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教科書忘れた

どうも。授業をしている時に教科書を眺めていたらなんとなく思いついた話です。


くだらないなと思うかもしれませんがそこは笑って流してください。


それでは、お楽しみいただけば幸いです。

世界中の時が止まった。


……いや、ほんとに止まったというわけではない。ただ、俺がそう感じていただけだ。そう、つまりは思考が止まったということだ。


なぜそんなことになってしまったのか。理由は至極簡単、単純明快。ズバリ、教科書を忘れたからだ。日本の学生さんたちにはよくある忘れ物。なんでもないことだろう?なんて思う人も多いはずだ。だが、俺の学校、特に俺が教科書を忘れた教科では話が別だ。その教科の教師である、松田はものすごく厳しい。何にって、忘れものにだ。忘れたことがばれれば、一時間は説教して反省文を原稿用紙二十枚は覚悟するべきなんだそうだ。これでも少ない場合のものだそうだ。実際は、もっと長いし多い。


……と、まあ、この俺、長谷川辰巳はものすごい失態を犯してしまった。こんな時はどうするのか。それは勿論、隣のクラスの奴らに借りるのが一番いいだろう。それじゃあ、早速…………


♪キーンコーンカーンコーン♪

「さあ、みんな席につけ。授業を始めるぞ」


はは。今何があった。俺は今認めたくないものを見ている。そうだよな、まだ教科書を借りてないのに松田が来るわけが…………


「日直、号令」

「きりーつ。れーい」

「お願いしまーす」


程よく伸びた号令が聞こえる。どうやら現実らしい。試しにほうを抓ってみようか。……いたい、いたい、いたい。そうか、これは現実だったのか。


……それじゃあ、どうする! そんなの勿論、松田に教科書を忘れたことをばれないように一時間をやり過ごすしかないだろ!!


こうして、俺のミッションが始まった。



「えー、この話の冒頭の部分「あたしとあなたは同じ存在だった。」この部分の意味は……」

カツカツ


松田の担当は国語だ。そう、教科書を読んだりするイベントがある国語なのだ。数学や理科ならば計算をしたりでなんとかなるかもしれないが、国語はそうはいかない。教科書を見ないで本文を言うなんて芸当はできないので、是が非でも回避したい。


「えー、八十ページの三行目から長岡読みなさい」

ガタッ

「あなたの血はあたしの血になる。あたしの血はあなたの血になる。だから……」


斜め前にいる長岡が教科書を読み始めた。こうして誰かが教科書を読んでいる時、松田は教室をぐるぐると廻っている。この時が始めの難関だと思った。


トントントン……と、松田の足音が規則正しくなりながら此方へ向かってくる。今の気分は何処かの組織に潜入しているスパイのようだ。コードネームは「ジャック」にしようか。名字も付けていいなら「バウアー」にする。なんでスパイなのにその名前なんだよ! と突っ込みたくなるかもしれないが、あえて置いておくようにしてもらいたい。


…ま、まあ、それで今俺は急遽広げたノートに長岡の読んでいる話を聞いて思ったことを書いている。そんな時、松田はおれの横でピタッと止まった。ビクッっと飛んでしまいそうになる体を押さえて、ノートに続きを書く。松田は俺の方を見ている……ような気がする(実際に松田を見ているわけではないから分からないのだ)。


背筋が凍る、というのはこういうことを言うのだろうか。教室の前にある時計が一分おきに鳴らすカチッっという音と長岡が教科書を読む声だけが教室に響いている。他のクラスメイト達は身じろぎ一つしないで、教科書を見ている。松田は俺、ではなく俺が書いているノートをじっと見ている。おそらく教科書を見ていないから気になったんだろう。俺は理科でも数学でも何でもいいから教科書を開いておくべきだったと後悔した。松田はしばらくして顔をあげ口を開いた。


「長岡、もういいぞ。ありがとう。それでは、ここまでを聞いた感想を長谷川、言ってみろ」


俺は心臓が止まった。今回は本当に止まったと思う。そして、俺はノートに感想を書いていたからこんなことになっているのだと気がついた。そして、ノートを持って書いてあることを読む。


「俺は、話を聞いてて「あなたの肉を食らった……」というの部分はたぶんあたしがあなたのことを………」


俺は教科書のないことがばれないように、おどおどしないで堂々と言ってやった。松田やクラスメイト達はなるほどという目で此方を見ている。いつもはおとなしくして「○○さんと同じ」としか言ってこなかったからな。こういったことを言うのがめずらしいと思ったんだろう。


一通り言いきって席に着く。松田は満足したようで教卓へと戻っていった。俺はばれなかったことにホッとしていた。これだけもことを言ったのだ。もう当てられることはあるまい。ふう、と息をつきながら時計をちらりと見る。今の時刻は十時三十五分、授業は五十分までなので残りは十五分だ。


もう少し、もう少しと思いながら松田の話に耳を傾ける。今ほどまじめに授業を受けた覚えはない。今、松田は話の解説をしている。


俺は、松田の話を聞きながらちらちらと時計を見ている。一分ごとに動くはずの分針がなかなか動かない気がしていらいらしつつも刻一刻と時間は過ぎる。


時計が四十九分を示した時、あと一分と喜びそうになった。いや、喜ぶには早い。あと一分残っているのだ。たかが一分、されど一分。なんて言葉を頭にちらつかせながらチャイムが鳴るのを待つ。秒針がないのであとどのくらいかは分からない。だが、もう終わる。俺は松田にばれずに一時間を過ごしたのだ。きっと俺は友人たちから死地から生き延びた勇者と呼ぶだろう。


俺は愉快な妄想をしていたその時。


♪キーンコーンカーンコーン♪


ついになった。チャイムが鳴ったのだ。俺はやった。松田は話をやめて日直に号令をするように言う。俺はもう日直の号令など頭に入らなかった。だが、もう条件反射になっている号令をした俺は叫んだ。そう、叫んでしまったのだ。俺はこの時ほど自分を恨んだことはない。


「やったー! 教科書忘れたのがばれなかったぜ! ひゃっほー!」


俺はこう叫んだ。授業が終わった瞬間に。今の言葉はこう変換することができるはずだ。


松田がまだ教室にいるときに叫んだ、と………。


俺は叫んでからこのことに気が付いてしまった。だがもう遅い。燃やしたものが元に戻らないように一度声に出した言葉は取り消すことができない。松田は鬼か修羅のような形相でこちらへ来た。俺は落ち着いて一呼吸置いてこの言葉を叫んだ。


「教科書忘れて、すいませんでしたっ!」


だがこの言葉は焼け石に水だった。国語の授業だったからこんな感じの言い方なら許して貰える。もしくは、罰が減ると思ったがなにもから減りはしなかった。


この後俺は、二時間の説教と六十枚の反省文を書かされた。






このことがあってから、俺は教科書を忘れることなんて未来永劫しないと誓った。

どうでしたでしょうか?面白かったらいいのですが……。


この話を思いついた時に友人にこの話を話したら、面白いと思うが一人で、単品ではなくおまけというか番外編みたいにするべきが一人って感じでした。


この話についてこうしたらいいとか、どうだったとか感想やアドバイスなどを待っております。

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