生徒会 会計補佐誕生!
生徒会室のドアが開かれ、アンドーはそこで岳人を床に立たせた。
その瞬間——予想外の展開が待ち受けていた。
「うわぁぁあああ!!つ、ついに……!た、たすけが……!!」
目の前に現れたのは、小柄な女の子。制服の袖を握りしめ、涙目で駆け寄ってきた。
「……誰?」
岳人が思わず呟くと、横から小早川雪乃がすっと説明を入れた。
「会計の宮前咲。あなたの援軍よ。確か、面識あったわよね?」
「援軍ってなんだよ。」
岳人の言葉に応えるように、宮前が潤んだ瞳で袖をぎゅっと握ってきた。
「せ、生徒会……か、会計が……!私ひとりに全部押し付けられて……!!もう無理なんですぅぅ!!」
「いやいや、俺関係ないだろ……」
岳人は明らかに戸惑っていた。だが、雪乃はお構いなしに涼やかな微笑を浮かべている。
「だから、あなたを連れてきたのよ。期待してるわ、皇岳人くん」
その隣で副会長の錦野が、どこからともなく取り出した2本目の薔薇をくるりと一回転させ、俺の胸元に添える。
「岳人くん!生徒会の未来のために、そして会計業務の安寧のために——会計補佐として務めるのだ!」
「いや、俺、そんな話聞いてねえからな」
「オレ、タマゴ、ワリマス」
重低音のような声でアンドーが意味不明な助言(?)を飛ばす。
「……意味わかんねぇ!!」
騒ぎの中、宮前が今にも泣き出しそうな声で訴えてくる。
「お、お願いします……!もう私、これ以上は耐えられません……!!!」
岳人は頭を抱えた。
(……いや、絶対面倒くさいやつじゃん……)
しかし、ここで折れては流される男になる。
「……で、給料は?」
「出ないわ」雪乃はさらりと答える。
「じゃあやらねぇよ」
即答。
「……でも、生徒会長としての私の権限で、部活動の予算配分を決めることができるのよねぇ……?」
雪乃の声が、まるで猫が獲物をいたぶる前のような柔らかさで響く。
「剣道部の去年の活躍は確かに素晴らしかったわ……でも今年の剣道部って……ねぇ?」
「……おい」
「その話しは置いておいて……剣道部、予算カットでもいいのかしら?」
「やりませんとは言ってない」
岳人は完全に陥落した。
こうして——
皇岳人は、生徒会補佐(会計補佐)という新たな肩書きを背負う羽目になったのだった。
(……俺、もう部活やめた方がいいんじゃねぇか?)
静かに天井を仰ぎ見た岳人の肩に、宮前が「よろしくお願いしますぅ……」と囁き、再び涙を浮かべる。
その後ろで、錦野が薔薇をひらりと宙に投げた。
「これより、生徒会補佐・皇岳人の新たな伝説が幕を開ける!」
「いらん伝説作らせんな!!」
「いいえ!これを成し遂げれば伝説になるわよ!」
小早川雪乃が、錦野の話しを肯定する。
「どういうことだよ?」
「こういうことよ!」
小早川雪乃は会計の宮前咲に合図を送る、宮前はおずおずと1枚の紙を岳人に手渡した。
「なんだよ……桜が丘高校部活動今年度の予算報告書?これがなんだって言うんだよ……ん?……ゼロが1,2,3,4,5,6、7,8………」
「何じゃこりゃーーー!!!!!」
そこに書かれていたのは、今年度に学校から回された全部活動費の予算だった。
総額2600000000円。
こうして、岳人は26億円の部活動費を巡る騒動に巻き込まれてしまった。




