表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

終われよ、今日!!

どうも、山石悠です。ようやく『長谷川辰巳の日常』シリーズの続きを出すことができました。


今回のテーマは、『繰り返される一日』ですっ!!

もはや日常じゃないっ!! って、ツッコミを入れたい方は、どうぞご自由に。今さらなので、気にしていません。


後、今回は僕が書いている別作品の登場人物を出しました。……しかたなかったんです。出さないと、どうやって終わらせるのか分からなかったんだもん!!


では、お楽しみいただければ幸いです。

「……なあ、メリー。今日は何日だ?」

「今日? 確か、二十六日よ」

「……そうか」

「どうしたの?」

「いや、別に……」


 俺はそれだけ言って椅子に座った。メリーは不思議そうな顔をしているが、そんな顔をしたいのはこっちなんだよ、と思う。……いつまでも繰り返す、十一月十六日。これは、つまり、そういうことなんだろうと思う。


「……繰り返される一日、って奴だよな」

「本当にどうしたの、辰巳?」

「本当に何でもないんだ」


 今のメリーには話せない。()()()()メリーになら話せるのだが……。


「さて、飯食って、さっさと学校に行くか」


 俺はゆっくりと思い返す。その事実に気づいたのは三十日前だった。……並列思考を使っているので、きっちり覚えている。だが、何時から繰り返しているのかは分からない。最初から分かっていたのか、ある時にふと気が付いたのか。

 とにかく、俺はいろいろ考えながら、繰り返しが終わる方法を探している。これまでの約一か月分(日付自体は変わっていないので『約一か月』とは言えないのだ)は、俺の行動によって影響が出るのかについて調べていた。


「そういえば、今回は地の文が多いな」


 地の分に口出ししてはいけないな、長谷川君。


「あ、作者」

「……辰巳、どこか打ったの?」

「え? あ、いや、大丈夫」


 しまったしまった。地の分に口出しできるのって、俺以外なら、中学の時に仲良かった(やしろ)瑠亜(るあ)(あだ名はシャルア)ぐらいだったな。……まあ、高校になる前に交通事故で死んだけど。


「ん、ごちそうさん」


 俺は飯を食い終わると、残りの準備も済ませて家を出た。


「やっぱり、晴れか」


 同じ日なので当り前ではあるのだが、天気はずっと晴れだった。と言うか、基本的に俺の行動によって世界は変わらないのだ。


「所詮、人一人が行動を変えたくらいじゃあ、何も変わらないってか」


 世界の心理を悟ってしまったような感じがするが、きっと、気のせいか勘違いだろう。


「さて、そろそろ本格的に謎解きするか……」


 この一か月分の間に、たくさんの情報が入った。とりあえず、整理もかねて箇条書き形式で思い返そう。


・前回以前の記憶は引き継ぐことができる。しかし、忘れてしまう可能性は否定できない。

・俺がどんな行動をしようとも、周りに影響は出ない(学校を休む、トン松田と戦闘などから、メリーとデートなんかもした)。

・移動できるのは、この街の中だけ。街の周りには不可視の壁がある。だが、通れないのは俺だけのようだ。

・十五日を過ぎたころに机に入っていた紙を見る限りだと、この繰り返しの原因を捕まえて『捕まえた』と言えば終わるらしい。


「……誰なんだ、この繰り返しの原因は」


 俺は、歩みを進める。この件にはおかしいことが多すぎる。なんというか、俺に都合よく世界が回っている気がする。特に顕著なのは、メリーと松原だ。あいつらの性格が変わりすぎている。あまりに俺の好みすぎて、その……


