表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/43

紅い龍の子守唄

●Last Scene 2059.06.21. 10:00am. ススキノ 廃ビル 台所


 二人のエプロンドレスの少女を従え、ホイッパーをふるっている男のところに、騒々しい、自称乙女、が戻ってきた。


「さあさあ、みんな! 仕事よ! この寿理ちゃんが仕事を取ってきてあげたわよ~」

「あぁ? なんだよ?」


 戒無は、あからさまに不審な顔をする。


「そりゃあもう、町の何でも屋さんにふさわしい、素敵なオ・シ・ゴ・ト!」


 語尾にハートマークがつきそうな口調で寿理は踊りながら言った。


「だから、なんだよ?」

「じゃーん! アタシたちの得意中の得意、ビルの水道工事で~す!」


 いつぞやの、給水タンクをブチ壊した挙げ句、ビルを水浸しにして、莫大な賠償金を請求された悪夢が皆の脳裏に蘇った。


「どーも、竜巻で鉄パイプが降ってから、水の出が悪いんですって」


 給水タンクがハリネズミになった様子を思いだし、戒無はやれやれと天井を仰いだ。


「は……ははは……」


 戒無は、なんだか可笑しくなって笑い出す。


「あら、そんなにワクワクします?」


 あっけらかんと寿理は言った。


「んじゃ、ケーキが焼けたら、いっちょ、水道工事にでも行くか」


 戒無は半ばヤケクソで決断した。


「そうこなくっちゃ!」


 寿理が嬉しそうにキスを投げた。

 戒無は嫌そうにそれを避ける。

 意地になって、寿理は続けざまに投げキッスを連発した。


「だぁぁぁぁ。やめろって、この、ばか!」


 本気で嫌がり、戒無はテーブルの下にボウルとホイッパーを抱えたまま潜り込んだ。



「ねぇ、ふぁらん、あれ、なにやってんの?」


 キッチンの窓の外にも花を植えていた愛芳が、不思議そうな声を出してキッチンでの出来事を覗き込んでいた。


「さあな」


 花狼は見て見ないふりを決め込んだ。


「おかしいねぇ」


 愛芳は、コロコロと笑った。



 日常は、日常であるだけで、なにものにも代え難いのものなのかもしれない。

 それがいかに大切なものだったのか、失いかけた者にしか、気づけないのかもしれない。


 もう二度と、殺伐とした日々が訪れないように……。

 人を殺める虚しさを噛みしめる日が来ないように……。


 左手の龍が目覚めないように……。


 戒無は、床に座り込んで生クリームを混ぜている。

 寿理は相変わらずの騒々しさだ。


 そして、ニナとシャナは互いの顔を見合わせ、可憐な花がほころぶように笑っている。


 家の外と中を繋ぐキッチンの窓の桟で、デブ猫のトロツキーが、ニャアフ、と変な声であくびをした。


                                  幕



最後まで読んで下さってありがとうございます。

そして、この作品を見つけて下さって、本当にありがとうございます。


この作品は、三回ほどリライトしています。

最初はこれの五分の一ほどの短編でした。エッセンスだけの作品ですね。

それで、もっと掘り下げようと五分の三ほどの長さに書き換えました。

そのバージョンは、ススキノの雑居ビルが爆撃されて、吹っ飛ばされたアイファンが流血、そこでファランともども焼き払う……みたいな感じでした。

しかしそれでも飽き足らず、これを三つ巴の戦いにしてやろうと、アイケに登場していただきました。

アイケという実在の人物はいます。名前をお借りしました。長いナイフの夜もあります。

そして、最後のビル攻めを加え、この形に落ち着きました。

教会でドンパチやるのが好きなのは、カウビの影響かもしれません。

ちなみに、小龍はブルース・リーへのオマージュを込めて。


なんて、この作品に詰まった「好き」を語ったら色々出てきて笑えそうです。


こんな戯言まで読んで下さってありがとうございました。

もし、気に入っていただけたら、感想などいただけましたら踊って喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