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俺思う、ゆえに俺あり!  作者: ミスター小町
恋のライバル編
66/113

デートの裏側で交錯する想い(前半)

 週末、晴天の下。 駅前の待ち合わせ場所近くの茂みに、三つの影がひそんでいた。


「……いや、お前ら、なにやってんの?」


 岳人――皇岳人は、小声でぼやく。


「決まってるじゃないですか! お兄ちゃんのデートを見守るんです!」


 双眼鏡を構えるのは服部千奈。白いサマーワンピースに身を包んだ、今日の張り切り人その一である。


「……いや、“見守る”って、ただの尾行だろ」


「うるさいです、皇先輩。……っていうか、あなた誰なんです?」


 千奈がぴしりと目を向けた先にいたのは、小早川雪乃――言わずと知れた桜が丘高校の生徒会長。


「ふふ……たまたまガクトくんを見つけたのよ。桜が丘高校生徒会長として、不審な行動を見過ごすわけにはいかないわね」


「……たまたま、ね」


 岳人は諦めたようにため息をつく。


 千奈と雪乃はその場で、妙に丁寧に自己紹介を交わした。互いに一礼しながら、妙な連帯感が芽生えていくのが分かる。


「……なんか、俺だけ取り残されてないか?」


 そんな思いを抱きながら、岳人はこっそりと、沙羅と服部の“デート”を追いかけ始めた。


 最初の目的地は映画館。

 今、上映している話題のポム・クルーズの映画だ。


 ポップコーンを手にした沙羅と服部が、並んで座る。


「お、おれ……映画館って久しぶりっす……」


「ふーん」


 沙羅は予告編を眺めながらも、どこか落ち着かない様子だった。


 映画を見るだけ。そう思えばいいのに、なぜか後ろの気配が気になる。いや、そんなわけない。気のせいだ。うん。


 服部は、横目で沙羅の表情を伺いながら、緊張と興奮で心臓が爆発しそうだった。


「さ、沙羅さんって、映画とか好きっすか?」


「うん、まあ、普通に……」


 沙羅の返事は素っ気ない。でもその声はどこか沈んでいた。


 後方の席、暗がりの中。双眼鏡を覗く千奈と、帽子を目深にかぶった岳人、そして雪乃が座っていた。


「お兄ちゃん、頑張ってるけど……沙羅先輩、表情が硬いですね」


「まあ、急にデートとか言われてもな」


「……あなた、まさか少し気になってる?」


 雪乃が横目で岳人を見る。


「は? ねーよ」


 即答したものの、目はスクリーンではなく沙羅の後ろ姿を追っていた。


「ふぅん」


 その曖昧な返答に、雪乃はどこか面白そうに前を見つめ直した。


 上映が終わると、三人はこっそりと席を立ち、映画館の外へと移動した。


「次はどこだ?」


「たしか、沙羅さんとお兄ちゃん、水族館行くって言ってました」


「お前……どこまで聞き出してんだよ……」


「LINEで聞いたんですよ。沙羅さんと私、つながってるんで」


 千奈はあっけらかんと答える。


 それを聞いて、岳人はなぜか心の奥がざわつくのを感じた。


 沙羅が、自分ではなく千奈と、そういうやりとりをしていたということが、今さらながら少し堪えた。


「嫉妬かしら?」


 雪乃が、ぽつりとささやいた。


「……だから違ぇって」


 だが、否定の声は、あまりにも弱々しかった。


 水族館。


 照明が落とされた館内、青く光る大水槽の前で、沙羅と服部は立ち止まっていた。


「おぉ……魚って、ずっと見てても飽きないっすね」


「……そうだね」


 沙羅は、水槽を漂うクラゲや小魚たちを見つめながら、返事をした。


 けれど、その目はどこか遠くを見ているようだった。


 思わず脳裏に浮かんだのは、以前、部活帰りに一緒に立ち寄った小さな公園の池だった。

 あのときも、ガクトは何気なく言った。

『魚って、見てると落ち着くな』

 なんで今、それを思い出すんだろう。


「沙羅さん?」


「え、あ、ごめん、ちょっとぼーっとしてた」


 服部は微妙に表情を曇らせたが、それ以上は何も言わなかった。


 一方、数メートル離れた展示パネルの裏では、三人の尾行チームが再び張り込んでいた。


「……先輩、やっぱり気になってるでしょ」


「……うるせぇな」


「顔がもう、“気になってる”って言ってます」


 千奈がからかうと、岳人は顔を背けた。


 その表情を見て、雪乃は目を細めた。


「ふふ……やっぱり、これは見届ける価値がありそうね」


 彼女はゆっくりと髪をかき上げながら、何かを企むように微笑んだ。

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