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宴の残り香


●Scene-17. 2059.06.15. 05:02pm. 羊ヶ丘 グノーシス教会


 ステンドグラスが、夕陽をやわらかな色彩に変えて礼拝堂を照らし出していた。

 銃撃戦で荒れ果てた礼拝堂の奥にある小部屋だった。


 虹色の光を浴びて、少女が食事をしている。

 とても無防備であどけない姿だった。

 全人類をも絶滅させることが可能な生物兵器であることが、信じられないような日常的な光景だった。


 この教会には、シェルターとしての地下室があった。

 あの銃撃戦のさなか、愛芳はそこに隠され、ことなきを得たのだ。

 あのとき駆けつけた警官隊は、教会内とその周辺を捜索しただけで引き上げていった。

 花狼のことは伏せられていたのかもしれない。

 戒無が東亜細亜連合の特殊部隊を動かしたことは明白だった。


 だが、向こうが警察にカムフラージュして行動するなら、こちらも事を荒立てず騙されておくのが得策だ。

 今は、レッド・クロイツと東亜細亜連合が事を構える時期ではない。


「どしたの? ふぁらん。おなかいたいの?」


 食事をはじめる様子のない花狼を、愛芳が心配したように見上げた。


「いやだなってこと、すると、おなかいたくなっちゃうんだよ」


 わかっているのかいないのか、愛芳はあどけなく言って野菜を口に運んだ。


「そうだな……」


 花狼は曖昧にうなずいた。

 傷だらけになった男のことが頭から離れない。


 ――シャオロン……。


 いつから、さだめは別れてしまったのか……。


 ふと、思った。

 この少女を拾ったのは偶然だろうか……?

 イースト・パセオタウンの雑踏の中で、二年ぶりに彼女の姿を見たと思ったのは、幻だったのだろうか?


 麗芳リーファン……。

 いつも、寂しそうに微笑む女だった……。

 儚げな外見に似合わず、一度決めたことは貫き通す芯の強さも持っていた。


 二年前のあのとき……。

 彼女は、明芳ミンファンを救うことにすべてを賭けていた――。



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