小さな決意
●Scene-27. 2059.06.16. 07:59am. JR新さっぽろ駅 地下二階
札幌市中心部から地下鉄で約二十分。
ベッドタウンとして開発された街、新札幌は、JR線と地下鉄、バスターミナルなどの交通網が縦横無尽に交差するハブターミナルだった。
地下は札幌市中心部の複雑さに勝るとも劣らないほどの迷宮と化し、増設に次ぐ増設でここもまた、入り口に戻る呪文が欲しくなるようなダンジョンとなっていた。
そんな迷宮にもどこからか朝日が射し込むのか、ひび割れたマネキンが転がったブティックの一角が、ほんのりと明るくなっていた。
その細い灯りを頼りに、二人はいた。
床に横たわる銀髪の男の額にそっと手を触れて、愛芳は顔を曇らせた。
朝方から、発熱しているようだった。
男は、荒く息をついた。
愛芳の胸は痛んだ。
自分のせいで彼が撃たれたのだと思うと、ぽろぽろと涙がでた。
勝手に出歩くと危ないのは、もうわかっていた。
自分が狙われているらしいこともわかった。
けれども。
なんとかして花狼の役に立ちたい、助けてあげたいと思った。
お薬を探してくるくらいなら、もしかしたら大丈夫かもしれない。
愛芳は、花狼の頬にキスをして立ち上がった。
瓦礫に埋もれた店舗に無惨に折り重なった、マネキン人形を見た。
全身のパーツが、ばらばらになって散乱している。
その指をさすようにデザインされた腕のパーツを、たくさん拾い集めた。
「まってて……ふぁらん……」
小さくつぶやくと、大量のマネキンの腕を抱えたまま、愛芳は地下通路に飛び出して行った。




