表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/113

体育祭で黒組走る

 朝、昇降口に貼り出された紅白幕の下、各組の旗が風に揺れている。黒、赤、青、緑、黄、白。


 俺たち、2年4組は黒組。つまり、1年4組・2年4組・3年4組が手を組んだ「黒の連合」。


「今日から僕たち、黒の軍団ですな」


 五郎丸がやけに嬉しそうに言った。


「黒組、最強っしょ!」


 沙羅が小麦色の腕を振り回している。すでにテンションがMAXだ。


「はいはい、転ぶなよ」


 鈴木がうんざり顔で言いながらも、なんだかんだノリノリで黒のリストバンドを腕に巻いていた。


 午前8時半、開会式が始まる。


「麗しき風と共に、熱き魂の舞台が、今! 開幕するのであるっ!」


 開会宣言は前年度優勝は白組だったので、今年度白組のリーダーで生徒会副会長を務める錦野先輩だ。白い制服に薔薇を咥え、校庭に設置されたミニ舞台の中央で決めポーズをとる。1年生がぽかんと口を開ける中、3年は盛大にツッコミ、2年は無言で耐える。


 そんな日常が戻ってきたことを、少し嬉しく感じた。


 最初の種目は、クラス対抗リレー。


「行ってくるわん」


 黒組代表、1年の島田――通称しまじろうが笑顔で飛び出した。予想以上の快走を見せて、トップでバトンを沙羅へ!


「沙羅ちゃん、頼んだよ!」


「任せてよ、もうっ!」


 沙羅は弾けるようなスタートを切った。1年とは思えぬ力強いフォームで、差をさらに広げる。


「すげぇ……」


 俺が思わず声を漏らす。


「……彼女の筋肉構造、興味深いですね。走り方は中距離型に見えますね!」


 五郎丸が分析し始めたが、今はいい。


 バトンは3年、朝比奈先輩へ。


「ラスト100、勝負かけんでー!」


 声が響く。リズムに乗るようにフォームが伸び、キレのある走りで白組を一気に引き離した。


「こりゃ行けるな」


 鈴木が珍しく素直な声で言った。


 バトンは俺へ。緊張が走る。


「ガクト、行けー!」


 沙羅の声が耳に届いた瞬間、地面を蹴った。


 足の裏の感触、風の切れ方、全身が前に吸い寄せられる感覚。


 だがその背後から、マーク先輩の足音が迫る。


「やっべぇ……!」


 周囲の歓声で分かった。すごい勢いで迫っている。


 ゴールの瞬間、あっという間にマーク先輩に躱されたが、どちらが先にゴールしたのか判定となった。歓声が渦巻く中。下されたのは…


嵯峨野マイクで告げる。

「……勝ったのは黒組! 白組は2着です。」


 一斉に沸き立つ黒組のメンバー達。

 俺はその場に倒れ込みながら、俺は空を見上げた。


「マジかよ……」


 そんな俺を仲間が囲む。


「まさか逃げ切るとは!」

「ガクトくんよくやったわね!」

「見直したぞ!」

「大好きだぁ!」


誰だよ、どさくさに紛れて告白した奴…


 最初のリレーが勝利で終えたこともあり、黒組は勢いづく。


「五郎丸、次、お前の出番だろ。障害物競走、頼むぞ」


「了解です。今回はですね、ジャンプゾーンの角度を――」


「理屈いいから、転ばず帰ってこいよ!」


 みんなが笑う中、五郎丸が意気揚々とスタートした。


 しかし、彼の足は平均台で見事につまづき、見事に転んだ。


「……これはですね、砂の抵抗と――」


「知的敗北な!」


「むぅ……」


 続くパン食い競争では、鈴木が抜群の瞬発力を見せて、口でパンを奪い取って1位でゴール。


「やった~! ってか、パンくらい余裕なんだけど!」


「食ってるときが一番真剣だったな、お前」


「うっさい!」


 黒組はさらに勢いづく。



 午後に入る前、みんなで昼食を囲んでいた。


「黒組の応援ボード、意外と好評だぞ」


 俺が言うと、佐々木がふんと鼻を鳴らした。


「そりゃあな、俺が骨組み作ったからな」


「でもさ~、あの“爆走黒組”ってフォント、めっちゃうちのセンス出てたよね?」


 鈴木がドヤ顔をしている。


「うるせー、金の稲妻は俺のアイデアだし」


 佐々木が言い返し、結局また口論になる。


 だが、誰も止めなかった。なんだかんだ、それも楽しいからだ。


 遠く、放送部の声が午後のプログラムを告げる。


「午後の部、まもなく開始します。各チームは準備を――」


 グラウンドに日差しが戻ってくる。空も高く、風も穏やか。


 黒組の後半戦が、始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