貧乏男爵令嬢の私を蔑んだ元婚約者? 前世の薬学知識で隣国の王女を救ったら、なぜか冷徹宰相に溺愛され、国の薬学を一手に担うことになりました~今さら泣きついても遅い、あなたの病気はもう治せません~
エリザベス・ハートフォードは、自分がどうしようもなく「地味」で「つまらない」存在だと、痛いほど理解していた。貧乏男爵家の長女として生まれた彼女の日常は、華やかなドレスとは無縁で、埃っぽい書斎で薬草図鑑とにらめっこするか、裏庭で黙々と薬草を育てることに費やされていた。それが、彼女にとって唯一、心を落ち着かせられる時間だった。
「まったく、ここへ来るたび憂鬱になるな。本当に、貴様は貴族令嬢にあるまじき振る舞いばかりだ」
その日も、裏庭の片隅で薬草の手入れをしていたエリザベスの耳に、冷たい声が響いた。振り返ると、そこには婚約者である侯爵令息、レオナルド・フィッツジェラルドが立っていた。しかし、彼の隣には、エリザベスとは対照的な、薔薇色のドレスを纏った華やかな令嬢が寄り添っている。
「あら、レオナルド様。あの方が、ご婚約者様でいらっしゃいますの? まるで、使用人のようですわね」
麗しい声で、隣の令嬢がクスクスと笑う。それは、伯爵令嬢のイザベラだった。彼女の視線が、エリザベスのくすんだ作業着と、土で汚れた指先を侮蔑的に這う。
レオナルドは鼻で笑った。
「ああ、残念ながらな。こんな薄汚れた娘が、このフィッツジェラルド家の人間になろうとは、もはや我慢ならん。イザベラ、見てやれ。いつも薬草などという、つまらないものに現を抜かしているのだ」
レオナルドはそう言って、エリザベスが大切に抱えていた薬草図鑑を容赦なく叩き落とした。図鑑は、地面に広がり、ドロを被る。
「っ……レオナルド様!」
エリザベスの震える声に、イザベラはさらに嘲笑を深くした。
「まぁ、まるで醜い芋虫のようですわ。レオナルド様には、もっと淑やかで、美しく、家柄も申し分ない淑女こそ相応しいというのに」
「その通りだ、イザベラ。だからこそだ」
レオナルドはエリザベスを見下ろし、冷酷な声で言い放った。
「貴様との婚約など、もはや一刻も早く解消したいのだ! 醜いばかりか、薬草ごときに現を抜かす薄汚れた娘。私に相応しいのは、貴様ではない!」
婚約破棄――その言葉が、エリザベスの頭の中で木霊した。胸が締め付けられるような激しい痛みと、全身を支配する絶望感。彼女がどれだけ彼の言葉に傷つき、それでも彼のために尽くそうとしてきたか、全てが無意味だったのだ。
「今後、二度と私の前に姿を現すな。そして、この婚約は、今ここで破棄とする!」
レオナルドはそう言い放つと、イザベラの手を取り、くるりと背を向けて去っていった。その背中は、エリザベスの存在など微塵も気に留めていないかのようだった。
取り残されたエリザベスは、その場に膝から崩れ落ちた。屈辱と悲しみ、そして自分への無力感で、全身が震える。涙がとめどなく溢れ、彼女の視界を歪ませた。
「ああ、もう……何もかも、嫌……」
そう呟き、立ち上がろうとしたその時、足元の石につまずいた。バランスを崩し、エリザベスの身体が大きく傾ぐ。そして、彼女の頭は、鋭い石畳に強く打ち付けられた。
「っ……!」
激しい痛みが脳を揺さぶる。目の前が真っ白になり、意識が遠のく中、まるで走馬灯のように、全く別の人生の光景が脳裏を駆け巡った。白衣を着て、フラスコを扱う自分の姿。無機質な機械が並ぶ実験室。そして、見たこともない複雑な数式や、病気のメカニズム、薬の成分表……。
――これは、何? 私は、誰?
