど、これじゃあ、知り合いが不幸になるのが目に見える。


困り果ててルヴァンを見るも、私の気持ちを理解はしていそうだけど何も言わない。


あーでもない、こーでもない、と言うずれた価値観を押し付けられて、抗議していたところでお店の扉が、バーーン、と開かれた。

そもそも外には、店内に入りきらなかった護衛が沢山いるのに。驚きを隠せず音のした先を見つめると、視線の先には銀の輝く髪を一本に結んだ青年がいた。


あれ?

なんだか、見覚えがある…よう…な?


じーーーーっと見つめるが、出てきそうで出てこない。

モヤモヤした思考を整理するも、知っている気がするのに…


そもそも、こちらに来てから二ヶ月半位なのだから、会っていたら流石に忘れないか。

と結論づけて、とりあえず自分の家に来た人なので声をかける。


「すみません、まだお店はオープンしていなくて…」


と伝えれば怪訝そうな顔をした後


「お前のような女に用はない!」


と言い切られた。


何、この超絶失礼な青年は!


沸々と湧き上がる怒りに、頭に血が上っているのを感じたところで思い出した。


「あーーーーー!!!」


あの時の失礼な男!


ついつい指を指して大きな声が出てしまった。

慌てて手を引っ込め、両手で口を抑えるも、もっと機嫌悪そうにされる。

なんで私の家にコイツが?そして、なんで私が睨まれるの?


不満はあるが王の手前穏便に済ませようと、帰ってもらうよう声をかけようとしたところで、ありえない言葉が耳に飛び込んできた。




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