「長谷川くーん! おはよう!」

「うわっ!?」

「……どうしたの?」

「い、いや、何でもない。おはよう、松原」

「どうかしたの? いつもなら後ろからでも気が付くのに」


 考えていた人物が出てきたことに驚いていた俺は、正直にそのことをしゃべってしまった。


「いや、松原のことを考えてたら、本人が出てきたからな……」

「え? 今、私のことを考えてたって……」

「あ、ああ。松原のことが気になってな。松原がすごくタイプだな、と……」

「そ、そうなの……」


 松原は恥ずかしそうにうつむいた。……しまった。なんか俺、告白したみたいになってないか? いや、確かに今の松原は好みなんだが……。


「あ、いや、告白ってわけじゃないからな!! いや、タイプなんだけど、えっとその……」

「あ、うん、分かったから。分かったからね。落ち着こうよ、うん。とりあえず、いったん落ち着こう」


 そ、そうだな。落ち着け俺。ビークールだよ、ビークール。冷静になるのは、ビークール。長音を取れば、ビークルだな。


「落ち着いてないよ!? 長谷川君、ものすごく精神が錯乱してるよ!?」

「嘘だっ!!」

「それを言うのは、私の方がいいと思う!!」

「嘘だっ!! ……大事だから二回言いました」

「言わなくていいよ!! 叫んだ途端、無表情でそんなこと言わないでっ!!」


 ……ふう、落ち着いたぞ。だが、まあ、少し弁解しておこう。


「フッ、ここまでのすべては演技だったのさ」

「……苦し紛れな言い訳、お疲れ様」


 やめてっ!! そんな憐みのこもった眼で俺を見ないで!!


「……まあ、おふざけはこのくらいにして、学校に行こう。遅刻しちゃうから、ね?」

「そうだな。早く行こうか」


 俺は松原と談笑しながら学校に向かった。




「それで、ここは……って、長谷川。俺の授業はそんなにつまらんか?」


 トン松田の国語の授業だ。つまらないというか、もうかれこれ二十回は聞いているんだ。もう、覚えてしまったわ。


「ほぅ……なら、暗唱してみろ」

「『♪キーンコーンカーンコーン♪』『これから授業を始める。教科書の百八十ページを開け』『センセー、百八十ページってもうやりましたー』『あ、そうか? ちょっと待て、確認するから……』」

「……長谷川、もういい。そんな声マネをつけてやるな」


 なんだ、もう終わりか。せっかく、『蝶ネクタイ型キャンディー型変声機』を用意したのに。分かりにくすぎるので、説明を加えると『蝶ネクタイ型キャンディー型変声機』は、『蝶ネクタイの形のキャンディーを模した変声機』のことである。


「まあ、話を聞いていたのは分かった。だが、聞く態度を考えろ。いいな?」

「イエッサー!!」


 とりあえず、やる気なさげに返事をした。これで、どんな反応が返ってくるか?


「長谷川。後で、男同士で話し合いがしたい。生徒指導室まで来てくれるよな?」

「……考えておく」


 ……やはりだ。トン松田もおかしい。どうやら、俺の周りにいる人間がおかしくなっているようだ。何者かが、俺の周囲の人間を変えている。なら、犯人も俺の近くにいるのではないか?




「……なあ、お前ならどう思う?」


 俺がいるのは、先ほど話していた社瑠亜の墓だった。あいつは俺の親友(お互いに恋愛感情は全くない。あいつも俺も)だと思っている。こいつなら、答えはともかくヒントくらいはくれるんじゃないかと思ったのだ。