意識が浮上したとき、エリザベスの頭の中は、先ほどまでの激しい痛みとは裏腹に、驚くほど澄み切っていた。そして、確信した。
(これは、前世の「薬学博士」としての記憶だわ……!)
現代日本の最先端医療技術から、病気の診断方法、薬の調合、臨床試験のプロセスまで、ありとあらゆる薬学の知識が、まるで最初からそうであったかのように、彼女の脳にインストールされていた。前世の高度な知識と、今世で培ってきた薬草に関する深い知識が融合し、エリザベスは、この世界では考えられないほどの、桁外れの薬学スキルを手に入れたのだ。
頭の痛みが引くにつれ、彼女の瞳に力が宿る。レオナルドの言葉、イザベラの嘲笑、婚約破棄の屈辱……。それらが、彼女の心に燃えるような炎を灯した。
(私を侮辱したこと、必ず後悔させてやる……)
エリザベスは、自らの内に宿った新たな力を感じながら、静かに立ち上がった。この世界を変えるほどの力が、今、貧乏男爵令嬢のひっそりとした胸の内に宿ったことを、まだ誰も知らないままに。
◇
数週間後、エリザベスは前世の知識を試すかのように、薬草の配合や調合の実験に没頭していた。以前にも増して屋敷の奥にこもりがちになった彼女に、家族や使用人は半ば呆れ、半ば諦めていた。
「エリザベス様、またそんな真っ黒な汁を作って……本当に、お体に触りますわよ」
侍女のリリーが、恐る恐る鍋の中を覗き込む。
「大丈夫よ、リリー。これは、ええと……新しい研究だから」
曖昧に答えながら、エリザベスは内心でほくそ笑んだ。彼女が今作っているのは、この世界の常識では考えられないほどの強力な解毒剤の試作品だった。
そんな折、衝撃的な報せが国中を駆け巡った。隣国フレデリシア王国の若き王女、アメリア殿下が原因不明の奇病に倒れ、あらゆる国の名医たちが治療法を見つけられずにいるというのだ。使節団が組まれ、我が国からも医師団が派遣されることになった。
「これは……好機だわ」
エリザベスは決意した。自分の知識が、本当に役立つのかを試す絶好の機会だ。彼女は、父である男爵に必死に頼み込み、なんとか使節団の末席に名を連ねることができた。
フレデリシア王宮の重苦しい空気の中、エリザベスはアメリア王女の病室に足を踏み入れた。王女は高熱にうなされ、肌には不気味な黒い斑点が浮き出ている。名だたる医師たちが首を傾げ、薬を調合しては失敗を繰り返していた。
「これは……『暗黒の吐息』と呼ばれる病ではないかと。瘴気の多い森で稀に発症すると言われていますが、治療法は未だ見つかっておりません」
「なんと、恐ろしい……」
医師たちの絶望的な会話が耳に届く。しかし、アメリア王女の症状を見たエリザベスの脳裏には、前世の記憶が鮮明に蘇っていた。
(これは瘴気による病気なんかじゃない……! この症状は、ソラナム科植物が持つ神経毒によるものだわ。この世界で『暗黒の吐息』と呼ばれているのは、その中毒症状と酷似している。だとすれば……)
エリザベスは意を決し、一歩前に進み出た。
「あの、恐れながら、王女様の病は、瘴気によるものではないと愚考いたします」
医師たちが一斉に振り返り、彼女を訝しげに見る。
「そこの娘! 何を申すか! 我々長年の知識を持つ医師がそう判断したのだぞ!」
「そうですわ! 貴女のような者が口を挟むべきではありません!」
非難の声が上がる中、一人の人物がエリザベスに目を向けた。それは、フレデリシア王国の全権を握る若き天才、冷徹宰相アルフォンス・ヴァン・クロイツだった。漆黒の髪に深い青の瞳、彫りの深い顔立ちからは一切の感情が読み取れない。その視線に、エリザベスは一瞬たじろいだが、すぐに気を取り直した。
