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俺思う、ゆえに俺あり!  作者: ミスター小町
オリエンテーリング編
27/113

情熱とコインと

ドローンが空を舞い、校庭では生徒たちが「うおー!」と叫びながら校長を追いかけていた。怒号や笑い声が飛び交うなか、俺――皇 岳人は、ひとり静かにその喧騒を眺めていた。


「……やっぱり違うな、これ」


呟いた声に気づいて、ジャージのファスナーを上げ直していた朝比奈先輩が近寄ってくる。


「岳人くん、どしたの?」


「……いや、これは多分“本筋”じゃないんです」


その言葉に、しまじろうこと島田が「マジっすか!?」と元気よく飛び跳ね、沙羅も顔をしかめた。


「うそっ、だって先生たちもノリノリだよ? あの校長の変装とかドローン、お金かかってそうだったし」


「それが怪しいって話なんだよな」


鈴木が腕を組み、半ば呆れたように言った。


「またそういう陰謀論っぽいこと言い出すと思ったよ、皇~。でもまあ、確かに…校長、そういう演出好きそうだけどさ」



俺は歩道脇の芝生に移動し座り込み、ポーチから例の“謎のコイン”を2枚取り出す。後をついてきた全員がそれをのぞき込んだ。


 俺はかまわず2つのコインをマジマジと凝視する。表、裏、フチ、小さな文字……




 そしてあることに気づく。


「聞いてくれ」


 俺の声に周りを囲んでいたメンバーが身を乗り出す。


「今回配られたこのコイン。1枚目はアルファベット3文字と数字が17桁。2枚目はアルファベット4文字と数字が16桁だ」


「マジマジ見てなかったな……」と新井がボソッと言うと、朝比奈先輩が興味深そうに顔を近づけた。


「岳人、それで?」


「校長の開会の言葉、覚えてるか? 地図を信じるな、コンパスも要らん。最後に頼るのは……情熱だって」


「情熱?確かに自転車に乗っているときも叫んでいたよね!」


沙羅が言い、鈴木が続ける。


「それがなんなの?」


「情熱は英語でなんて言う?」


「Passion?」


俺の問いに沙羅が呟いた。


「そう。そしてこの2枚のコインの数字の間に書かれているアルファベット、1枚目が“pas”、2枚目が“sion”。合わせて“passion”だ」


「え、それって偶然じゃ……」と智子が言いかけたとき、俺はスマホを取り出し、数字部分を打ち込み始めた。


「数字は、35.64……と139.85……。これ、緯度と経度なんだ」


「うそ……まさか……」


「本当だって。地図アプリで検索したら、ここにヒットした」


全員の視線がスマホに集中する。


表示されたのは、**海浜公園のシンボル「金剛石とフラワーの大観覧車」**だった。


「観覧車……!」


沙羅の目がキラキラと光り、島田が思わず両手を挙げた。


「うおーっ!マジでラブコメみたいな展開じゃないっすか!? 俺、恋始まっちゃう?」


「お前の恋じゃねぇ」と新井が即座に突っ込む。


「でも、行くなら今しかないよね」と朝比奈先輩。


鈴木がちょっとだけ眉をひそめて、「他のチームには黙っとくか」と呟く。


俺たちは顔を見合わせ、そして、うなずいた。


「よし、行こう。最終チェックポイントは――観覧車だ!」


「「おーー!!!」」


元気よく叫んだのは島田だけだったが、俺たちはすぐに移動を開始した。





「岳人、やっぱりすごいね。こういうときのひらめき、前から得意だったもん」


「まあ、たまたま思い出しただけだけどな」


「ふーん。じゃあ、今度は“僕”のこともちゃんとひらめいてよね」


「え?」


「べ、べつに深い意味じゃないよっ!」


顔をそらした沙羅を横目に、俺は自然と笑みをこぼした。


しばらくして、大観覧車の姿が見えてくる。


遠くからでも分かるあの巨大な輪。きらびやかに照らされる骨組みと、回転するゴンドラ。


それを見たとき、朝比奈先輩が感慨深げに言った。


「……なるほど、これがゴールか。情熱の象徴としては、悪くないじゃん、校長」


鈴木が鼻を鳴らす。


「観覧車に情熱なんてあるわけ……あ、いや、なんでもない」


新井がぼそっと呟く。


「これ、優勝してもきっと校長の演説があるんだよな……」


島田が叫ぶ。


「行こうぜみんなー!一番乗りで観覧車のてっぺんまで登ってやろー!!」


「いや、そういうゲームじゃないから」と全員でツッコむ。


そして俺たちは、観覧車に向かって、歩いて行った。

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