女子会は和洋折衷で③
瞳が溢れんばかりに目を見開き
「凄い…」
と呟くリンランは、出来上がった料理に視線が釘付けで、
「食べよう」
と声をかけても、視線は此方に向けられることはなかった。
リンランにここまで見つめられる料理が羨ましい。
だけど、それはひとえに美味しそう、と思ってもらえた事を表していた。
嬉しいけど、複雑。
「「いただきます」」
と言えば食事が始まる。
取り皿に好きなだけ取り分けたリンランに、
「麻婆茄子は、お好みでコレをかけてみてね。」
と赤く分離した油、所謂、ラー油を渡した。
「かけ過ぎないように、少しずつだよ?」
と注意して渡せば、始めて見る液体をじっくりと眺めてから"ちょい"と数滴かけて恐る恐る口に含む。
かける前に食べたソレと辛味を帯びたソレに驚き、ラー油をかけた時の辛さの方が気に入ったようで全体に回し掛けていた。
私も、すぅーっと全体にラー油を回しかけて口に運べば、かける前よりも少し"ピリ"っとた辛さが、肉味噌と茄子の味をより纏めたように感じる。
そして揚げ焼きした事で少ししんなりとした茄子がトロッとして凄く甘い。
こうなったら
「リンラン、お酒は飲める?」
「少しなら飲めるわよ〜」
「じゃあ飲もう!」
小さな御猪口と日本酒の瓶を持って戻れば、どんなお酒なんだろうとウキウキしている姿が見えた。
用意した日本酒は純米系のお酒で、キリっとした飲み口でスッキリと飲めるものだ。
私は辛口の中華と日本酒の組み合わせが好きだ。
紹興酒でなく日本酒?と思われることもあるけど純米酒ならではの甘さがまたいい味を出す。
御猪口に注ぐ時、見える透明度の高いお酒を見て
「透きとおるようなお酒ってあるのね〜」
とリンランが言うので、此方で透明なお酒は無いのだと知り驚いた。
刻人と知っているのはルヴァンと王族、官僚、役場の人だけだと聞いてるから
「私の地元のお酒なの」
と誤魔化しておくことで留めた。
改めて、御猪口にそっと口づけ日本酒を口に含めば、スッとスッキリした飲み口で口の中のピリリとした辛さは流され、純米酒ならではの甘さが口の中に広がる。
「はぁぁぁぁー」
たまらん!
御猪口で、ちょびちょび飲んでいるとまだイケる、まだイケると飲み過ぎてしまうから注意なのだけど、ついつい継ぎ足してしまう。
始めはどんなお酒かと、様子を見ながら日本酒を飲んでいたリンランもお気に召したようで美味しそうに飲んでいた。
さて、次は叩き胡瓜。
塩味をカバーする様に香るだしの香り。
そして、叩き胡瓜ならではの今食べてると感じるバリバリと言う噛みごたえ、お漬け物文化のある日本人の私にとっては懐かしさの残る一品だ。
先程見たリンランは自分で作った料理の味に大変満足でおかわりしていたようだったけど、私は此処に数滴のラー油をかけて食む。
摩り下ろした生姜や醤油でも美味しいけど、ラー油でピリ辛に仕上げたものもかなり美味しい。
好みはあると思うけどね。
私の食べ方を見たリンランが真似していたが、この食べ方も気に入ったようだった。
さてさて、お待ちかねのガーリックトースト!
それをそのまま一口齧り、口内で広がるニンニクとバターのハーモニー。
こんなのドンドン食べ進めちゃうよ。
前回作った時は自分では食べることはなく、ルヴァンが全てを食べ尽くしたことを思い出し"ふっ"と笑えてしまい
「どうしたの〜?」
と聞かれたので
「楽しいなーと思って」
と答えた。
勿論、それだけではないが、本当の気持ちである。
ガーリックトーストの味に満足して、ブルスケッタを乗せて口に入れれば、野菜の乗せたところは少しだけ、ふにゃっとして来るがそれも良い。
次に、カプレーゼを食べながら差し入れのチーズに驚く。
「凄い!モチッとして濃厚!」
ルーペでモッツァレラチーズに似ていると言われた此方のチーズは彼方の世界の物よりふわっとした歯ざわりで、それなのに噛み進めればモチモしていて濃厚な味わいが口に広がる。
「このチーズどこで買えるの!」
と気迫迫る勢いで問い詰める私を驚いたように見つめた後、確かあれは、と考えながら
「スーランさんのところのだと思うけど…」
と教えてくれた。




