7話 小学校入試
運動会の衝撃から2年とさらに半年、マサルも満6歳、次の段階に進む年齢となっていた。体の成長は順調、毎年行われる運動会という茶番にうんざりしながらレベルの高い教育を待ち望んでいた。
「勝、都内で一番レベルの高い小学校…でいいのね?」
「うん。母さん、僕はもっと勉強がしたいんだよ!だから、お願い!」
勝はこの数年で日本の基本的な地理情報を理解していた。首都である東京に住んでいることも理解していた。1番熱心に勉強していたのは民主主義についてだった。アベルでは絶対王政しか存在せず、民衆が国の行く末を決定する風習など存在していなかったのだ。だから非常に興味をもっていた。園長や母親に少しずつ質問を続け、政治に携わるためにはどのような教育を受けなければならないのかの道筋を考えていた。
「勝なら、幼稚園入試も受かるでしょうね。本当に、世話のかからない自慢の息子だわ…」
母さんが最近悲しそうな顔をすることが多くなった。勝は気づいていたが、それよりも好奇心が強く、勉強を優先していた。
そして、小学校の中で一番レベルの高い聡知小学校の入学試験の日、内容が算数、国語、知能試験だった。結果としては勝にはどれも簡単で、全受験者の中でトップ合格だった。自宅から小学校までは電車で30分、母は登校日までに何度か一緒に行って練習してくれる。本当にいい母親だと感じていた。合格した日はパーティだった。
「母さん、ごはんがすごい豪華!お祝い??」
「そうよ!なんといっても自分の息子がトップの小学校に入学するんですもの!鼻が高いわ!」
久しぶりに見る母の笑顔だった。よかった。
「将来は母さんを楽させてあげるから、期待してて!大好きだよ母さん!!」
母さんが抱き着いてきた。
「まさるううううううううう。」
泣いていた。いつもだったら痛いので避けるが、今日くらいはいいか。
それにしても、彰浩は今日も出張と言っていた。まあ、合格通知が届いた日も
「調子にのるなよ?世の中なあ、頭がすべてじゃない!わかってんのか、勝!」
と怒声をぶつけてきたし、いない方が気持ちよくパーティできそうでいい。
ピンポーン!
あ、アラームが鳴った来客か??
母さんが応じた。
「はーーい?どちら様ですか?」
「みさきです!」
お、みさきか、今日は母さんが彰浩いないってことで美紀さんをお誘いしていたのだった。2人が入ってきた。みさきの家から我が家までは徒歩10分、意外なほどご近所さんだった。
「勝おめでとおおおおおおおおおおおお!」
みさきが抱き着いていた。みさきも聡知小学校に合格していた。本当はどこでもよかったらしいが、勝が聡知を受験すると聞くと勉強し始めたのだった。
「みさきもおめでとう!これからもよろしくな!」
「うふふ、勝くん。みさきのこと、永久にお願いね。」
「ま…ママ!!!もおお!いつもそういうこと言うんだから!」
みさきがほほを膨らませる。長いことみさきと居たからだろう。最近ではみさきをかわいいと思うようになっていた。これも転生の影響なのか…とにかく、パーティは始まった。
「うふふ、勝くんのおかげでみさきも聡知に入学できたのだと思うわ、ありがとう、勝君。」
美紀さんが頭を撫でてきた。素晴らしい。ほのかに香るバラの香り…優雅だ!
「あ!ママ!勝にそういうことしないで!すぐ勝がエッチな表情するんだから。勝のエッチ!ふん!」
みさきがそう言ってそっぽを向いた。いつものことだ。
「み…美紀さん、私の勝をあんまりかわいがらないでください!」
「母さん、母さんは世界一の僕の母さんだから、心配しないで!」
胸を張ってそういってみた。
「まさるううううううううううううううううう」
また抱き着いてきた。今日は泣きすぎじゃない?
とにかく楽しく会話をしながらパーティは続いたのだった。