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紅い雨

●Scene-37. 2059.06.17. 01:38am. 小樽 F7ビル屋上


 雨が降りしきっていた。


 地上七十階のビルの屋上にヘリを止め、寿理が待機していた。


「しずかになったよ? じゅり」


 愛芳が、ヘリから出て、屋上の中央にぽっかり開いた強化ガラスの天窓部分を遠巻きに覗き込んだ。

 赤くて多い愛芳の髪に、雨の雫が跳ねている。


「離れちゃダメよ。すぐ飛び立てるようにしてなきゃならないんだから」


 愛芳をたしなめる寿理のほうが、この下で展開されているだろう血みどろの攻防戦の行方が気になって仕方がなかった。


「大丈夫ですよ、寿理さん」


 シャコン、とオートマチックのスライドを引いて弾丸を薬莢に送り込みながら、シャナが言った。


「とか言っちゃって、怪我人のくせに武装してるの誰よ? あんたまで銃を持つことになったら、終わってるわよ。よしときなさい」


 シャナは、クスッと笑った。


「知ってます? わたし、耳がいいでしょう? 戒無より速いんですよ。敵に反応するの」

「反応速度だけじゃ、生き残れません」


 寿理はニベもない。


「まあ、そうなんですけどね……」


 ヘリの中で、寿理とシャナが顔を見合わせて微笑んだ瞬間、下から持ち上がるような衝撃が屋上を襲った。


 激しい炸裂音とともに、強化ガラスの天窓が粉々になって吹き飛ぶ。


「アイファンっ!」


 必死で寿理は叫んだ。

 ヘリから転がり出て、愛芳を捜す。


「きゃぁぁぁぁっ!」


 ガラガラと崩壊したビルの天井から、愛芳が滑り落ちてゆくのが寿理の目に映った。


「アイファン! アイファンっ!」


 手を伸ばしてどうにかなるような破壊状況と距離ではなかった。


「どうなっちゃってるのよ、いったい……」


 寿理は、慌ててヘリに戻り、エンジンを始動した。



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