デートの裏側で交錯する想い(後半)
午後三時。次なる目的地は、小さなアミューズメントパークだった。
建物内にジェットコースターやアトラクションが詰まっているこの場は、かつては全国でも指折りのデートスポットだった。今は多少熱が冷めたとは言え週末ということもあり、カップルや家族連れでにぎわっていた。
「……すげぇ、人多いですね……」
服部がそわそわしながら周囲を見回す。
一方の沙羅は、ぼんやりと天井を見上げていた。
表情はどこか落ち着かない。
「な、なあ! 次、あのジェットコースター乗りません?」
服部が勇気を振り絞って沙羅の手をそっと引く。
「えっ!? いや、僕はちょっと……」
沙羅は苦笑いしながらも、服部の力に抗うことなく、そのまま引かれていった。
その様子を、離れた柱の陰から見つめる三人の影。
「……沙羅って、あんなに人に引っ張られるタイプだったか?」
岳人の口から漏れたそのつぶやきは、自分でも驚くほど自然なものだった。
千奈が息を呑む。
「……皇先輩……」
「ふふっ」
雪乃が唇をつり上げる。
「やっと気づいたのかしら?」
「……うるせぇな」
岳人は帽子を深くかぶり直した。
けれど、その手は少し震えていた。
ジェットコースターを降りた後、沙羅は少しぐったりしていた。
「だ、大丈夫っすか!? やっぱ無理させたかも……」
「う、うん、大丈夫……ちょっと酔っただけ」
ベンチに腰を下ろすと、服部が慌てて自販機で水を買いに走った。
残された沙羅は、腕をぐるぐると回しながら小さく息をつく。
服部は優しいし、頑張ってくれてるのも分かる。
でも、どこかで違和感が残る。
水を持って戻ってきた服部が、おずおずと尋ねる。
「さ、沙羅さん……今日、楽しいですか?」
「え?」
「その……俺と一緒で、楽しいと思えてたら……嬉しいっす」
沙羅は一瞬だけ戸惑い、そして笑顔を作った。
「うん、楽しいよ」
そう答えながらも、自分の中の“何か”が空回りしているのを感じていた。
その頃、物陰では観察隊が固唾をのんで見守っていた。
「……先輩、限界じゃないですか?」
千奈が岳人の袖を引きながら、小声で問う。
「……別に」
「顔が“限界です”って言ってますよ」
「……るせぇ」
岳人は帽子のつばを握りしめ、何も言わずに立ち上がった。
その背中を、雪乃はじっと見送っていた。
「皇くん」
「……なに」
「ちゃんと自分の気持ちに、向き合いなさい」
雪乃の言葉は、意外なほど優しかった。
岳人は小さくうなずき、そのまま遊園地を後にした。
夜。
帰宅した沙羅は、制服のままベッドに倒れ込んだ。
スマホを取り出し、開いたのは岳人とのトーク画面。
未送信のメッセージが、下書きのまま残っていた。
「ねえ、今日……ちょっと来てたでしょ?」
それを見つめたまま、沙羅は何も送らず、画面を閉じた。
窓の外には、星ひとつない曇り空。
だけど、胸の中は、それ以上に曇っていた。