「この繰り返しを終わらせるヒントをくれよ、シャル!!」

「……サタ君? もう無理……って、ハセ君!?」

「シャル……シャルなのか!?」


 まさか、本人が降臨するとは思ってもみなかった。それはどうやら、向こうも同じらしい。


「え? なんで地球にいるの? さっきまで、ミネルバの森にいたはずじゃ……」

「ミネルバの森? なんだそれ?」

「えっと、私と同じようにこっちに転生した頭脳チートさんことミネルバさんの作った森だったはずだけど」

「……こっち? 転生? お前、いったい何してるんだ?」

「えっとね、今は、異世界に転生して女神をやってるんだー。……半年くらい前に、クビになったんだけど」


 俺は驚きつつも、こいつならと納得していた。そして、クビになった理由に予想が付いたので、あえて言ってやった。


「お前、どうせふざけすぎてクビになったんだろ?」

「そうそう!! さっすがハセ君!! サタ君みたいにすぐに分かってくれるなー。……って、サタ君がハセ君みたいに分かってくれるのか」

「サタ君、って言うのは、向こうの俺みたいな奴か?」

「あ、そうなんだよ!! サタ君とも楽しくやってるよ!! 『《勇者》兼《魔王》』だなんて、面白い話だよねー!!」


 シャルも、向こうで楽しくやっているらしい。……って、俺が訊きたかったのは、そこじゃないんだ。


「なあ、質問があるんだが、いいか?」

「え? いいよ?」

「俺さ、今、繰り返される一日を体験してるんだ」

「へー……時属性の魔法? いや、幻属性という可能性も……」

「……たぶん、魔法じゃないぞ?」

「え? あ、ごめん。向こうにいたら、そういうことがよくあったから」


 シャルはシャルなりに真面目に考えてくれているようだ。俺も何か情報を渡し続けてみよう。


「この街からは出られないんだ。後、俺が何をしても周りの動きは基本変わらない」

「それって、話がかみ合わなくなることもあるってこと?」

「いいや。大筋が同じで、繰り返した一日が変化していくことがない、ってことだな」

「ああ、変化はその場限りのものってことね。さらにヒントになることは……私の召喚?」

「シャルの召喚?」

「うん。私ってクビにはなったけど、一応女神のまんまなんだよね。『秩序の女神シャルア』」


 俺はそれを聞いて噴出した。だって、シャルが女神なのは、まだしも……


「秩序の女神とかねえよ!! それに、あだ名がまんま名前かよ!!」

「だって、考える暇もなかったんだからね!! ……って、そこじゃなかった。私の召喚についてだった」

「そうだったな。シャルの召喚がヒントなのか?」

「うん。ハセ君には、魔力がないんだ。なら、私を呼び出す方法っていうのは、一つしかない」

「何?」

「ほら、こっちでもよく言うでしょ? 夢で神様のお告げがあった、って。それとおんなじ」

「……これが、夢ってことか?」

「そう。これは、誰かが見ている夢なんだよ。そこにハセ君の意識が入り込んだか……」

「おい、シャル?」


 シャルが何かをしゃべっているのに、声が聞こえない。向こうも同じようで、何かを叫んでいる。俺達は、すぐに『視線通話』を使う。


「(どういうことだ?)」

「(もう、時間切れみたいだよ。お別れなんだ)」

「(向こうに帰るのか?)」

「(うん。でも、また来るから)」

「(ああ、待ってる)」

「(今度は、現実出会いたいね)」

「(そうだな。今度、サタ君とやらを紹介してくれ)」

「(うん、いいよ。その代り、ハセ君の方も、メリーちゃんを紹介してね)」

「(な、なんで知ってるんだよ!!)」

「(女神様に不可能はないんだよ!! どやあ!! ……エッヘン!! の方がよかった?)」

「(どっちでもいいっての)」


 俺がそういうと、完全に姿が消えた。俺は少し笑いながらシャルに別れを告げる。


「またバカ騒ぎしようぜ」


 ……さてと。シャルの話は最後まで聞けなかったが、言いたいことなんてもう分かってる。それにしても、犯人がこんなに近くにいるとは思ってなかったぜ。俺は、犯人の腕をつかんだ。


「捕まえた…………捕まっちまった」


 この繰り返しの犯人。それは、俺自身だったのだ。これは、この日常が終わらなければいいと思った俺の作りだした世界だったのだ。世界は、夢は崩れ去っていく。いつまでも、続けばいいと思うものじゃないな。俺は、そう思った。


「終わるからこそ、愛しいんだ。儚いからこそ、大切にしたいんだ」


 つまり、いつも幸せなことをしていたら、そのありがたみが無くなっちまうってことだ。


「止まった針を再び動かす、か。……終われよ幸せ! 感じろ幸せ!」


 その言葉を合図に、この世界……夢は消え去った。




「……夢、か。分かっていても、残りたいと思ってしまうな」


 いつまでも、この夢が続けばいい。そんなことを想いたくなる時がある。だが、俺はきっと夢を壊す。そう、今回のように。


「たっつみー!! おはようのキスをしましょう!!」

「誰がするか!! いい加減にしろ、メリー!!」

「えー。分かってても、辛ーい」


 俺の目の前にいるメリーは、相変わらずだった。俺は、十日目のことを思い出してメリーの肩を持った。


「……おはよう。今日も、綺麗だよ」


 そして、頬に軽く唇を触れさせる。これで、しばらくメリーは顔を真っ赤にして止まってるだろう。


「さーて、今日も一日、バカ騒ぎしますか」


 カーテンを開けて、どこまでも晴れ渡っている空を見る。今日もいい天気。俺は、一言つぶやいた。





 終われよ幸せ! 感じろ幸せ!

どうでした? 今回出てきたのは『勇者は…………魔王?』の女神シャルアさんでした。実は、辰巳の親友……だったそうです。


今回の終りは、ご覧の通り『夢オチ』でした。今回は、『夢オチ』が使いたかったので、こんな話を書きました。でも、「ハッ!! ……夢か」では、面白くなさそうだったので、こんな形にしました。でも、他作品の登場人物出さないと終われないなんて、僕もまだまだです。レベルが足りません。経験値をためないと。


と、言う感じでした。次からも、アイデアが出次第、書いていきたいと思います。そろそろ新ヒロインでも出すか? という考えが頭をよぎってます。


それでは、次回……が、あれば、楽しんでいただけると幸いです。


See you next time!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