嫉妬してくれて、ありがとう
「アイツ、仕事ミスしたってよ~。調子に乗って、出来もしないことに首を突っ込んだりするから、そういう痛い目に逢うんだよ。本当に、迷惑な奴だ。」
A氏は、いたってポジティブな性格をしており、任された仕事を、意欲をもって処理していくその姿勢は、担当の上司からは、高く評価されていた。
そして、日々、優秀な人の仕事に参加しては、質はともかく、同じスピードで自らの役割を果たしていた。
さぞや、同期や長年給料の少ない上司からは、生意気に見えたにちがいない。
誰もが、自分にあと少しの勇気があれば…
そして、誰もが結局は遠慮してしまうグレーゾーンに、どんどん踏み出すのだから。
さて、世の中には、完璧な人間は存在しない。当然、A氏も失敗をしてしまうのは、仕方がないことだろう。なにも問題はない。
ただ、普通の人より圧倒的に陰口を言われただけだ。
当然だ。生意気な奴がミスを犯したのだから。今までの不満が爆発するのは、当然のことだろう。
家に帰ったA氏は、泣きながらこういった。
「ありがとう」、と。
社長の次に、多く給料を貰っていた担当の部長は、全て分かっていることだろう。
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