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あなたに捧ぐ―――  作者: 真田 蓮
1/2

1冊目

 


 私が最後に人を好きになったのは、高校3年の春。


松浦まつうら あゆむ」というクラスメイトで、サッカー部のエースだった。意外と読書家で絵がうまかった。笑うと八重歯が見えて可愛いと人気の男子だった。

 そんな彼と私の接点は、図書室にあった。ただのクラスメイト、ファン、そんな関係ではなかったと思う。


 高校を卒業し大学に進み、そこをも卒業した私は、母校の司書さんになった。彼と私の接点である図書室。前と変わったところは、漫画が増えたこと。


 今日は図書委員の子達と書庫の整理を行う予定なので、先に軽く始めておこう、思い出に浸りながら。







 彼は高校3年の時、図書委員の私に、よく頼み事をしていた。部活で忙しい彼なら仕方のない事だったのかもしれない。


「加藤さん、また頼んでも良いかな?」

「うん、次は何の本?」

「前の続編なんだけど…あ、前の覚えてる?」

「覚えてるよ、ミステリーのでしょ?」


 昼休みも先生と部活の事で話したりしていた彼は、放課後なんて特に忙しく、図書室に行けなかった。だから、図書委員の私に本を代わりに借りてもらっていた。


 部活引退後は、図書室に通うようになっていた。私も受験勉強やら読書やら委員会やらと、図書室に入り浸っていた。これが私と彼を繋いでくれていた。

 何気ない事を言うことも、得意科目を教え合うことも、次第に増えていった。









「加藤先生、こんにちは!」


 図書委員の子達がやって来て、一緒に書庫の整理をしていると…


「ねえ、これってさ…」

「え、本当だ、そうだよ絶対!」


 何やら騒がしい。一体どうしたのだろうか。


「加藤先生、これ、」

「何?」


 彼の好きだったミステリーもののシリーズの最終巻、それを私に見せてきた。


「この本、開いてみてください。」

「あ……これは、手紙?」


 封の開いている手紙を「ごめんなさい」と中を見る。

 そこには「加藤さんへ」と始まる見覚えのある字の物だった。この字は、松浦くんの物だ。全体的に払い気味の右上がりの文字。


「加藤先生の事だよね、きっと。先生、ここ出身でしょ?」

「…うん」



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