「失礼いたしました。しかし、王女様の肌に浮かぶ斑点の色、そして発熱と幻覚の症状から、特定の植物性神経毒による中毒を疑います。もしお許しいただけるのなら、私に解毒薬を調合させていただけませんか?」
医師たちは騒然としたが、アルフォンスは微動だにしなかった。彼はエリザベスをじっと見つめ、その瞳の奥に宿る揺るぎない自信を見抜いた。
「……面白い。医師団が手詰まりの中、貴様は異なる見解を示した。その根拠は?」
アルフォンスの低い声が響く。エリザベスは、前世の知識とこの世界の薬草の特性を結びつけ、簡潔かつ論理的に説明した。彼女の説明は、この世界の医師たちには理解できないほど高度で、しかし的確だった。
「では、調合してみせろ。もし効果がなければ、それなりの覚悟はできているな?」
アルフォンスの言葉に、エリザベスは迷わず頷いた。
「はい、宰相閣下」
彼女は与えられた薬草と器具を使い、淀みない手つきで解毒薬を調合していく。その手捌きは、長年薬学に携わってきた者すら舌を巻くほど洗練されていた。やがて完成した一服の薬を王女に与えると、数刻もしないうちに、王女の熱はみるみる下がり、顔色も回復していった。
「奇跡だ……!」
「王女様が……回復なさった!」
医師たちが驚愕の声を上げる中、アルフォンスは微動だにせず、エリザベスを真っ直ぐに見つめていた。彼の表情は相変わらず感情を読み取れないが、その瞳の奥には、確かな光が宿っていた。
「……エリザベス・ハートフォード、だったか。貴様のその知識と能力、我が国にこそ必要だ」
アルフォンスの静かな言葉が、王宮のホールに響き渡った。この瞬間、貧乏男爵令嬢の運命は、大きく動き出したのだった。
◇
フレデリシア王宮での奇跡的な治療後、エリザベスの人生は一変した。冷徹宰相アルフォンス・ヴァン・クロイツは、彼女の類稀なる才能を高く評価し、自国への引き抜きを申し出たのだ。貧乏男爵令嬢だったエリザベスは、アルフォンスの強力な後押しにより、あっという間に国内最高の研究機関である薬学研究所の最高責任者に任命された。
「エリザベス嬢。この国の薬学は、君の手に委ねられた。必要なものは全て用意させよう。遠慮なく申し出てくれ」
アルフォンスの言葉に偽りはなかった。彼女が要望する最新の研究設備も、膨大な資料も、優秀な助手たちも、全てが迅速に手配された。エリザベスは前世の知識をフル活用し、この世界の薬草と科学を融合させた新薬の開発、衛生概念の普及、医療制度の改革に次々と着手した。
「すごいわ、エリザベス様! この新しい解熱剤、今までよりずっと早く熱が下がります!」
助手の若い薬師が興奮した声で報告する。
「ええ、配合を少し変えただけよ。でも、まだまだ改善の余地はあるわ」
エリザベスは謙遜しながらも、内心では達成感に満たされていた。彼女が開発した薬や導入した医療知識は、瞬く間に国民の生活を豊かにし、その名は瞬く間に国中に知れ渡った。
アルフォンスは、公の場では常に冷静沈着で、感情を表に出すことのない「冷徹宰相」のままだ。しかし、エリザベスに対してだけは、別人のような顔を見せた。
「今日の研究は、もう終わりか?」
執務室から研究所に戻ろうとすると、アルフォンスがひょっこり現れる。
「ええ、書類の整理が終われば、今日はもう……」
「ならば、私の執務室へ来い。君の好きな茶葉を用意させている。最近、君は働きすぎだ」
そう言って、彼はエリザベスの頭にそっと手を置いた。その大きな手が、少しだけ熱を帯びているのが分かる。
(まただわ……)
