あっ!! 消しゴム……
どうも、山石悠です。
初心に帰る、という言葉をふと思い出したので、長谷川辰巳の日常シリーズの1作目「教科書忘れた」的などうでもいいことを無駄に重要に書いてみました。
今回は『テスト中に消しゴムを落としたのに、監督の教師が気がつかない』です。
ありますよね? テスト中に消しゴムを落として、手をあげるんだけど監督の教師がこっちに気がつかない、ということ。
今回は、そうなった長谷川君が頑張る話です。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
カリカリと字をかく音だけが聞こえる。俺は右手に持っているク○トガのシャーペンを唸らせ、解答用紙に答えを記していく。
「(最後の一問か……)」
俺はちらりと顔をあげた。時計は残り20分を示しており、見直しの時間まできっちり取れそうなことに安心する。勉強は嫌いだが、テストでいい点を取っておけば、日常の行動に対する監視の目が軽くなるのだ。俺は、最後の一問に答えを記していく。
「(えっと、確か……)」
俺は答えを記した。だが、同時に違和感を覚えた。回答をじっくり見て違和感の原因を探す。そして、気がついた。字が違う。漢字を書き間違えてしまっていたのだった。俺はすぐに消しゴムをとろうと手を伸ばし……
コンッ
「あっ」
小さな声が漏れる。周りの奴らにも聞こえるかどうかの声量だったのだが、おそらく届いていないだろう。俺は机の下を見た。そこには、ひじが当たって落ちてしまった消しゴムがある。残念なことに俺の消しゴムはあれ一つだ。シャーペンの消しゴムもないので、俺は字を消す手段がない。俺はすぐに手をあげた。物を落としたら手をあげる。これはテストの常識だ。しかし、いくら待っても反応がない。
「(おい? おーい!! センセー!!)」
監督の教師は教卓で何かの作業をしている。俺がいくら手を振っても全然気がつかない。時間は刻一刻と迫っている。俺は、とりあえず手をあげながら見直しをすることにした。
「(一問目……二問目……三問目……)」
丁寧に確認していく。並列思考を使用しているので、一度で数十回分の確認を行えている。時間の短縮になるので、なかなか便利な能力である。
「(……最後)」
俺は最後までの確認を終えた。基本的に解答にも並列思考を使用しているので、間違えることはほぼ無い。だが、たまにミスが起きるので今回のようなことをきっちりしているのだ。とりあえず、最後から一つ前までに間違いはなかった。ということは、最後の問題を直すことれば100点だ。
「(監督ぅぅぅぅ!!!!)」
いくら手をあげても反応しない監督。あまりのウザさにもう限界を超えた。俺はあげていた手を下す。そして、息を吸って…………吐いた。
「よしっ!!」
周りに聞こえるかどうかの大きさで気合いを入れた。これから、俺のミッションスタートだ。コードネーム。ドラゴンスネーク、行くぜ!!
「(よっ)」
俺は靴を脱いだ。そして、靴下をはいた状態の足を上の方に持ってくる。そして、眠っているかのような体勢をとってから、靴下を脱がせた。
「(よしよし)」
裸足になった足を床に這わせる。床の冷たさが体温を持った俺の脚に伝わる。冷たい。俺はそのまま消しゴムの落ちていた出ろう場所を探す。右……左……前……後……
「(あ、あった)」
思わずにやりとしてしまった。俺は指先を使って、消しゴムをつかんだ。消しゴムはそれなりに使っていたので、大きくない。足の指で十分つかめるものだった。俺は消しゴムをつかんだ足を靴下を脱がせた時と同じように上げる。そして、手で消しゴムを回収。ゆっくりと靴下をはかせる。ここで重要なのは、あくまで眠っているかのように見せかけることだ。
「(……終わった)」
俺はさも今起きたかのようにのろのろと体を起こした。そして、消しゴムを手に答えを書きなおす。
「(……ミッションコンプリート)」
ほっと息をついて再びテストを見直ししておく。多分、これで100点は確実だろう。俺はやりきったという喜びを抱いてテストを終えた。
さて、それからのことを少しだけ話そう。
結局、あのテストは100点だった。俺はそれ以外の教科もすべて100点だったので、学年トップで間違いないだろう。一人だけかどうかは知らないが。
そして、後で聞いたのだが、あの監督教師は机に向かって愛娘の可愛さについてレポートをかいていたらしい。本人からの情報なので間違いないと。
俺は、キレる前に呆れた。テストの丸付けでもしているのかと思えば、娘の可愛さについてのレポートだ。あーだこーだ言う前に、失笑しか出てこない。まあ、あの教師はいつも娘について語っていた。確か……
「ああ!! 愛実は僕のエンジェルだ!! 貴様等には写真も見せんし、ましてや会わせもせん!! あの可愛さの虜になられたら困る!!」
……だったと思う。その愛実、というのが監督の教師の娘だろう。嫁について語っていたのは覚えているのだが。何でも、高校の時に出会ったのだとか。
まあ、要するに、今回の件は親バカによるものだったらしい。変にシリアスな話よりはずっとましだろう。なんて言ったって、この話はコメディーでギャグなのだから。
「……ああ、おもしれえ」
この学校は面白い。生徒も教師も個性的で飽きない連中ばかりだ。
…………だが、トン松田。貴様は例外だ。さっさと死ねばいい。
「ほぅ、長谷川。そんな事を言ってくるのは貴様だけだ」
「げっ!! トン松田!! いつの間に!?」
「いつでもいいだろう? これから俺と話し合いをするお前に、そんなこと関係あるまい」
俺の背中を冷や汗が伝う。そして、それが下まで落ちた瞬間、俺は全力で逃げ出した。
「待てええ!! 長谷川ああああ!!!!」
「誰が待つかああああ!!!!」
――――ああ、この面白い生活。これが、いつまでも続けばいいのに。
俺は少し笑顔になりながらそう思った。
…………その願い、叶えてやろう。
どこかから、そんな声が聞こえた気がした。
はい。すいませんでした!!
最後は出来心で入れました。特に意味もない!! あからさまな伏線を張ってみたけど、多分回収されません。てへっ☆ やっちゃったぜ☆
まあ、それはそうと、消しゴムのとり方。あれは僕自身がやっている方法です。ああいう状況になった時は、試してみてください。
それでは。
see you next time!