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俺思う、ゆえに俺あり!  作者: ミスター小町
オリエンテーリング編
24/113

移動するチェックポイント

 俺たちのチームは、草木が生い茂るバードガーデンから抜け、海浜公園周遊歩道を目指して歩を進めていた。少し開けた場所に出ると、同じ方向に急ぐ別のチームと遭遇する。その中には、沙羅の親友である遠ヶ崎由比の姿があった。


 「沙羅」


 「由比!」


 二人は手を軽く振り合いながら近づき、並んで歩きながら言葉を交わす。


 「そっちもチェックポイント、追ってる感じ?」


 「うん、周遊歩道に移動してるって分かったから、先回りしようって」


 「負けないからね!」


 「こっちこそ!」


 チーム同士、自然と競争心が湧き、全員が早歩きになる。俺はスマホのマップを開きながら、変動するチェックポイントの動きを確認する。


 「このまま行けば、チェックポイントとぶつかるはずだ!」新井先輩が声を上げる。


 「妙だな……」


俺のつぶやきに朝比奈先輩が反応する。


「どーゆーこと?」


「この場所に近づくほど、周りにチームが増えてる」


 案の定、周遊歩道に入った途端、他にも多くの生徒が押し寄せてきた。俺たちの他にも、いくつかのチームがスマホを見ながら同じ方向に進んでいた。

 どうやら俺たちが目差す第三チェックポイントは、複数のチームにとってもチェックポイントになっているらしい。同じように移動するチェックポイントの進行ルートに先回りして、待ち構えようとしているのだろう。





 そして——


 「来たぞ!」


 坂の向こうから、見えてきたのはチェックポイントらしきものではなく、ジャージ姿の桜が丘高校の生徒たちの大集団が、まるでマラソン大会のようにこちらへ走ってくる姿だった。そして、その集団を率いるように先頭を切っているのは——


 「……校長!?」


 電動アシスト付きのマウンテンバイクにまたがって疾走する、我らが校長・嵯峨野達平。スポーツタイプのサングラスをかけ、ニカッと笑いながら生徒たちの中を突き進む。

 よく見ると荷台の部分に、チェックポイントと書かれた小さな赤い旗がはためいている。


 「いやいやいや、校長がチェックポイントってどういうこと!?」


 「やっぱりアプリの顔写真、伏線だったんじゃん!!」


 「逃がすかーッ!!」


 怒号や驚愕、そして笑いが飛び交う中、校長は生徒の群れを華麗なハンドリングで回避しながら、自転車のアシストパワーを全開にする。


 「みんな走ってもいいけど、安全にじゃよ〜〜!!!」


 左に鋭くカーブし、右に軽快にスラロームしながら、校長は追跡者を躱していく。前方で道をふさごうとした数人の生徒を、最後のひとひねりでスルリとかわす。


 「なんだよアレ……バイクの達人かよ……」


 「くそっ、止められないのか!? 誰か速いやつはいないのかーッ!」


 その声に応えるように、一人の男子が人混みを抜けて前へと飛び出した。


 「これは僕の出番だね!」


 長身のその男は、颯爽と走りながら、背後から誰かが声を上げる。


 「マックだー!」


 「♪ちゃらっちゃっちゃちゃ〜〜〜」


 「やめてーっ!っていつも言ってるだろ~ぉっ!!!」


俺の前を通り過ぎた瞬間、ドップラー効果でフェードアウトしていく悲鳴。

マックこと篠田・マーク・オブライエンが、全国決勝クラスのスプリントを披露する。


 「うっわ……あれが短距離エースか……」


 「いけー!マーック!!」


 一方で、沙羅の隣では遠ヶ崎が走りながら、怒り心頭の表情を浮かべていた。


 「生徒を弄んで……あの爺、許さない……」


 「わっ、出た、怒らせると一番怖いやつ……」


 そして佐々木の姿も人混みに紛れて走っており、俺たちを見つけるなり、


 「おい、なんでお前らまで……って、お前らが仕掛けたんじゃないだろうな!」


 「はあ!? 何言ってんだよ!」


 「お前らがノリノリで追いかけてるだけだろ!」と、俺がツッコむ。


 さらに、その後ろには、ちょこちょこと走ってくる五郎丸の姿も見えた。


 「僕はですね! 校長があんなに速いなんて、極めて興味深い……ハァハァ……運動は苦手なのにぃぃ!」


 「なら走るなよ!」


 周遊歩道は、生徒たちの熱気と汗と怒号でごった返し、その中で俺たちも次の行動を決めるべく、走り出す準備を整えていた。


 次なる決戦——その名は、追え!逃げる情熱校長!!

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