最初は戸惑ったエリザベスだが、彼の真摯な愛情と、自分の才能を心から信頼してくれる優しさに触れ、次第に心を開いていった。彼は時に厳しい助言もしたが、それは常にエリザベスの成長を願うゆえだった。二人の間には、深い信頼と、確かな愛情が育まれていった。
一方、エリザベスを蔑んだ元婚約者、レオナルド・フィッツジェラルドは、まさに転落の道を辿っていた。
「ぐっ……げほっ、げほっ……!」
彼は原因不明の難病に侵され、日に日に衰弱していく。体に現れる奇妙な斑点と、止まらない咳、そして衰える一方の体力。侯爵家の御曹司として、常に華やかな生活を送ってきた彼にとって、それは耐え難い屈辱だった。
◇
レオナルド・フィッツジェラルドの病状は、もはや見る影もなかった。全身に広がる奇妙な斑点と激しい咳は彼をベッドに縫い付け、かつて誇っていた侯爵家としての地位さえも、揺るがしかねないものとなっていた。彼を取り巻いていた人々は、潮が引くように離れていき、残されたのは病室の沈鬱な空気と、彼自身の苦悶の呻きだけだった。
「先生方! なぜだ! なぜ私の病は治らぬのだ!? このままでは……っ、げほっ、げほっ!」
彼は掠れた声で叫んだ。名だたる医師たちが、ただただ首を横に振る。
「レオナルド様、申し訳ございません。あらゆる薬、あらゆる治療法を試しましたが、この病には効果がなく……もはや手の施しようが……」
「これ以上は、我々には……」
医師たちの口から出るのは、絶望的な言葉ばかり。彼らの顔には、諦めと恐怖が色濃く浮かんでいた。実際、同じ症状を発症していたイザベラは、病に苦しみながら帰らぬ人となっていた。
そんな中、レオナルドの耳に、信じがたい噂が届く。貧乏男爵令嬢だったあのエリザベスが、隣国で王女の奇病を治し、「薬聖」とまで称され、今や自国の薬学を担う存在になっているという。最初は作り話だと一笑に付したが、あまりにも現実味を帯びた詳細な情報に、認めざるを得なかった。
(まさか……あの、エリザベスが……? いや、そんなはずはない。あの地味で薄汚れた女が、私よりも上を行くなど……!)
プライドが砕け散る音を聞いた気がした。しかし、病は彼の身体を蝕み続け、もはや選択肢は残されていなかった。屈辱を噛み締めながら、レオナルドは最後の望みを賭け、エリザベスのいる薬学研究所へ向かうことを決意する。
薬学研究所は、以前の面影もないほど立派な建物になっていた。大勢の薬師や助手が忙しく行き交い、活気に満ちている。その中心に、エリザベスはいた。真っ白な清潔な薬師服を纏い、指示を出す彼女の姿は、以前の地味な令嬢とはまるで別人だった。凛とした佇まいと、聡明な眼差し。
「エリザベス……!」
レオナルドは、震える声で彼女を呼んだ。エリザベスは、わずかに眉を寄せ、振り返った。その瞳には、何の感情も宿っていないように見えた。
「これは、レオナルド様……。何かご用でいらっしゃいますか?」
その声は、かつて彼が浴びせた冷酷な響きとは違い、ただただ事務的で、まるで通りすがりの患者に対するような、何の感情も含まないものだった。
「頼む……エリザベス! 私の病気を治してくれ! お前が薬聖と呼ばれていることも、王女を救ったことも知っている! きっと、お前なら治せるはずだ!」
レオナルドは、かつての傲慢な面影もなく、必死に懇願した。あのプライドの高い彼が、地面に頭を擦りつけんばかりに深々と頭を下げている。
エリザベスは、一歩近づき、レオナルドの顔色、脈、そして体に広がる斑点の様子を冷静に観察した。彼女の専門的な視線は、瞬時に病状の全体像を把握した。
