肆話:変態が……増えました……
なぜかこっちができた。そして書いているうちに話が浮かんできた
「何私のゴウキたそを変な目で見てる訳雌犬?八つ裂きにするわよ?」
「黙れ蚤の外来種。あんないたいけな童をアンタみたいな変態と一緒にいたら悪影響を及ぼすでしょう?私が責任もって育てるわ」
「両方黙れアバズレ共が。どっちも浅ましい雌犬で変態だろうがこっち見んな、息すんな、くたばれ」
当初来ていた追手を振り切ったのは良いけど、その先で十人ほど待ち伏せされていたのを虐殺。素人に毛が生えたレベルの相手ばかりで楽だった。しかし、いつの間にやら現れた変態とカミーラと睨み合ってます。前回のマラソン中に感じていた視線と同じものなので、間違いないかと。んで……認めたくないけど……変態と同類ということが確定しました。
死ねばいいのにふぁっきんしっと。
「んほほぉ~いいわ君!その罵倒すっごくイイ!お願いもっと罵ってぇ~」
「無視してんじゃないわよ変態。ゴウキに近付かないでくれる」
「……ハァ、何?この状況……」
バラバラになった退治屋どもの肉塊、血と糞の混ざった悪臭、変態二匹、頭を抱える俺。実にカオス。
新しく現れた変態も、濡れ羽色に輝く黒髪ロングに出るとこは出て引っこむところは引っこむ、大和撫子を体現したのような感じではあるが、発言と表情で台無しです。
恰好は闇夜に溶け込むような黒装束で、よく目を凝らさないと闇夜に首から上が浮かんでいるにしか見えない。重心も安定しているし、足音もほとんど立てていないことから、相当な手練だと判断できる。発言と表情で完全に台無しだが。
「もういいや……んで、アンタ誰?」
「むー、罵ってくれないの?いけずー。まぁ、いいわ。とっとと用事済ませて帰りましょう」
「用事?」
「えぇ……貴方達、江戸に行きようだけど……何が目的かしら?」
そう言うと、先ほどまでの変態っぷりは鳴りを潜め……てないわ、地味に俺のある部分凝視してるわコイツ台無しだよ。いいよもう俺に実害なければ……話し進まなねぇじゃん……いや、俺は兎も角カミーラに対しては殺意バリバリで睨んでるんだけどね。右目でカミーラ、左目で俺のほうを見ているという、地味に高等な技術の無駄遣いである。
「ふーん……貴女に言う必要があるのかしら?」
「言わないなら良いわ。この場で殺すだけだし、言っても内容次第では殺すわ」
「…………ただの観光だけど?」
剣呑な雰囲気が漂う。少なくともくの一さんとカミーラの間では。バチバチと火花が飛び散っているのは、俺の錯覚だろうか?しかし、あれだな。やはり今の日本の中枢なだけはある。俺たちみたいな化け物はそう簡単には入れないようだ。当然と言えば当然だけどね。将軍の御膝元な訳ですし。
「観光……ねぇ?本当かしら」
「……ダメ?」
「いいわよ!------ハッ!?ゴメン今の無し!?」
ちょれぇ。誰だよこんなの雇った奴。少し涙目になってお願いしたらコロッと逝きそうになったぞ駄目じゃん。
「くっ!?なんて破壊力っ!?思わず流されそうになったわ!」
「あーそこだけは分かるわー理解出来るわー確かにゴウキの涙目とかご褒美だわー私にもやって欲しいわー」
「やらないからもう二度としないから」
もうどうでもいいから、この先に進んでいいかどうかだけはハッキリして。こっちとしても余計な揉め事に自分から突っ込むほど馬鹿じゃないし。
「うーん……まぁ、いいか。何かあったら責任取るのは上の連中だし。貴方達を打ち倒せるような輩もここには多くないし。観光程度なら良いでしょう。いいわ、入っても。ようこそ江戸へ」
本当に良いのかこの忍者。いや、本人がいいと言ってるんだからどうでもいいか。
日本の中心地ということで人はたくさんいる。都なのだから当然なのだろうけれど、現代日本の喧騒さを知っている身としては正直地方の都市とそう変わりはない。むしろ少ないくらいである。まぁ、この時代の人口と未来の人口を比べること自体が間違っているから致し方がなし。
まぁ、某シルバーボールみたいなEDOだったらどうしようかと思ったけど、時代劇に出てくるような街並みで安心した。まぁ、今は真夜中なので人っ子一人どころか灯りすらほとんどない。あるのは天高く浮かぶ満月の光と、それらに反射して輝く金髪の……アレ?
「カミーラ、術解けてる」
「アラホント。ちょっと柄にもなく興奮していたみたい」
そう言ってほほ笑む彼女は、背筋が凍るほど美しかった。これで言動もマトモなら何の文句もないのに……