決意の金平牛蒡
指折りの料理を楽しみに食堂に入り周りの人が挙って頼んでいるスープを注文してみた。
メニューの金額は気にしないことにしてみた。
だってスープがかなり高いのだ、日本だったらある程度の金額のメインディッシュを食べられそうだ、この世界の物価についてルヴァンに、聞いてみたけど食事以外の物価はそこまで地球と変わらない気がするんだけど食べ物は全体的に高いみたいだ。
そもそも電化製品とかは無いみたいだけど。
勿論調味料なども無いわけではないみたいだけどとても高い。
だから私の反応は不思議で仕方ない様だった。
これが普通の金額でこれを基準に2年は豪遊しても過ごせる金額をアン様が与えてくれてるとして地球の商品をお取り寄せして過ごしたらかなりの節約になるんじゃないか…
なんて考えてたら湯気の立ったスープが出てきた。
「お待たせ、あら、あんた見ない顔だね?」
スープを運んでくれた女性が声を掛けてくれる
「あの、昨日越してきまして」
「そうかい、この店の料理は絶品だからゆっくり楽しんでいってちょうだいよ」
大きな声で豪快に笑うとニッと白い歯を見せて去っていった。
おぅ、パワフルですな。
少し圧倒されつつも頂きますと言ってルヴァンと一緒にスープを口にする。
人参、とじゃが芋が1センチ角にされていて、玉ねぎを微塵切りにしたスープは野菜の旨味と塩と胡椒のアクセント以外は多分味を付けていないと思う。
きっと玉ねぎを炒めて柔らかくなったところで水を足し野菜を水の状態から煮て柔らかくなったところで塩と胡椒で味を整えたって感じじゃ無いかな?
食べれなくは無いがコレでこの金額は無い。
私はそう感じるが皆んな美味しそうに頬張っている…凄い。
全体的にこの世界の食べ物はシンプルな味付けが多いんだろうか?それとも彼方の世界の料理みたいなのは口に合わないということだろうか?
ルヴァンを見れば美味しそうに食べている。
スープを頬張るもふもふ…可愛い。
じゃなくて、コレは自炊しないと辛いレベルだ。
意識しないでダイエット出来ちゃいそうだけど美味しいものが食べたい。
そしてこの世界の人に彼方の味が受け入れられるならそれを布教したい。
けど食事処を作るには土地や設備に人件費もかかるし難しそうだ。
「あっ!」
家の一階の半分くらいのスペースは其れこそお店をやってもいい様な造りだった
お弁当屋さんとか?否、お弁当はここ色んな種族の方が住んでる様だし食べれない物とか(魚顔の人が魚とか鳥人の人が鶏肉とか)入ってたら買ってもらえない気がする。
それに地球でもお弁当文化は元来日本の文化だといっていた気がするし此処でもお弁当文化はないかも知れない。
それなら、好きな物を好きなだけ買えるお惣菜屋さんは如何だろうか?
うん。良い気がする!
まずはルヴァンに私の料理を食べてもらって感想聞いて、受け入れてもらえそうなら提案してみよう。
そうしよう。
そうと決まればスープを完食せねば、食材に失礼だ。
意を決してスープを食べきればルヴァンは安心した様子だった。
「ご馳走様でした!」
ルヴァンが食べ終わるのを待ってお会計をして家に帰るや否や早速台所に向かう。台所は2階にあって入った瞬間に驚いた。
「コレ…」
大きくピカピカなシンクに三口コンロ、電子レンジにオーブン、大きな冷蔵庫それから炊飯器も!
こちらの世界では電化製品は無いって聞いてた気がしたけど…
「アンジェリカ様がサラ嬢が使いやすい様にとサラ嬢の居た世界のキッチンと道具を一通り揃えてくださりました」
アン様、ありがとうございますッ!
感謝感激雨霰です!
けど肝心の電気は通っているのかしら?
コンセントらしき物が見当たらない…
とりあえず空っぽの冷蔵庫に頭を突っ込んで見れば
「冷たい」
凄い!けどどんな仕組みなんだろう?光熱費とかの物価も分からないし。
まあ2年は何とかなるしいっか。
「ルヴァンに食べて欲しい物があるんだけど、食べれそう?」
「サラ嬢の世界の料理ですか!是非!」
目をキラキラさせながら食べたいと訴えてくるもふもふ、もふもふ…可愛い…!じゃなくて
「少し待っててね」
気を引き締めてスマホに必要な物を打ち込んでいく。
お米は勿論、牛蒡に人参、白ゴマに醤油、味醂、胡麻油に砂糖。
おっと鷹の爪を忘れてた。
「よし、始めますか。」
髪を纏めて手を洗い準備はオッケー
牛蒡をタワシで洗って土を落とし斜め切りにしてそれを千切りにする。
ささがきにしても美味しいけどこの細い牛蒡の方が食感だったり味の絡まり方が私の好みである。
千切りにした牛蒡をボウルで水に晒し灰汁を抜いている間に人参に取り掛かる。
人参も皮を剥いて牛蒡同様に千切りにする。そしたら鷹の爪を輪切りにして下準備は終了。
フライパンを熱して胡麻油で鷹の爪を炒めて香りが出てきたところで水を切った牛蒡と人参を投入!
ジュージューといい音を立てている。
さっと火を通して醤油と味醂を入れて汁がなくなる前に砂糖を入れて汁気がなくなったらお皿に盛り付けて白ゴマを塗して出来上がり!
この甘辛い香りが堪らない、そして食欲を唆る。
炊き上がったご飯で塩むすびを握って一緒にルヴァンの前に出したら零れ落ちそうなほど目を大きく開いて料理を見てる。
「さーっと作ったからコレだけだけどもし必要なら汁物も作ろうか?」
「いえ、大丈夫です。とても美味しそうな香りがして早く食べてみたくて…」
最後の方は恥ずかしいのか少し尻窄みになっているがルヴァンが良いならコレでいいか。
「なら食べよう。もし金平牛蒡が少し辛かったら塩むすび食べてね。」
「はい」
「「頂きます!」」
ルヴァンはお箸を使えなさそうだったのでフォークを渡してあげると金平牛蒡に手を伸ばした。
口に運んだのを見守っているとワナワナと震え出した。
「ルヴァン?」
もしかしてお口に合わなかった?
やっぱりこっちの世界の人(?)はシンプルなものの方が良かったのかな。
少し心配になりながら様子を伺っていると
「サラ嬢、コレは…とても美味しいです!」
凄い美味しいと口いっぱいに頬張りながら歓びを一生懸命に伝えてくれる。
「ルヴァン、私お惣菜屋さんを開こうと思うんだけど如何かな?」
「お惣菜屋さん?」
総菜屋という響きに耳馴染みがない様子だ
「うん。この金平牛蒡のようにいくつかの料理を作って好きな物を買って帰ってもらって家で食べてもらうの。」
「屋台のようなものですか?」
「うーん。近いかな?マーケットで野菜を売ってるでしょ?それを買って家で調理して食べる。けど初めから調理されている料理を買って家で食べるっていう感じかな」
「成る程、サラ嬢の料理ならすぐに人気になりそうです」
「ただ私はこの世界の物価がわからないから料金を決めるのが難しいの、ルヴァン手伝ってくれる?」
「勿論です!」
まあるい、もふもふな羊のルヴァンはそう言った事は得意です!おか任せくださいと胸を張りながら又食事を始めた。その体のどこにそんなに入るんだってくらい食べてるけど…可愛いから許す!
頬張る姿に目を細めながらルヴァンとの食事は楽しく進んでいった。