「レオナルド様。あなたの病は、確かに私ならば初期段階で治療することが可能でした。その毒は、この世界の薬学ではまだ認知されていない植物性神経毒によるものです」
レオナルドの顔に、一筋の希望の光が差した。
「本当か!? やはり、お前は天才だ! 頼む、この通りだ、エリザベス! どんな褒美でも、貴様が望むものなら何でもくれてやる! だから……!」
「しかし、」
エリザベスは、一切の感情を交えず、淡々と事実を告げた。
「残念ながら、現状では最早、どのような薬も、どんな知識も、あなたを救うことはできません。毒素が全身を蝕み、あなたの臓器はすでに回復不能なほどに損傷しています。今、解毒薬を投与したところで、壊れた肉体を元に戻すことはできないのです」
レオナルドの顔から、血の気が引いた。
「な……なにを……!?」
「仮に、あなたがもっと早くに治療を受けていれば、あるいは……。しかし、この状態では、もはや手遅れです」
それは、紛れもない真実だった。彼の命が、残りわずかであることを告げる、残酷な宣告。エリザベスの声には、恨みも、憐憫も、何もなかった。ただ、目の前の患者の病が、治療不可能な段階に至っているという、臨床医としての冷静な診断だけがあった。レオナルドは、彼女にとって、もはや過去の遺物であり、感情を揺さぶるに値しない存在となっていたのだ。
その時、エリザベスの背後から、一人の男性が静かに現れた。冷徹宰相アルフォンス・ヴァン・クロイツだ。彼はエリザベスの肩にそっと手を置き、レオナルドを射抜くような視線で睨みつけた。
「彼女は、この国の宝だ。二度と、軽々しく近づくことを許さない」
アルフォンスの言葉は、絶対的な重みを持っていた。レオナルドは、二人の間に流れる穏やかで確かな絆に、絶望した。かつて自分が蔑み捨てた女性が、これほどまでに輝き、これほどまでに愛されている。そして、自分は……。
レオナルドは、その場に崩れ落ちた。彼の病気が治ることは、二度となかった。エリザベスへの嫉妬と後悔、そして病の苦痛の中で、彼は残りの人生を過ごすことになった。
薬学研究所での一日を終え、アルフォンスと共に馬車に揺られる帰り道。
「今日もご苦労だったね、エリザベス」
アルフォンスが、そっとエリザベスの手を握る。彼の大きな手のひらが、疲れた指先を包み込むように温かい。
「ええ、アルフォンス様も。今日の会議は長引いたようでしたけれど、大丈夫でしたか?」
「ああ。君が傍にいてくれるから、いくらでも乗り越えられるさ」
アルフォンスは、エリザベスの髪にそっと口付けた。その視線には、深い愛と感謝が満ちている。
「ふふ、また褒めすぎですわ。でも……そう言っていただけると、嬉しいです」
エリザベスは、彼にもたれかかり、安堵のため息をついた。彼と共に歩む道は、常に刺激的で、そして何よりも温かい。貧しかった日々も、蔑まれた記憶も、全てが遠い過去の出来事となっていた。
屋敷に戻ると、書斎でアルフォンスが資料に目を通し、エリザベスは彼のために温かいハーブティーを淹れる。
「アルフォンス様、お茶が入りましたわ」
「ありがとう、エリザベス。君の淹れてくれるお茶は、いつだって最高だ」
アルフォンスは顔を上げ、優しく微笑んだ。
「明日は、新しい薬草園の視察がありますわね。私も同行してよろしいでしょうか?」
「もちろん。君がいてくれるからこそ、より良いものになる。この国の未来は、君と共にあるのだから」
二人は微笑み合い、そっと手を取り合った。その手は、この国の薬学と医療を、そして二人の幸せな未来を、共に築いていくことを誓っているかのように、固く結ばれていた。